ペーター・マウラーICRC総裁による2018年の総括

05/08/2019

ミャンマーから避難してきた子どもたちと話すマウラー総裁。バングラデシュ コックスバザールの避難民キャンプにて OPU. Mahmud Hossain/ICRC


 
2018年、世界の矛盾はますます顕著になりました。全体的にみると、人々の健康状態は向上し、暮らしは豊かになり、国や人のつながりは深化加速しましたが、それらの進歩は必ずしも平和につながりませんでした。
 
世界、特に不安定な地域で歯止めが利かなくなった紛争は、住人や周辺国に甚大な被害を継続的に与え、、地域の不安定さに拍車をかける傾向にあります。これらの紛争では、都市部への行き過ぎた攻撃、民間人や民間人による自警団、人道支援提供者を標的にすることなど、国際人道法違反が常態的に行われるのを目にしてきました。男性も女性も子どもたちも、命を奪われたり、けがをするといった身体に受ける直接的な被害ばかりだけではなく、住居や教育環境、生活の崩壊に苦しんでいます。
 
現代では、暴力、「テロリズム」、反テロの施策、発展上の欠陥、不正、排斥、気候変動などの複数の脅威が複合的に私たちに襲い掛かるため、人々の苦しみは深刻化の一途をたどるのです。
 
2018年には5大陸90カ国において、ICRCは、シリアやイラク、イエメン、アフリカの角 (アフリカ大陸東部) 、チャド湖周辺、サヘル地域、アフガニスタン、ミャンマー、バングラデシュで最大規模の活動を行い、人々の暮らしを改善することができました。長期化する紛争地域での私たちの活動は、数十年に及んでいます。一方で、新たに発生した緊急事態に対応する活動も増えました。
 
ICRCは、あらゆる観点において中立、公平、独立の原則を堅持しています。人道支援を実施するうえでの制限が増すにつれ、多くの局面で中立、公平、独立の原則を堅持することが難しくなってきました。あくまでも人道的な手段を用いて必要な人に支援を届けるには、交渉や外交努力を通じてICRCの活動を受け入れてもらう必要があるからです。しかし、ICRCは支援を必要とする人々に寄り添うことを最優先とし、その際に、私たちの人道的アプローチの比類ない価値を行動で示すことができました。
 
破壊された東グータの身の毛もよだつ映像やラカインの恐ろしい風景や、カガバンドロのキャンプに住む子どもたちが描いた絵など、2018年を通じて片時も頭を離れることはありませんでした。同僚が逆境に直面しながらも人道的な精神を毎日実践した姿も同様です。
 
コンゴ民主共和国におけるエボラの大流行、ガザ地区での戦闘の再開、中央アメリカの移民問題などの危機を受けて、各国赤十字・赤新月社のパートナーの協力を折に触れて得ながら、ICRCは毎年進化を続けています。
 
南スーダンからウクライナまで、ICRCは多くの地域で中立な仲介者として活動する立場を貫きました。シリアとイエメンに対するアスタナとストックホルム会議の一連の作業において、被拘束者や行方不明者に関する人道上の問題を訴える合法性と専門知識を備えていることが認知されました。人道上の法医学プロジェクトがフォークランド諸島 / マルビナス諸島で実施されました。この中で、現地に埋葬された兵士を掘り起こし、身元確認も行いました。家族に圧しかかっていた心の重りを取り除くだけではなく、創意工夫した人道支援のモデルにもなりました。
 
ドナーからの寛大なサポートは、ICRCに対する継続的な信頼と信用を表しています。すべて寄付に感謝しています。おかげさまで、2018年の事業費を賄うことができました。中立、公平、独立した人道支援には非常事態に対応できる柔軟な資本が必要です。そのため、今後は資金調達の減少傾向が転じて上昇に向かうことを願っています。
 
さりながら、人道支援に必要な資金調達のエコシステムを機能させて、新たなビジネスモデルへ移行を図る方法にはまだ改善の余地があります。一つは長引く紛争に苦しむコミュニティのニーズに対して、幅広い視野をもって対応することです。これは、縦割り的な体制を打破するパートナー横断的な方法と、ICRCの活動が持続できるようにメカニズムを強化することによって達成できます。ひいては、私たちが奉仕しようとするコミュニティのレジリエンス (再び立ち上がる力) のサポートが可能になります。人々のニーズとそれに対して実際に提供できるものとの間で徐々に広がる隔たりを埋めるためには、革新的な思考が求められます。
 
2019–2022 年を見据えたICRCの新たな組織戦略 では、今後数年間の優先事項を明確にしています。現代の紛争の複雑な力学を前提として、防衛や防止、持続可能な人道的影響力の確保、デジタル変革、他者との連携に焦点を当てています。この戦略は私たちのドナーやサポーターからも歓迎されており、今後の人道上の課題に対応するために役立つものと自負しています。
 
この観点から、今までとは違う新しい方法でパートナーシップや協力体制を構築できるかどうかがカギになります。人道上の危機の深さや広がりに対して単独で対応できるセクターはありません。前に進めるためには国、国際組織、市民社会全体の強い支援が必要です。
 
2018年のICRC活動を支持してくれたすべての方々にお礼を申し上げます。今後とも引き続きご支援をよろしくお願いします。
 


数字とグラフでみるICRCの活動2018

 

 
世界における2018年の活動規模を数字とグラフで分かりやすく解説します。
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