ジュネーブ諸条約:「人間性をもって紛争下の恐怖に立ち向かう」

13/08/2019

 

ジュネーブ諸条約成立から70年を記念して、条文に記されてる原理原則が数十年にわたり成し遂げてきた功績に光を当てたいと思います。

 

四つの条約から成るジュネーブ諸条約は、もはや法を超えて普遍的な価値観として戦時の倫理的な行動について謳っています。だからこそ、国際条約の中で数少ない、万国に批准されている条約となっているのです。戦闘の手段や方法を規制し、敵対行為に参加していない/もはや参加していない人々を保護し、武力紛争の影響に歯止めをかけるため、人道的理由から、さまざまなルールを設けています。加えて、1949年以来、赤十字国際委員会 (ICRC) をはじめとする人道組織の活動も支えてきました。戦争に打ちのめされた多くの国々で、恐怖の真っただ中にあっても人々が人間性を保てるよう、同条約は役割を果たしてきました。

 

国際社会は、第二次世界大戦の爪痕を受けて、国際人道法 (IHL) が謳う文民保護の拡大に向けて新しいルールを設けることが急務であると考えました。1930年代に赤十字運動により、既に存在していたジュネーブ条約の改定作業が進められ、1949年8月12日に完了しました。多くの国々がジュネーブに参集し、429の条項を採択。その多くはICRCの法律家が起草したものです。今日においても、ジュネーブ諸条約は、国家が手を携えて成し遂げた最大の成果の一つとして語られています。

 

1949年にジュネーブ諸条約が採択されたことで、植民地からの独立戦争や各地で勃発する内戦にも適用できる最小限の規則を国際社会は持ち得ていました。とはいえ、国家間ではなく、非国家の勢力が伴う武力紛争や戦闘行為の犠牲となっている人々を保護するためには、ルールを改定し、補強する必要がありました。そこで、1977年に二つの追加議定書が採択されたのです。

 

IHLは全般的に、軍事的必要性と人道的配慮のバランスを正しく保つ、現実に即した多くのルールから成り立っている”

 

すべての国が、「あらゆる状況において」国際人道法の条約や決議を「尊重し、尊重を保証する」カギを握っています。1949年に有効であった多国間協調主義の利点に立ち返り、現リーダーたちも同様に振舞う将来を強く望みます。

IHLは全般的に、軍事的必要性と人道的配慮のバランスを正しく保つ、現実に即した多くのルールから成り立っています。戦闘員が戦闘行為を続ける際、可能な限り民間人の負傷者を出してはなりません。民間人を意図的に標的にすることは絶対禁止なのです。超えてはならない一線は明確です:投降した兵士の殺戮、病院への爆撃、拷問、傷病者の治療の拒否などは、すべて許されざる法律違反です。

 

国際社会の分極化が進む時代にあって、この一連の法体系はかつてないほど必要性を帯びています。ひとたび戦争が終われば、皆が再び共存して行かなければならなくなるからです。互いに敬意をもって向かい合えば、敵に対する相互の憎しみが必ず薄れます。私たちは人間性をもって恐怖と対峙しているのです。

 

条約の中の崇高な約束事と、現場の実態のギャップを指して、ジュネーブ諸条約を非難する人たちもいます。シリア、リビア、ウクライナ、中央アフリカ共和国、南スーダン … 違法行為は枚挙にいとまがなく、被害を数字で表すことは不可能です。とはいえ、交通事故による死傷者数が多すぎるからと言って、道路交通法を単に無視していいことにはならないですよね?それと同じです。

 

他にも、違法行為を避けることが難しいのだからIHLをもはや持ち出すべきではない、と言う人たちもいます。私たちの答えは非常に明確です。司令官が、民間人に負傷者が出る事態に重きをおいて軍事行動を中止したのならば、それこそがIHLの賜物です。ICRC職員が飢餓状態にある被拘束者を救うことができたり、戦闘の最前線でも病院が機能し続けていたら、それはIHLの成功例として語られます。これらの勝利すべてが、必ずしも新聞の一面を飾るわけではありません。しかし、こうした事例が現に存在し、そのことが、より人道的な世界を目指して貢献しようとする私たちの決意をさらに強くするのです。私たちの前には大きな壁が立ちはだかっています。拍車のかかる武装勢力の細分化、そして、戦場における自律型兵器や人工知能の出現、の二つについて語るとき、私たちは五里霧中をさまよう思いです。一つ確かなことは、紛争がどのように展開しようとも、本質的な原則は変わらない、ということです。

 

戦時の被害を和らげ、人々を苦痛から守るというICRCの使命は、1949年のジュネーブ諸条約の中に明記されています。同条約に書かれている約束事を国内レベルで履行してもらうことが、国際人道法の守護者として働くICRCの最重要任務なのです。