アフリカをめぐる投資家と支援団体の連携:持続可能な人道支援に資金を提供

22/08/2019

中央アフリカ共和国の避難民キャンプを訪れたマウラー総裁  S. Mouhamadou Birom/ICRC

 

ペーター・マウラー
赤十字国際委員会(ICRC)総裁 

 

戦闘が繰り広げられるナイジェリアとコンゴ民主共和国。暴力に怯えるアフリカの角とサヘル地域。

何十年とは言わないまでも、アフリカでは大きな紛争が長年にわたって続いている。数十万の人々が殺され、安全を求めて家をあとに逃げ出す人々が数百万に上る。それに、気候変動や武器の拡散、地域特有の貧困などの要素が加わって、アフリカ大陸の紛争が今後も悪化の一途をたどることを私は懸念する。

巨大なニーズがある一方で、戦争の被害を受けた人たちを助ける資金はどこにあるのだろうか?国連のデータによると、2019年の人道支援には、世界全体で260億ドル(約2兆7650億円)が必要だが、7月の時点で、その27%しか調達できていない。

ICRCの活動資金の9割強は、戦時のルールであるジュネーブ諸条約に加入している政府から任意で拠出されている。その私たちも、ドナーからの寄付だけでは成り立たなくなっているのが現状だ。人道支援を世界各地で展開するため、新たな資金調達の道を見つける必要性を痛感している。

明白なことが一つある。それは、現代における人道危機の規模と複雑さに対処するには、もはや旧来の単発的な対応では不十分、ということだ。旧来の資金調達方法も依然重要であることは変わりないが、同時に、サービス提供システムを構築するための刷新的な財務モデルも見つけなければならない。

アフリカの指導者や国際機関、市民団体、NGO、民間企業などが一堂に会するTICAD(第7回アフリカ開発会議)に出席するため、私もまもなく日本を訪問する。そこでは、持続可能で強じんな社会の構築、気候変動、防災・減災、民間企業との連携について、議論や討論を行う予定だ。

そうした場において、サヘルやチャド湖地方、アフリカの角で長引く紛争に苦しむ何万もの人々に光を当てたいと思う。

例えば、3人の子どもの母であるジャクリーンのように、コンゴ民主共和国で戦闘に巻き込まれ、脚を撃たれて切断せざるをえなかった人たちだ。ICRCの支援を経て、ジャクリーンは義肢を付け、裁縫師の訓練を終えた後にミシンを購入。今では家族を支え、子どもたちが学校に行けるだけの稼ぎを得るに至った。

戦闘によってジャクリーンが背負わされた運命を克服できるよう支援することで、彼女だけでなく、家族の命も救うことになる。自活するための生計手段を得て、未来の道を切り開いてもらうため、スキルや能力の育成は必須だと、私は確信する。ICRCはミクロ経済プロジェクトを強化して、人々が補助金に頼らず、小さな事業を起こして経済的に自立できるようにする一方で、自主性を取り戻そうとする人々に必要な元手として起業時の少額援助を行っている。

同時に、より大きな視野に立った対応も必要である。人道主義を掲げる者として、短期間で必要な救済策も講じつつ、社会全体の構造的な問題にも取り組み、持続可能で強じんな社会を構築しなければならない。

それらを並行して進めるためには、短期的な目標を達成するために行ってきた旧来の緊急人道資金調達の形とは別に、長期的な視野をもって予算を組む必要がある。TICADでは、アフリカの指導者や民間企業とともに、長期にわたる活動を支える資金をどう調達し、いかにして根本的な人道問題に取り組むモデルを構築するかを議論する予定だ。
ICRCは2017年以降、旧来からある人道支援のための資金調達モデルを超えて、画期的な事業を展開するために、企業や国際金融機関、財団など新規のアクターと提携する革新的な道を探っている。

企業を集めて、ナイジェリアやマリ、コンゴ民主共和国の身体リハビリテーション事業に投資する史上初の「ヒューマニタリアン・インパクト・ボンド」と銘打った債券も発行した。5年のうちに成功裏に完了すれば、各国政府が、当該事業に投資した企業に返済を行うアウトカムファンダー(成果に対して対価を支払う主体)となる。既に2年が経過したが、事業は順調に進んでいると私から自信をもってお伝えしよう。

ナイジェリアではトニー・エルメル財団と連携している。財団の指導プログラムやネットワーク、その他の支援制度を、同国北東部やニジェール・デルタ出身のナイジェリア人起業家が利用できるようにサポートし、能力開発を進めてきた。コンゴ民主共和国のゴマでは、長期にわたり確実に持続可能なサービス提供を目指して、人口35万の水インフラを支える投資モデルを検討している。

人道的な投資家や慈善家が果たす役割は重要だが、国家もまた、人道事業向けに民間資本を解放する枠組みを設けなければならない。ヒューマニタリアン・インパクト・ボンドでは、いくつかの政府が民間投資家に対して必要かつ不可欠な保証を提供した。

世界銀行などの国際機関や企業団体とも協力して、飢餓を防ぐための初期警告システム「飢饉行動メカニズム」の構築にも取り組んでいる。飢餓のリスクを金銭に換算して、一定の基準に達したときに支援に必要な財源を組織に提供する仕組みを作り上げるため、財務メカニズムの開発が必要となってくる。

最も能力に長け、経験のある組織や企業がこのプロジェクトの可能性を見出し、チャンスを逃すまいと乗り出していることは意義深い。突き詰めれば、その成功を左右するのは、技術的な対応能力のみならず、国家機関の政治的意思にかかっていると言っていいだろう。人道危機が発生する際に生じるコストを緩和する代わりに、予防のための資金調達モデルへ投資しようとする意思だ。

長期にわたり紛争状態にある地域が多く存在するため、アフリカでも、人道と開発は持ちつ持たれつの関係性にある。幸いにして、この大陸で共通の解決策を見つけ、それを支援しようとする投資家や企業パートナーの関心は昨今高まりつつある。

TICADを主催する日本政府のアフリカへの思い入れと決断に、私は多くの希望を見出だしている。アフリカ大陸は世界でもトップレベルの経済急成長国を7つ擁し、人々は技術や変化、改革を急速に取り入れつつある。人道を掲げる者と企業リーダーの提携を促し、人道面でこれまで以上に大きく、かつ広範にインパクトを生み出すこと。アフリカにとって、その機は今まさに熟している。