国連事務総長とICRC総裁による共同声明:都市を狙う爆弾・砲弾を止めよ!

26/09/2019

 

アントニオ・グテーレス国連事務総長と赤十字国際委員会 (ICRC) 総裁ペーター・マウラーによる共同声明

 

シリアのイドリブとトリポリでは、降り注ぐ爆弾や砲弾のため甚大な被害が出ています。つい最近攻撃を受けたモスル、アレッポ、ラッカ、タイズ、ドネツク、ファルージャ、サナアからさらに被害を受けた都市が次々に増えて行きます。

 

新聞の一面を飾ることは稀ですが、これこそ一面に値する記事です。都市部の戦争は、紙面の片隅で触れる程度のものではありません。実際に5千万の人々が今も戦争の被害に苦しんでいるのです。

 

都市型紛争による人道被害が甚大であることに危機感を抱き、ICRCと国連は、人口密集地で影響が多方面にわたる爆発性兵器の使用を避けるよう、武力紛争に関わる国々や当事者に向けて、2019918日付で共同声明を発表しました。

 

世界が都市化するにつれて、武力紛争もまた都市化しています。都市部で爆弾や砲弾が使用されると、それが空爆、ロケット、ミサイルまたは簡易爆発物であろうと、その攻撃の矢面に立たされるのは圧倒的に民間人です。実際に負傷者は、概算でも民間人が90%以上を占めます。攻撃を受けた都市の例は、アフガニスタン、イラク、シリア、ウクライナなど枚挙にいとまはありません。人口密集地で撮影された痛ましい画像は、市街戦で民間人が痛手を被るパターンを示しているにも関わらず見過ごされがちです。

 

紛争当事者は、人口密集地での戦闘は、広大な戦場で戦うのとは勝手が違うことを認識すべきです。市、町、難民キャンプにおいて広範に被害を及ぼす爆発性兵器を使用すれば、民間人に無差別に危害を加えるリスクが高まることを忘れてはなりません。 

 

市街戦では無数の民間人が殺害され、重傷を負います。身体や心の傷を生涯背負う被害者が大勢います。水、電気、保健衛生や医療などの基本サービスを提供するのに必要なインフラがダメージを受け、破壊されます。ここからドミノ効果によって被害が増幅していくのです。一つの例を挙げると、先月イエメンのアデンで発生した激しい戦闘の末に20万人以上が安全できれいな水を利用できなくなりました。

 

供給ラインが爆破されると、水や電気が途絶え、医療を提供することもままなりません。実際に、市街地が爆弾や砲弾を受けると医療も大打撃を被ります。医療スタッフに死傷者が出たり、あるいは救急車が負傷者のところまでたどり着けない状況が生じたりします。病院が修復不可能なほど破壊されることもあるのです。

 

攻撃を生き延びたとしても、その後の命の保証はなく、多くは逃げるより他はありません。トリポリが激しい爆撃や砲撃に見舞われた今夏、わずか2ヵ月の間に約10万人が避難しました。避難民の中でも女性や子どもは特に健康や生命の危機に直面しやすくなります。イラク国内では150万の避難民が故郷に帰ることができません。家が壊され、生きるために欠かせないサービス網が壊滅状態となり、不発弾や地雷があちこちに残る状況でも、避難民はあらゆる困難に耐えて生活を立て直そうと必死です。

 

市街戦による大量破壊は、数年から数十年をさかのぼり開発指数で表すことができます。例えば、イエメンの武力紛争勃発から4年目の人間開発指数は20年前のレベルまで落ち込みました。これは、持続可能な開発目標の多くを達成していたにもかかわらず、そこから大きく後退したことを表しています。人が集まる繁栄した街がゴーストタウンになると、数十年培われた進歩がまたたく間に逆戻りします。

 

1949年にジュネーブ諸条約が締結されてから今年で70年を迎えます。国際人道法(IHL)の規則を尊重することで発揮される民間人や非戦闘員の保護を定めた世界で広く受け入れられている条約です。IHLは民間人または民用物に対する直接攻撃や無差別な攻撃、必要以上に攻撃を加えることの他に、無差別殺傷兵器や民間人を人間の盾として利用することを厳しく禁じています。IHLは、民間人に対する二次的な被害を最小限に抑える対策を講じることを紛争当事者に要求しています。軍事目標や民間人および民間の建造物が混在する人口密集地で武力紛争が起こるとしたら、規則の尊重がますます必要になります。

 

人口密集地では民間人が巻き込まれやすくなることから、民間人に危害を与えないような戦術や兵器の選択を国家が採用し、再評価することが肝要です。そして、国軍に対してそのための適切な準備や訓練、装備を施すことも重要です。国家はまた、パートナーや自分たちの支援する紛争当事者に対して最後まで影響を行使できなければなりません。軍事作戦の計画と実行においては、民間人の保護を戦略的優先事項にすることは必須です。そうした傾向はいくつかの過程においてみられるものの、まだまだ行うべきことはたくさんあります。時を待たずして今すぐにです。

 

都市型紛争において、民間人の保護を強化する複数のイニシアチブが進行中であることは、私たちにとっても心強いことです。第一段階として、私たちな、各国が政治的宣言をはじめ、適切な制限、共通の基準、人口密集地での爆発性兵器の使用についてIHLに見合った軍事行動政策を設ける際にその取組みをサポートします。

 

そして、国家およびその他の関係者に対して、民間人の負傷者に関するデータ収集を強化し、民間人への危害を軽減すると同時に調査するメカニズムを確立して、説明責任を確保し、将来の作戦に向けた教訓を引き出すことを強く要求します。

 

また、威力のある爆発性兵器の人口密集地での使用を禁止することや制限を設けることを含め、人口密集地における武力紛争で民間人が危害を受けるリスクを軽減するための適正な規範を見出し、共有することを各国に勧告します。

 

都市部の戦闘を全体として減らす試みとして、人口密集地以外で戦闘を行う戦略と戦術を採用することをあらゆる紛争当事者に求めると共に、民間人が包囲された地域から避難することを認めるよう要求します。

 

最後に、人口密集地で戦争が発生した場合に民間人の保護を手厚くする政策と慣行を採択するよう各国に訴えます。無差別に被害を与える可能性が著しく高いため、広範囲に影響を及ぼす爆発性兵器の使用の回避もその中に含めることを望みます。そうすることで、市街戦の影響は軽減され、人々の苦しみは和らいでいくのです。