ICRC総裁によるスピーチ:核の時代の終わりの始まり

27/09/2019

赤十字国際委員会 総裁
ペーター・マウラーによるスピーチ

核兵器禁止条約 調印式
核の時代の終わりの始まり

2019年9月26日 国連 (ニューヨーク)

 

国連総会議長殿、国連軍縮局上級代表殿、核兵器廃絶国際キャンペーン (ICAN) 事務局長殿、各国を代表してお集まりの皆さま、そして同僚たち、核兵器禁止条約が2年前に採択され、核兵器の時代の終わりの始まりを告げました。

 

本条約は、核兵器が人類史上初めて使用され、未曽有の惨禍をもたらしてから数十年にわたり繰り返されてきた懸念に応えて誕生し、再度の使用を確実に食い止める必須のツールです。

 

条約調印に当たり、今日新たに署名に加わる70ヵ国に賛辞を送ります。これらの国々には是非次の段階に進んでいただき、条約の締約国となるよう奨励します。赤十字国際委員会は各国の今後の取り組みを支援する用意があります。

 

論より証拠です。たとえ核攻撃の応酬が「限定的」であったとしても、被害は甚大です。核兵器が使用された直後から長期にわたって健康被害が出るうえに、社会や医療保健システム、環境、ひいては地球全体に影響を及ぼします。

 

国際赤十字・赤新月運動は1945年、負傷者や瀕死の人々に寄り添うため、厳しい状況下にある広島・長崎に入り、惨憺たる人道被害を目の当たりにしました。現代の核兵器はその当時のものよりさらに威力が増しており、その影響の大きさは計り知れません。

 

来年は広島・長崎への原爆投下から75年の節目を迎えます。核兵器による壊滅的な人道上の被害の証拠は、常に私たちの議論の中心に据えられなければなりません。

 

人道上壊滅的な被害をもたらす兵器を禁止・廃絶すること自体、物議を醸すようなことではありません。核兵器の使用によって引き起こされる言い尽くせない苦しみと想像を絶する破壊こそ、禁止と廃絶の議論において最も論じられるべきことなのです。

 

逆説的に言えば、軍事と政治の核兵器への関心は、こうした破壊力に由来しています。多くの国が核抑止力」や「相互確証破壊」の理論の追求に巨額を投じた結果、「恐怖の均衡」を崩し、人類全体を脅かし続けているのです。

 

新型核兵器開発への取り組みが再開され、既存の核軍縮・核非拡散条約が有名無実化していることや、新たな核武装競争に向かう流れに深い懸念が寄せられている事実から、ここでいうところの「均衡」に危うさが潜んでいることが分かります。

 

冷戦終結以降、核兵器の壊滅的被害や根本的な非人道性への関心をこれほど懸命に求めたことはありません。いかなる状況にあろうとも核兵器の使用は人道上、道徳上、法律上受け入れられないということを明確に伝えなければならないのです。

 

核兵器禁止条約を国際人道法の新たな規範として発効させることは、いまや必要不可欠です。本条約への支持を最大限取り付けるための努力を私たちは惜しんではなりません。

 

壊滅的な人道上の被害を踏まえて、各国は本条約に署名して批准することにより、核兵器のいかなる使用も、また使用をほのめかしたり、保有することですら受け入れられない、との明確なサインを送ることができます。

 

ジュネーブ諸条約は、戦争による必要以上の苦しみから人々を守るために70年前に採択されました。しかし、核兵器はいまだ存在し続け、核兵器使用のリスクの高まりは現在進行形の紛争をこの上なく物騒にし、必要な保護を誰も受けられなくなる世界規模の大惨事になるリスクが高まります。壊滅的な人道上の惨禍を引き起こす兵器を安全保障の手段とみなすことは到底できません。

 

核兵器禁止条約に署名し、批准した国々は、今後核兵器による大惨事から人類を守る責任を果たしています。私たちに共通する人間性、人類そして将来の世代の存続がかかっています。

 

ご清聴ありがとうございました。