核兵器の時代の終わりの始まり/ICRC総裁声明

お知らせ 26/10/2020

©ICRC

 

赤十字国際委員会 ペーター・マウラー総裁声明
2020年10月25日 

 

ついに歴史的な瞬間がやってきました。人類が生み出した、最も恐ろしく非人道的な兵器の一つである核兵器の禁止を明記した新しい国際条約が、90日以内に発効することになりました。

 

この瞬間へと導いてくださった各国、市民団体、その他の関係者の皆さんに心からお祝い申し上げます。 赤十字国際委員会(ICRC)ならびに国際赤十字・赤新月運動が、ここまでの道のりにおいて貢献できたことを誇りに思います。 人類は今日、勝利を勝ち取りました。

 

ICRCは10年前、核兵器を巡る新たな議論が必要である、と呼びかけました。

 

「核兵器が存在することで、難解な問題がいくつも提起されます。人類の利益は国家の権利より優先されなければならないのではないか。人類は自ら生み出した技術をしのぐ能力を有しているのか。国際人道法はどこまでその力を発揮できるのか。そして、戦時下で私たちはどの程度の人的被害を想定し、また許容するのか」

 

私たちは長年、法的拘束力をもつ国際条約によって核兵器が禁止・廃絶されるよう、すべての国に対して交渉を呼びかけてきました。その呼びかけを繰り返すことで、私たちはここまでたどり着いたのです。

 

2010年には、まだ絵空事に思えたかもしれません。 しかし、核兵器禁止条約の発効を目前に控えた今、昨日まで非現実的だったことでも明日には現実になりうる、ということが示されました。先見性と明確な目的をもってともに行動することで、私たちが抱える最大かつ最も根深い問題さえも克服できることが示されたのです。

 

あまりにも長い間、私たちは核兵器をどう扱うべきかについて、過去を振り返ることで回答を模索してきました。核の抑止力という危険な論理によって繰り返し世界が想像を絶する破壊の危機に瀕し、人類の存続そのものを脅かしていることを目の当たりにしてきました。 多くの人が核兵器を国際安全保障システムの一部であり、避けることのできないものとして受け入れるようになっていました。

 

核兵器禁止条約の発効により、私たちは未来に目を向けることができます。 このような非人道的な武器から解放された世界を、もはや遠い夢としてではなく、実際に達成可能な目標として思い描けるようになるのです。

 

ということは、核兵器禁止への歩みは始まったばかりなのです。核兵器禁止条約の発効を祝う一方で、私たちの努力が終わったわけではないということを忘れてはなりません。

 

世界にはいまだ1万3千以上の核兵器があります。 そのうちの数千発はすぐに発射できる高度警戒態勢にあります。 これが私たちが直面している現実です。

 

核兵器禁止条約は、これまで核軍縮や不拡散を目指したすべての努力の帰結で、今後の指標となります。現代の私たち、そして未来の世代に暗い影を落としてきた核兵器から解放される日が来ることを約束してくれます。

 

とはいえ、その約束を形にできるかは私たち次第です。来る条約締約国との初会合では、条約の内容が忠実に履行されるよう念を押さなければなりません。

 

また、可能な限り幅広く支持を取り付けられるよう、私たちの努力に拍車をかける必要があります。集団的な安全保障の概念を声高に訴えなければなりません。長期にわたり実行が可能で、人道的な概念です。

 

そして何より、被ばく者の証言を語り継ぐことに力を尽くさなければなりません。人道上壊滅的な被害をもたらす事実を、議論の中心に据えることも忘れてはなりません。どんな準備も意味をなさない事態を、私たちは未然に防ぐしかないのです。

 

この条約が成立するきっかけとなったのは、保有国や彼らの動機に固執していた核兵器の議論を、兵器の性質とそれが人類に及ぼす深刻な影響に方向転換させたことです。その一点を見失わなければ、この条約が目指す地点‐核兵器なき世界‐に到達することができるでしょう。

 

人類は今日、安全な未来への約束を手に入れました。条約の発効が現実味を帯びた今、この機を逃す手はありません。核兵器の時代に終止符を打ちましょう。

 


ICRC制作映像:広島と長崎に落とされた原子爆弾

 

原文(英語):https://www.icrc.org/en/document/we-must-not-forget-prohibiting-nuclear-weapons-beginning-not-end-our-efforts-0?mc_phishing_protection_id=28048-buabuc70s0v56s8sntd0