「あなたは一人じゃない」―ボスニア・ヘルツェゴビナでのコロナ対応―

お知らせ 19/02/2021

 

ボスニア・ヘルツェゴビナでは、2020年3月初旬に新型コロナウイルスへの最初の感染者が確認されました。当初はウイルスの実態がわかっていなかったことから、社会全体が大きな不安に包まれました。

 

ボスニア・ヘルツェゴビナ(ICRC)―ボスニア・ヘルツェゴビナ赤十字社は、赤十字国際委員会(ICRC)や国際赤十 字・赤新月社連盟(IFRC)、スイスやトルコ、イタリア、オーストリアをはじめとした各国の赤十字社、および赤新月社などの国際赤十字・赤新月運動(赤十字運動)を構成する組織の支援と協力のもと、感染拡大とその影響に対応するためにただちに支援を開始しました。

 

赤十字パートナーによる市民への支援全般のサポートに加えて、ICRCは行方不明者の家族や地雷被害者、法医学機関、刑務所など、同国内の通常のクライアントや協力団体のさらなるニーズにも対応しています。

 


ロックダウン中の救急措置

65歳以上の人など、このような特別な状況下において影響を受けやすくリスクの高い人々の支援に携わりました。外出ができない人々のために、請求書の支払いや年金の受給手続きを代わりに行い、
また食料や薬などの必需品を提供しました。

―赤十字ボランティア(2020年5月)

 

パンデミックの第一波においては、感染症の蔓延を防ぐために、2カ月にわたり厳格なロックダウンが行われました。また、政府当局は長期間にわたる夜間外出禁止令をただちに発令。65歳以上の人は家から一歩も出られなくなりました。

 

こうした弱い立場にある人々を支援するために、赤十字はあらゆる行政レベルの危機対応チームに参加し、2,000人を超えるボランティアとスタッフを即座に動員し、地元自治体おいて日々の支援を提供しています。

 

2020年3月から5月まで2カ月にわたり全国的なロックダウンが行われた際には、ボスニア・ヘルツェゴビナ赤十字社は、赤十字運動のパートナーのサポートのもと、次のような支援を行いました。

 

  • 保護用マスク10万枚以上、食料と衛生用品一式を23,000セット以上、および感染予防策をまとめた冊子44,000冊を配付。
  • 65歳以上を対象に、薬局・食料品店へのおつかいや請求書の支払いなどの支援を約1万件提供。
  • ホットラインを通じた心のケアを1,000件以上実施。
  • 公共エリア675カ所を消毒し、感染が疑われる235人を病院に搬送。
  • 屋外用ベッドとテント一式を500セット以上14の地方自治体に提供し、検査・隔離用のテントを50張り以上設置。

 

ロックダウン期間中に2,000人を超える赤十字のボランティアやスタッフが、30,000人以上を訪問し支援。©ICRC

 

ロックダウン期間中の人道ニーズにただちに対応したことで、赤十字運動が連携して迅速な支援を提供できることが実証されました。一方で、ボスニア・ヘルツェゴビナ赤十字社が同国政府当局を補完する役割を果たす準備が十分にできていることも再度実証されました。

 


コロナ禍における世界赤十字デー
ボランティアは私たちにとって最も重要な財産で、
赤十字の最大の価値はこのボランティア活動に見出すことができます。

―ボスニア・ヘルツェゴビナ赤十字社ラジコ・ラジック事務総長(2020年5月)

 

赤十字運動がコロナ禍で連携して対応できたのも、現場のボランティアが大活躍してくれたおかげです。ICRCボスニア・ヘルツェゴビナ代表部は、5月8日の世界赤十字デーに、首都サラエボの美術アカデミーやビイェリナの市庁舎、そしてモスタルのシンボルでもある石橋に赤十字のプロジェクションマッピングを実施。ボランティアの無償の奉仕に対する感謝の気持ちを表しました。

 

 

世界赤十字デーに各地でプロジェクションマッピングを実施

 

プロジェクションマッピングでは、パンデミック対応に携わっている赤十字運動のパートナーのロゴとともに、「あなたは一人じゃない」というメッセージを添えました。国民に対して「ロックダウン期間中でもひとりぼっちではないよ」と励まし、また非常事態下で働き続けている赤十字ボランティアに対しては「赤十字運動は全力でサポートしているよ」とエールを送っています。

 

今回のキャンペーンには、もう一つの目的があります。コロナ禍で行われている赤十字のさまざまな支援を周知すること、また、支援が必要な場合には国内各地の赤十字支部に連絡するよう促すことです。

 

行方不明者の家族への支援

7,000人以上にのぼる紛争による行方不明者の家族も、ICRCが重点的に支援しているパートナーで、コロナ禍の影響を特に受けています。ただでさえ、親族が行方不明のままで不安にさいなまれている状況に、コロナ禍が追い打ちをかけています。

 

40以上の行方不明者の家族会に連絡を取り、ロックダウン期間中のこうした家族の人々の健康状態を確認。行方不明者の親族で65歳を超える1,777人が、コロナ禍とそれに付随した経済的打撃にによって特に弱い立場に追い込まれています。

 

赤十字ボランティアが行方不明者の家族1,000人以上に直接連絡。食料や衛生用品一式の配付など、800人が何らかの支援を要請しました。ICRCも協力し、必要な支援物資をボランティア経由で届けました。

 

行方不明者の親族のうち最も弱い立場に陥った800人に対して、赤十字ボランティアが、ICRCが調達した支援物資を配付。©ICRC

 

コロナ禍は、消息を断った身内を抱える家族の生活に、別の側面からも重大な影響を与えています。ロックダウンで捜索が中断し、その後もさまざま規制によって大きく妨げられたのです。

 

ICRCは、待ちわびる家族の負担がコロナ禍で増加したことを受けて、昨年11、12月に、30以上の行方不明者の家族会の代表者に対して、心のケア講座を数回にわたり実施。 また同様のワークショップを、行方不明者調査会の追跡調査員とスタッフ20人にも実施しました。ワークショップは、コロナ禍が職員の日常業務に及ぼす影響に焦点を当て、行方不明者の家族とのコミュニケーションを潤滑にすることが目的でした。

 

地雷被害者への支援

ボスニア・ヘルツェゴビナの紛争終結以来25年の間に、1,700人以上の民間人が地雷の被害を受け、うち617人が命を落としました。いまだ国土のほぼ2%に地雷や不発弾が放置されていて、その数は推定79,000発にのぼります。これにより50万人以上(人口の約15%)が直接的な脅威にさらされています。

 

スイス赤十字社とICRCの支援を受けて、ボスニア・ヘルツェゴビナ赤十字社は、地雷被害者のうち、コロナ禍で最も経済的打撃を受けた人々に直接的な支援を提供しました。 また、赤十字の地雷問題啓発担当が、全国にいる被害者のうち最も弱い立場に置かれている124人を特定。多くの場合、遠隔地や農村地域で暮らしている被害者に、コロナ禍で生じた緊急ニーズに対応するための現金を赤十字運動の基準額に即して支給しました。

 


法医学機関および刑務所への支援

サラエボでは現在、新型コロナウイルス感染者の解剖は実施していません。そのための条件や設備、備品が整っていないからです。そうした基盤が何一つないのが現状です。

―サラエボの国選病理医のハムザ・ズジョ氏(2020年4月)

 

コロナ禍における法医学者の安全水準を強化するために、ICRCは保健所用に強度のある遺体袋1,350体分を調達し、またボスニア・ヘルツェゴビナの5つの法医学機関に対しては緊急かつ最優先で必要とされていた個人用保護具(PPE)を提供。 また、新型ウイルスに感染した遺体の管理に関して指導・助言しました。

 

2020年末までに、サラエボ大学医学部の法医学研究所の改装、および必要な設備の整備を支援。検死室が新設されたことで、今後は行方不明者の身元確認のための法医学の実施に役立つだけではなく、必要な技術設備がないために以前はできなかった新型コロナウイルス感染症による死亡例の検死もできるようになります。

 

被拘束者間での感染症拡大を防止するための保護具や消毒剤、テレホンカード、予防手引きを、ビハチをはじめとした11の刑務所に提供しました。©ICRC

 

収容施設支援の一環として、2万枚の保護マスクと手袋、750リットルの消毒剤、300枚のテレホンカードを11の刑務所に提供。テレホンカードは、コロナ禍で面会が中断されたときに、被拘束者が親族と連絡を取れるようにするためのものです。また、収容施設内での感染症蔓延の防止・管理を目的とした対策案を刑務所に提供しました。