赤十字と名のつく組織は大きく分けて三つあります。赤十字国際委員会（ICRC）、国際赤十字・赤新月社連盟（IFRC）、そして各国の赤十字社、赤新月社です。ICRCは主に紛争地において戦闘の犠牲となっている人々のために様々な活動を行い、各国の赤十字社、赤新月社は、それぞれの国のニーズにあった活動を幅広く行います。日本では日本赤十字社がこれに該当します。IFRCは各社の連合体として、主に平時に活動し、災害などで犠牲となった人々のために支援活動を行います。各組織は財政・政策の面で独立しており、この三つの活動を総称して「国際赤十字・赤新月運動（赤十字運動）」と呼びます。
赤十字というと、日本では医療や災害救援のイメージが強いと思いますが、ICRCは紛争地において、暴力の犠牲となった人々の支援・保護活動を行い、医療は多くの事業の中の一つにすぎません。生活の自立支援や食料・水・避難所の提供、離散家族の連絡回復・再会支援事業、戦争捕虜や被拘束者の訪問、戦傷外科やトラウマケアなど、時には紛争の最前線で現場の人道ニーズに応えます。
日本赤十字社など、世界各国にある赤十字社や赤新月社は、主に自国内で公共性の高い事業に取り組んでいます。救援活動や開発支援など平時や自然災害時の活動に加えて、献血や病院などの事業については、国や地方公共団体を補完する役割も担っています。
また、財源も異なります。ICRCの活動費は、その約９割がジュネーブ諸条約に加入している各国政府からの自発的な拠出金から成り立っています。そのため、ICRC駐日代表部は、一般の個人からの募金・寄付を受け付けていません。
一方で、赤十字運動のパートナーとしての連携は欠かせません。日本赤十字社は、紛争地におけるICRCの紛争犠牲者支援事業に日本人の医療従事を派遣。毎年12月の「海外たすけあいキャンペーン」では、集まった寄付の一部が、ICRCの紛争地での活動に充てられています。
いいえ。赤十字のマーク（標章）には、戦時に「攻撃してはならない」という保護の意味があります。国際法上、その使用は厳格に定められており、民間が運営するクリニックや医療施設、薬局、救護所など、医療を意味する目的で使用することは禁止されています。
赤十字の標章は、戦争や紛争などで傷ついた人々と、その人たちを救護する軍の衛生部隊や赤十字の救護員・施設等を攻撃から守るために掲げられます。従って、紛争地でこの標章を掲げている病院や救護員等には、決して攻撃を加えてはなりません。
なお、多くのイスラム教国は「赤十字はキリスト教を連想させる」として、赤い三日月「赤新月」を使用しています。また、白地に赤いひし形を配した「赤いクリスタル」は、第三の標章として2005年に新たに加わり、赤十字運動に連なる一社であることを示す際に、ひし形の中にその国独自のマークを入れることができるようになりました。「赤新月」も「赤いクリスタル」も赤十字同様、国際法上保護の意味を有します。
どちらでもありません。ICRCは、196カ国が加入しているジュネーブ諸条約などの国際協定や規約から正式な地位と人道的役割を与えられた、唯一無二の国際人道支援組織です。スイス連邦の民法典にその法的地位が保障されており、本部をジュネーブに置きます。
紛争地における人道支援を滞りなく展開するため、ICRCが拠点を置く国とは地位協定を結ぶケースが多く、その場合、ICRC代表部には外交特権が与えられます。また、中立で独立した組織として1990年には国連総会決議によって、国連総会の正式なオブザーバーとしての地位を得ています。
1859年にイタリア北部でソルフェリーノの戦いを目撃したスイス人実業家アンリー・デュナンが、その４年後の1863年に創設しました。敵味方の区別なく傷病者を救護することを目的に、4人のジュネーブ市民とともに「五人委員会」を設立。16カ国の参加を得てジュネーブで国際会議が開かれ、赤十字規約が採択されました。のちに改称し「赤十字国際委員会」となりました。その後、平時から同じ理念を掲げる団体を各国に組織する必要性を訴え、世界中に赤十字社、赤新月社が誕生しました。
ジュネーブ諸条約締約国の各国政府および欧州委員会が主な拠出元で、各国赤十字社、赤新月社や民間からの拠出は全体の5％未満となっています。
約２万人の職員が、世界約100カ所で活動しています。（2019年末現在）
詳しくはこちら：https://jp.icrc.org/wp-content/uploads/2020/10/Facts-And-figures-2019.pdf
第一次世界大戦中、日本で捕虜の訪問などICRCの保護活動が行われていましたが、このとき事務所はありませんでした。1942年に初の駐日代表部が横浜にでき、その後、軽井沢に移転。1949年に撤退した後、2009年の2月3日に60年ぶりに日本に拠点を設置。2019年1月に、名称を駐日事務所から駐日代表部に変更しました。
主に以下の５つです。
日本政府をはじめ関係省庁や大学、研究所、人道分野に関与する様々な組織や個人に対して、世界中で展開されているICRCの支援・保護活動についての情報や現場の最新ニュースの発信に加えて、各種イベントやメディア、エンターテインメントを通じて、人道問題に対する世間の関心や議論の醸成を図ります。また、大学や日本赤十字社を通して人道法を普及するうえでの専門知識や技術的サポートを提供しています。
最先端の技術を人道支援の現場にも生かせるよう、イノベーションの観点から産学と連携し技術やツールの開発にいそしんでいます。
ICRCの主要ドナー国である日本の省庁、特に人道分野に関与する外務省や防衛省の関係当局とハイレベル対話や積極的な情報・意見交換を行い、世界の人道危機について定期的に協議しています。
2019年末現在で、邦人職員は３０人前後。ICRCを通じた人道支援への的貢献も呼びかけ、世界で働く仲間を随時募集しています。
自律型兵器やサイバー攻撃など、新たな戦闘手段として懸念されるものについても、法的・倫理的懸念を示し共有することで、将来の人道被害を生まないよう議論を尽くします。
国際職員（デレゲート）として働く、駐日代表部職員として働く、インターンとして働く、の３つの選択肢があります。採用情報に関する詳細は こちらをご覧ください。