2023年度 国際人道法模擬裁判・ロールプレイ大会 国内予選の結果報告
赤十字国際委員会(ICRC)は、2023年度国際人道法(IHL)模擬裁判およびロールプレイ大会国内予選を、2023年12月2日(土)、9日(土)、12月10日(日)の3日間にわたり開催しました。日本におけるIHL模擬裁判大会は今回で14回目、ロールプレイ大会は4回目の開催となります。
本年度の大会では、実際に問題となっている「海上武力紛争におけるIHLの適用の課題」や「収容所で拘束された人々の保護の必要性」をテーマに、参加チームは同年8月に発表された架空の国家間の武力紛争を想定した設定文を読み込み、周到な準備を進めて大会に臨みました。
12月2日、模擬裁判大会は、前回同様に予選をオンライン、準決勝・決勝戦を早稲田大学にて対面で実施。参加チームは、検察側と弁護側に分かれて、国際法一般、特にIHLの知識を駆使しながら、英語で自らの弁論を展開しました。
全8チーム(愛知県立大学、宇都宮大学、京都大学、国際基督教大学、東京大学、立命館アジア太平洋大学、立命館大学、早稲田大学)の中から決勝に勝ち進んだのは東京大学チームと立命館アジア太平洋大学チーム。12月10日におこなわれた決勝では、接戦ののち、立命館アジア太平洋大学チームが優勝を果たしました。そして最優秀弁論者賞は、宇都宮大学チームのMagda Yukari Hagiya Corredoさんに贈られました。
また、今年から検察側と弁護側それぞれの最も優秀な書面を表彰することになり、最優秀検察書面賞は立命館大学、最優秀弁護書面賞は立命館アジア太平洋大学が受賞しました。
新型コロナウイルス感染症対策のため、ロールプレイ大会は一昨年までオンラインのみの開催でしたが、昨年と同様に、今年も東京大学で対面で開催することができました。参加チームは、武力紛争下で働く人道支援団体のスタッフに扮し、収容所に拘束された人々を訪問するなど、大会当日に与えられる複数のシナリオに臨機応変に対応し、IHLに基づいた人道支援団体のミッションを体験しました。
12月9日、全7チーム(宇都宮大学、大阪大学、京都大学、国際基督教大学、東京大学、立命館アジア太平洋大学、早稲田大学)のうち、3年連続で立命館アジア太平洋大学チームが優勝しました。
裁判官・審査員として、ICRC関係者に加えて以下の方々にご協力いただきました。(敬称略、五十音順)
- 新井 京/同志社大学
- 浦野 響/外務省
- 大野 鉄平/日本弁護士連合会
- 大西 耕輔/同志社大学
- 川岸 伸/静岡大学
- 小林 美奈/日本弁護士連合会
- 齋藤 デビッド 宥雅/国際刑事裁判所
- 齋藤 雄介/海上自衛隊
- 竹村 仁美/一橋大学
- 中井 優花/日本赤十字社
- 中村 日向子/千葉地方裁判所
- 中鳥 勇紀/クリフォードチャンス法律事務所
- 山下 渉/外務省
- 吉田 曉永/早稲田大学
- 和田 恵/Kollectアーツ法律事務所
大会の運営には、早稲田大学教授の古谷修一氏、東京大学教授のキハラハント愛氏、立命館アジア太平洋大学准教授の平野実晴氏をはじめ、早稲田大学、東京大学の学生の皆さんにサポートしていただきました。
また、2日の模擬裁判大会の予選後には、サイドイベントも実施。Kollectアーツ法律事務所の和田恵弁護士から「日本の弁護士から見た国際刑事裁判所での経験」についてお話いただきました。
模擬裁判大会は今年で14回目となり、過去の大会で参加チームの一員だった方が、立場を変えて、模擬裁判の裁判官を務めてくださっています。また、4回目となるロールプレイ大会においても、過去に大会に優勝し、日本代表として国際大会に出場した方に、アクターとしてご協力頂きました。ICRCは、日本における学術界や実務家、若い世代を巻き込んだIHLのネットワーク拡大に、これからも貢献していきたいと考えています。私たちICRCの主催する模擬裁判・ロールプレイ大会は、「To take the law out of the books」をスローガンにしています。IHLに対する理解がより実践的で親しみやすいものになるよう、ICRC駐日代表部は、次回大会の開催にも引き続き意欲を注いでいきます。