最新テクノロジーを活用した地雷探知:ウクライナ地雷関係者を対象にしたオンラインセミナーの実施

イベント
2025.02.26

ウクライナでは2014年から続いている紛争により、多くの地雷が埋設されていて、住民など民間人への危険性が指摘されています。ICRCウクライナ代表部の武器汚染問題担当のアンドリュー・ジェームス・ダンカンは、その現状を次のように話します。「こちらの地図は地雷が埋まっているとされる場所を示しているが、地図下部に濃淡のピンクで示した地域では地雷探知調査自体が行われていません」。ダンカンは、現在把握している数以上の地雷がウクライナ全土に埋設されている可能性を指摘しました。そのためウクライナでは、広範囲で地雷の探知と除去を行い、住民を地雷の脅威から解放することが求められていて、テクノロジーを有効活用することが検討されています。

セミナーの様子

ICRC

ICRCと早稲田大学は、2018年に共同で地雷探知に関するプロジェクトを立ち上げ、ドローン、サーマルカメラ、人工知能(AI)の技術を組み合わせたリモートセンシングシステムの開発に取り組んでいます。

2025年2月21日には、ICRCの 駐日代表部とウクライナ代表部が協力し、リモートセンシングシステムを紹介するオンラインセミナーを実施。ウクライナ政府関係者や同国や日本の地雷専門家も参加しました。

同セミナーでは、ICRC の武器汚染問題担当マーティン・ジーベンスと早稲田大学の澤田秀之教授がヨルダンでの実証実験の結果を紹介しました。ジーベンスは「現段階ですべての地雷をリモートセンシングシステムで探知することは難しいが、より多くのデータを収集してAIが学習することで、地雷探知の能力をあげることができると確信している」と強調。また、澤田教授は、「AIを使用した地雷画像分析技術のノウハウは、早稲田大学から途上国の教育機関へ技術移転も可能」と話し、日本から武器汚染が著しい地域の研究者や地雷専門家への知識の共有に関して意欲を示しました。

セミナーの様子

ICRC

中でも熱い議論が交わされたのは、ドローンが紛争に用いられている現状を受けて、地雷探知用のドローンと兵器として使用されるドローンの識別や、ウクライナ国内での規制に関してでした。「ドローンを飛行させることが目的ではなく、ドローンを使用して、地雷を探知・検出し、武器で汚染された地域から地雷の脅威を取り除くことが目的であるという前提を関係当局に理解をしてもらうことが大切」とダンカンは述べました。

ICRCの武器汚染問題担当部門の責任者であるエリック・トレフセンは、「紛争で使用される兵器の変化により、ドローンによる地雷探知には課題が多い」とする一方で、「リモートセンシングシステムは、従来の地雷探知に比べて、短時間で広範囲を効率的に網羅でき、ポテンシャルは非常に高い」と話しました。最後にICRCは、今後もさまざま専門家や関係者と地雷探知の分野において連携を強化していく姿勢を示し、セミナーを締めくくりました。