「国際人道法多国間セミナー」in 東京 ~アジア大洋州軍関係者が戦時のルールをめぐり活発に議論

イベント
2025.11.25
two persons discussing on the IHL topics

©ICRC

赤十字国際委員会(ICRC)駐日代表部は、2025年9月30日から10月2日の3日間、「国際人道法多国間セミナー」を自衛隊と共催しました。日本を含めたアジア大洋州の14カ国から軍関係者50名が参加。多様な軍種・専門分野・階級を持つ参加者たちは、国家間の紛争における国際人道法上の義務について認識を深め、自国の背景を交えてさまざまな意見交換を行いました。

セミナーでは、①捕虜等の拘束②被保護者に対する責任を持った取り扱い(安否や消息についての情報を一元化する国家情報局の設置など)③遺体の管理、の3つのテーマを設定。その中でICRCは、紛争下で160年以上にわたり人道支援を行ってきた知見をもって、それぞれの歴史的経緯や法制度、現代の戦争における課題を紹介しました。参加者はテーマごとにグループワークを行い、人道的、法的、倫理的側面から、軍事政策や運用、実務にどう適切に対処するかを議論しました。

two persons raising their hands during the IHL seminar

©ICRC

参加者の声(敬称略)

生田 裕蘭/防衛省 陸上幕僚監部 法務官付総括班長、一等陸佐
安全保障環境が厳しくなっている中で、今回初めてICRCとセミナーを共催させていただき、これだけ多くの法務官や関係者と各自の知見を踏まえて意見交換できたことは、非常に実りが多く意義深かったです。
訓練を見てもらったり、こうしたイベントを共同実施したりする中で、ICRCには日本の自衛隊の活動に対する助言をこれからも期待しています。

ICRC, interview, regional seminar, IHL, International humanitarian law

©ICRC

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キティオネ・ツナオサラ/フィジー軍大佐
ジュネーブ諸条約の中で、戦時における拘束や捕虜に関する部分に触れるのは初めてで、多くの情報が共有され非常に参考になりました。また、遺体管理は私にとって全く新しい分野だったので、今回の最大の学びとなりました。戦場における死者の扱いと責任の所在については通常の研修であまり取り上げません。過去の戦争によって培われたICRCの専門性に感銘を受けました。これまで多くのワークショップをICRCと実施していますが、主な対象は非国際的武力紛争でした。国際的武力紛争の文脈で語られたことで、今回考えを深め、知識を更新する機会が得られ感謝しています。

ICRC, interview, regional seminar, IHL, International humanitarian law

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レイサ・ヒンシェン/オーストラリア海軍司令官
今回の参加はとても為になり、楽しく学べました。他の国の人たちがジュネーブ諸条約を守るうえでどのような行動を実際取っているのか知れたことが有益でした。最大の関心事は、実際に捕虜をどのように扱うか、そして後方支援の仕方で、非常に有意義な議論が交わされました。多くの関係者が類似の問題に直面していることが明らかとなり、グループ全体に強い目的意識と方向性の共有感が生まれました。

最も価値ある点の一つは、複雑な環境下で活動してきたICRCから直接話を聞けたことです。現実のシナリオにおける条約の実践的適用を明確に説明していたICRCの専門家がとても印象的でした。国に帰ったら同僚たちと共有したいです。

ICRC, interview, regional seminar, IHL, International humanitarian law

©ICRC

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イベントを振り返って、ICRC駐日代表の榛澤祥子は次のように語ります。

「自衛隊と共同でイベントを実施することで、国際人道法の普及を通して関係強化を図るというのが大きな目的の一つです。3日間のイベントを通して、お互いの理解をより深めることができました。ICRCの強みは、国際人道法の守護者として軍関係者に専門的見地を共有できる場を提供できることです。これは私たちが常に中立であるからこそ果たせる役割です。14カ国の軍関係者を交えて、国際人道法上の課題を日本で話し合うといった例は、今までなかったと思います。こういった取り組みを今後もぜひ続けていきたいと思います」。

ICRC駐日代表部は、今後も同様のセミナーを実施することで、法務と実務の両面で各国軍における国際人道法の実践的かつ効果的な運用を目指し、引き続き貢献していきます。

group photo for seminar on detention in AP

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