ガザ・イスラエル紛争:人道法が軽視され、耐え難い犠牲を強いられる市民
ジュネーブ/テルアビブ(ICRC )-赤十字国際委員会(ICRC)総裁であるペーター・マウラーは、相次ぐ戦闘による人道状況を把握するため、8月4日から7日まで、ガザ地区、イスラエルおよびヨルダン川西岸地域を訪問しました。
今回の訪問でマウラーは、紛争によって生活が崩壊し支援を必要としている市民と会い、攻撃による被害が甚大な地域を訪れました。また、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相やルーベン・リブリン大統領、ツィッピー・リヴニ司法大臣、モーシェ・ヤアロン国防大臣、そしてパレスチナのマフムード・アッバース大統領やハマス政府高官と会談。パレスチナ赤新月社とマーゲン・ダビド公社の代表とも会談を行い、紛争下での緊急対応について話し合いました。
「この紛争では、多くの一般市民が犠牲となっています。容認することなど到底できません」とマウラーは話します。「文民の保護は優先されなければなりません。そのため、人道の名の下、殺害や破壊行為を止めるよう要請しました。紛争当事者には、国際人道法の下で果たすべき義務がありますが、今回、それらの義務と現場で起きている出来事との間に、深刻な矛盾があることをこの目で確認しました。私たちは、再びこうしたことが起きないよう、当事者と協力して取り組んでいきます」
ガザでは28日間の激しい戦闘で、1900人以上が命を落とし、約1万人が負傷しました。少なくとも40万人が家を追われ、破壊され住むことができなくなった家屋は9000軒以上に上ります。「この紛争がもたらした人的損害に、私たちは愕然としています」とマウラーは続けます。「私たちは紛争の影響を最も受けやすい状況にある人、つまり子どもや高齢者、病人、負傷者が、多くの犠牲を強いられたことに憤りを覚えます」
「国際人道法では、軍事的必要性と人道的配慮の均衡をとることが求められています」とマウラーは話します。「現場での破壊状況を目の当りにし、紛争の犠牲者に会ったことで、私はこの均衡性の原則が尊重されていないことを実感しました。紛争当事者は、国際人道法を遵守しなければならず、国際社会は、彼らが確実にそうするようあらゆる手段を講じなければなりません」
マウラーはまた、紛争で苦痛を強いられている人に対する迅速かつ将来的な人道ニーズについて、政治的指導者と率直な対話の場を設けることが必要だと話しました。「ICRCは、紛争の影響を受けている地域と連携して人道支援を行っていくことをここに再度表明します。また、人々の苦痛を和らげるために奮闘している国際赤十字・赤新月運動に感謝します。命を危険に晒しながら、救急医療を必要としている人を支援しているパレスチナ赤新月社のスタッフとボランティアに、私は最大の敬意を表します」
紛争当事者と国際社会は、人道支援が持続的に行える環境作りに協力して取り組まなければなりません。過去を繰り返してはなりません。ICRCは破壊された地域の復興支援に最大限の努力を尽くしていきます。しかし、その実現のためには、国際人道法に沿ったガザ地区の現状打開や、人道支援活動や従事者を保護するといった具体的な取組みが必要です。
■ ICRC総裁のペーター・マウラー記者会見(8月7日/エルサレム)