ご挨拶 – 駐日代表ヴィンセント・ニコ

2012.07.01
元駐日代表ヴィンセント・ニコ

元駐日代表ヴィンセント・ニコ ©ICRC

 

2012年7月1日に着任した、駐日新代表よりご挨拶申し上げます。

私はこれまで32年間、ICRC国際救援職員として、アジアとアフリカの20以上の紛争地や武力が行 使されている現場で人道支援活動に携わってきました。初任地は、カンボジアとの国境に位置するタイの小さな町でした。カンボジアの紛争から逃れてきた何万 もの人々が暮らす難民キャンプで、赤十字は食料配付や医療活動を行っており、私はそこでICRCを含む人道支援組織とカンボジア・タイ当局間の連絡調整を 担当していました。実はその時共に働いていたメンバーの中に、日本赤十字社から派遣されていた職員も多数いたのです。初任地と、おそらく最後となる現在の 赴任地において、魅力的な「日出ずる国」の人々と共に仕事ができるとは、何と嬉しいめぐり合わせでしょう。

32年間、世界の戦いの形が大きく変容する様子を目の当たりにしてきました。かつて紛争の背景には冷 戦がありましたが、近年は、民族・部族・宗教的要因、あるいは資源不足や犯罪行為などに起因した地域特有の争いが数多く見られます。こうした事態はニ ジェールやマリ、シリア、イエメン、南スーダンなど、様々な国・地域に及びました。しかしたとえ安全が確保されていない地域であっても、私たちは状況を迅 速に把握し、戦闘による被害を受けた人々のニーズに合わせて適切に活動を展開しなければなりません。そのためにも、現場の状況を一番理解している現地事務 所が担う役割はますます重要度を増しています。

経済・政治両面においてアジアの国々が台頭する中、日本にはけん引役として世界中から期待が寄せられ ています。その日本において、前任の長嶺は、駐日事務所をゼロから立ち上げ、方向性を決め、日本政府やその他多くの組織と友好な関係を築いてきました。こ の3年半の間に、邦人職員数、日本政府からの財政支援ともに3倍以上に増加しました。二国間及び多国間外交面においても、日本は大きな影響力を持つ国で す。私の使命は、この日本とICRCの関係をさらに深め、強化することです。これまで駐日事務所は地域代表部管轄下に置かれていましたが、2012年7月 より新たにジュネーブ直轄となり、英語表記もOfficeからMissionに変わりました。これも、日本に対するICRCの期待の表れと言えるでしょう。

世界の争いや紛争の被害を受ける人々を想い支援する気持ちが、日出ずる国でさらに広まり、悲惨な状況に苦しむ人々への希望の光となるよう、皆様のご支援を受けながら邁進していきたいと思います。