南スーダン:子どもたちが愛する家族を見つけられるよう「スナップ写真集」を活用

2015.03.05
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愛する人を見つけるため、レーアにて近隣諸国に逃れた南スーダンの子どもの写真に見入る人々 ©Pawel Krzysiek/ICRC

 

南スーダンでの執拗な戦闘を逃れて、近隣のエチオピアやウガンダ、スーダン、ケニアに避難した何十万人ものなかには、保護者のいない子どもたちがいます。赤十字国際委員会(ICRC)と地元の赤十字社がスナップ写真集を活用して、行方不明の肉親を探す大人や子どもを支援しています。今年に入ってから、120もの家族が再会を果たしました。

 

大人と保護者のいない子どもの写真500枚以上が掲載された写真集の第一版は、エチオピア・ギャンベラの難民キャンプで撮影され、1月から2月にかけて南スーダンやケニア、ウガンダのキャンプや他の場所で回覧されました。「この本は、空白期間を埋めるのに役立っています」とエチオピアで支援に従事するナタリー・クライン・ケリーは話します。「家族を探す当事者は、愛する人が生き残っていないのではないかと恐れていましたが、実はただ単に異なる方向に逃げたがためにはぐれただけ、という事例もあります」

 

和平交渉が続くなか、紛争は南スーダンのユニティ州や上ナイル州、ジョングレイ州のコミュニティにまで広がっています。何十万人もの人々が避難しました。ICRCは地元の赤十字社と協力して、電話や赤十字通信(短い手書きの個人的なメッセージ)、追跡リクエスト、写真を使った追跡調査を通して、離散家族の再会支援に取り組んでいます。

 

暴力が起きると、人々は安全を求めて散り散りに逃げます。もし幼い子どもが一人でいた場合、他の人に追って逃げますが、家族とは離ればなれになってしまいます。

 

ICRCは愛する人を探す人々の写真を撮影しています。そして、様々な場所で避難民に撮影した写真を見せています。写真集に収められた避難民は、氏名ではなく出身地ごとに区分されており、文字の読めない人でも簡単に近親者を見つけることが出来るようになっています。

 

「写真集は、人々が自然とページをめくりたくなるものなのです」とクライン・ケリーは話します。「私たちは冗談で、避難民のFacebookだね、と話しているくらいです」

 

エチオピアで撮影された写真

愛する人の居場所が分かっている避難民は、赤十字通信を送ったり、電話をかけることができます。エチオピアのギャンベラにいる避難民は、1000件近い赤十字通信を送り、1万件ほどの電話をかけました。そのうちの10%は、未成年者です。

 

18歳の女性は、写真で母親を見つけ、次のような赤十字通信を送りました。「写真集でお母さんをみつけたときの喜びはたとえようもありません。お母さんの孫は元気で、写真を見せてあげました」

 

「私たちがお母さんのところへ行くことはできないのです。この紙に書いてある私の電話番号をもっていてください」これは、ある女の子が母親に送った手紙の内容です。

 

ギャンベラに避難している南スーダン人のうち、電話を所持しているのは半数ほどです。私たちは、携帯電話と衛生電話を無償で提供し、彼らが家族と連絡を回復できるよう支援しています。

 

昨年ICRCの離散家族の再会・連絡回復支援を専門とする職員は、南スーダンで100名ほどの保護者のいない子どもを登録し、そのうち53人が家族との再会を果たしました。再会までには、数週間ないしは数カ月の忍耐と根気のいる作業を要し、南スーダン赤十字社やエチオピア赤十字社、ケニア赤十字社、ウガンダ赤十字社との協力が不可欠です。

 

ウガンダでも離散家族の連絡回復支援が行われており、保護者のいない256名の子どもが登録されました。そのうち89人が、現在も家族を探しています。ウガンダに避難している南スーダン人からは6000件以上の電話が寄せられ、2014年には、保護者のいない50名の子どもを登録し、ケニアのカクマ・キャンプにいる南スーダン人がかけた通話は3000件以上にのぼりました。2015年現在、スナップ写真集の利用によって再会を果たした離散家族は、ケニアだけで45家族になります。

 

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ユニティ州にて、最近の紛争が原因で離散した家族に赤十字通信を届け、家族間の通話を調整するICRC職員©Pawel Krzysiek/ICRC

 

子ども兵士の問題

武装グループに強制的に兵士として採用される子どもの報告が増えています。私たちは、紛争の全当事者に、国際人道法を遵守し、子どもを軍や武装グループに兵士として強制的に採用してはならないと訴え続けています。子どもが軍隊に採用されてしまった家族から連絡があった場合、ICRCは、当事者と直接かつ非公開に対話をします。

 

救援物資の配付

2013年12月に紛争がはじまって以来、私たちは南スーダン赤十字社と緊密連携して、食料や飲料水、種子、農機具を配付しました。また、ICRCの外科医療チームは、戦傷者の治療にあたっています。

 

以下は最新の活動報告です。

  • 94万人に1カ月分の食料を配付し、紛争の影響を最も受けている地域にいる15万人を定期的に支援
  • 50万人に種子や農機具、釣り用具を提供
  • 約30万人に飲料水を提供
  • 15カ所にて4000件以上の手術を実施(5つの外科チーム)
  • 6400人の被拘束者を訪問
  • 連絡回復を支援するために、1万4000件を超える通話を実施

 

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2008年より南スーダン赤十字社(元スーダン赤新月社)は、ICRCと国際赤十字・赤新月運動のパートナーとともに、EAT(緊急支援チーム)の設立、訓練、装備を支援しています ©Jacob Zocherman/ICRC

 

原文は本部サイト(英語)をご覧下さい。