広島と長崎の記憶が核兵器を廃絶する原動力に
国際赤十字・赤新月社連盟会長(IFRC)の近衞忠煇と赤十字国際委員会(ICRC)総裁のペーター・マウラーによる共同声明
ある衝撃的な現実があります。
広島と長崎に原爆が投下されて70年。日本赤十字社が両都市で運営する原爆病院は、今日も、放射線の後遺症を抱えた数千人の被爆者を治療し、患者の三分の二がガンによって命を落としています。
しかし、これほど計り知れない人道的な苦痛と破壊をもたらした二つの原爆も、核武装国が現在保有する大半の爆弾に比べれば、その威力は微々たるものです。
この事実を踏まえ、国際社会が核兵器の使用禁止と完全な廃絶に向けた道筋を付けるための努力を怠らずにさらなる力を注ぐよう議論すること。それ以上に切迫した課題などあるでしょうか?
とり返しがつかなくなる前に。あとで後悔しても遅いのです。
広島と長崎で、自分の大切な人が炎に包まれて命を落としたり、負傷して助けを求めてさまよう姿を目にしたことで、人々の心の中に恐怖心が植えつけられました。かつての恐怖心が、70周年を迎えるにあたり、大きなうねりとなっています。
白血病をはじめとした、ガンを患う被爆者が増えてきている現実や、被爆者を親にもつ子どもたちへの潜在的な遺伝的損傷の影響を憂う気持ちも感じ取れます。
広島と長崎が復興を遂げて生き返ったこと、そして二つの都市に暮らす人々が核兵器廃絶に向けて積極的に声を上げている現実に、人間の回復力の頼もしさを感じます。
核兵器不拡散条約(NPT)の再検討会議が今年5月に開催されましたが、核兵器廃絶の道を辿るための合意には至りませんでした。そしてそのわずか数か月後に、私たちは原爆投下から70年を迎えることとなりました。これほど心が痛むことはありません。しかし、国際赤十字・赤新月運動は、広島と長崎に暮らす被爆者だけでなく、既に亡くなられた何十万の方のためにも、決して諦めません。
私たちは、国際赤十字・赤新月運動の担い手として、核兵器が甚大な人道被害をもたらすという認識を広め、核兵器を二度と使用しないようすべての国家に訴えていきます。
また、各国政府にしても、法的拘束力を持つ国際的な合意のもと、核兵器の使用禁止と完全廃絶への同意に至るよう交渉を続けなくてはなりません。
原爆が投下されて70年。今こそ、核兵器の時代に終止符を打つべきです。広島と長崎に根強く影を落とす人道的な影響は、何が重要な問題なのか、そして問題解決にはどのような行動を取るべきかをもう一度私たちに考えるよう訴えています。核兵器をこの世界から完全に廃絶することは、人道の義務であり、人類が進む唯一無二の道です。
原文は本部サイト(英語)をご覧ください。