カンボジア:刑務所内の生活環境改善へ向けて

2016.06.30
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被拘束者の増加により、電力不足が懸念される材料となるカンボジアの刑務所 ©CC-BY-NC-ND / ICRC / T. Tuitiengsat

1993年以来、赤十字国際委員会(ICRC)は建物の修復や電気、水・衛生管理システムの整備といった面で、カンボジア刑務所省(GDP)を支援しています。すべては収容所内の生活環境を改善するためです。

 

何十年もの間、カンボジアのインフラは劣悪な状況にありました。刑務所も例外ではありません。多くは換気扇がなく、水道も電気も通っていませんでした。「刑務所の制度を支援していく必要があります」とGDPの副部長を務めるフイ・ホウは話します。

 

プノンペンから13km離れた場所にある、プレイソウ刑務所の中の第一矯正センター。Correction Centre 1はカンボジアで最も大きな刑務所だ ©CC-BY-NC-ND / ICRC / T. Tuitiengsat

プノンペンから13km離れた場所にある、プレイソウ刑務所の中の第一矯正センター。ここはカンボジアで最も大きな刑務所だ ©CC-BY-NC-ND / ICRC / T. Tuitiengsat

 

近年私たちは、緊急支援から予防へと、取組みのやり方を変えてきました。具体的には、刑務所内の設備を重視し、刑務所の職員に対し、技術訓練を提供するというものです。こうすることで、GDP自体が刑務所を改善し維持できるようになることを目指しています。これまでにICRCは、厨房設備や、水、衛生面での基本的な維持管理に関する訓練を2回開催しています。

 

カンボジアのほとんどの刑務所には電力が通っていますが、電気設備の維持・管理面で課題が山積しています。「電力供給がない刑務所では、運転コストが高い発電機に頼っているのです」とICRCのエンジニアであるフィリパ・アナコレタ・コレイアは話します。トボンクムン刑務所で働くコン・サマットは、職場では停電が頻発する、と述べています。「今までは電気設備のことをほとんど知らないまま修理をしてきました」と続けるサマット。

 

今年の5月と6月、ICRCとGDPは共同で、2週間にわたる電気設備に関するワークショップを開催しました。カンボジア全土の27の刑務所から、GDPの3人のエンジニアを含む30人が参加しました。

 

GDPからのエンジニアと刑務所職員スタッフが、電気設備に関する技術を磨くため、講習会ワークショップに参加 ©CC-BY-NC-ND / ICRC / T. Tuitiengsat

GDPからのエンジニアと刑務所職員スタッフが、電気設備に関する技術を磨くため、講習会ワークショップに参加 ©CC-BY-NC-ND / ICRC / T. Tuitiengsat

 

講習会では、参加者自らが電気設備の修理や改善、維持ができるよう技術を磨くことに焦点が当てられました。同様に、ワークショップに参加した職員が、被拘束者に学んだことを伝え、被拘束者も軽微な修理ができるよう支援していきます。職員の一人ウンピセットは、講習会は非常に有益だったと感じており、「被拘束者が電気設備の仕事ができるよう、今度は私たちが教える番です。彼らが釈放された後は、その新しいスキルを使って生きていくことができます」と話します。

 

訓練は職員と被収容者にとって大変有益なものでしたが、支援は今後も必要です。電気関係の講師を務めたパーク・ブッティーは、「安全性に関しては、まだ理解が深まっていないと思います」と話しました。

 

フィリパ・アナコレタ・コレイアは、「私たちは能力育成戦略の一環として、このようなタイプの技術訓練のワークショップを続けていきたいと考えています」と語ります。次の訓練の計画はGDPと議論し、決められます。

 

職員から訓練を受けた被拘束者が刑務所内に新しい電気システムを設置する様子。刑務所スタッフから訓練を受けた ©CC-BY-NC-ND / ICRC / T. Tuitiengsat

職員から訓練を受けた被拘束者が刑務所内に新しい電気システムを設置する様子。刑務所スタッフから訓練を受けた ©CC-BY-NC-ND / ICRC / T. Tuitiengsat

 

ICRCはGDPのエンジニアにも訓練や支援を提供しています。「このプロジェクトは現在も継続中です」と話すフィリパ・アナコレタ・コレイア。「刑務所のニーズを見極める現地調査をし、プロジェクト設計では緊密に連携をとっています」とコレイアは続けます。

 

プロジェクの設計は、ICRCの支援の下、GDPのエンジニアが主導します。「今後のプロジェクトの持続性を考えると、GDPが主導することが極めて重要なのです」とICRCのノップ・ソティーは語ります。「GDPのエンジニアが自立できるまで支援を続けたいきたいです」とソティーは締めくくりました。

 

原文は、本部サイト(英語)でご覧ください。