イエメン:新たな生活再建に向けた取り組み
イエメン北部サアダの難民キャンプには、戦闘により家を追われ何年もキャンプで過ごしている人々がいます。ICRCは、戦闘状況の改善に伴いキャンプから家に戻る人々を対象に、彼らが定期的に収入を得て生活を再建できるよう支援を行っています。ここではその内の2人、Ali MohammedとBaqla’a Hadiの話をご紹介します。
Ali Mohammedの場合
45歳のAli Mohammedは7人の子を持つ父親です。同じ村に住んでいた他の一家の担い手同様、戦闘により子供を連れて家を離れることを余儀なくされました。Mohammedはこう話します。「家を追われるまでは普通の生活を送っていました。私は故郷Ghammerで農業を営んでおり、借農地で働きながら家畜を育て、生計を立てていました。決して裕福ではありませんでしたが生活には満足していましたし、幸せでした。私たち一家は収入を増やすために町を離れたのではありません。命を守るために、避難したのです」
爆撃が段々と家に近づいてくるのを見て、Mohammed一家はサアダに避難しました。Mohammedは、「サアダに着いた後、ICRCが難民キャンプを設置、支援していると聞きElhsaのキャンプを目指しました。登録を済ませると、ICRCが避難キットやマットレス、毛布、防水シート、1ヶ月分の食料を配付してくれました。大変なときに助けてくれたICRCに感謝します」と語りました。
他の多くの人々同様、Mohammed一家は4年間をキャンプで過ごしました。その後、武装勢力Houthisと政府間の停戦を受け、Mohammedは村へ戻り生活を再建することを決心しました。ICRCはMohammedが生計を立てられるよう、物資運搬用の三輪自動車を提供しました。また、一家が新たな収入源を見つけるまで生活を保てるよう、4か月分の食料と避難キット、基本的な家庭用品を提供しました。
Baqla’a Hadiの場合
Baqla’a Hadiは6人の子を持つ母親です。Hadi一家がHydan地区からサアダのキャンプへ避難してから6年半が経ちました。Hadiは戦闘中の苦難、そして子供たちを食べさせていくことや周りが貧困に苦しむ中テントを設置する問題など、避難後も続いた苦しみを語りました。また、家を失ったこと、年老いた両親を置いて行かなければならなかったことへの悲しみや、大家族の問題、金銭面での苦労なども語りました。
「私は20年前に結婚しました」とHadiは話しました。「6人の子供を育てるために働き幸せな日々を送っていましたが、夫が糖尿病を患ってしまいました。しかし、事態が本当に悪化したのは戦闘により家を出なければならなくなったときです。他の村人たちが負傷し命を落とす中、子供と自分たちの命を守ることだけで頭がいっぱいでした。どこへ行くかも、戻って来られるかも分からないまま、私たちはすべてを置いて家を離れました」。こうしてHadi一家はサアダへ向かう大勢の人々の群に合流しました。
何ヶ月も放浪した後、Hadi一家はサアダの難民キャンプに長期間滞在できる場所を見つけました。しかし、一家の苦しみはその後も続きました。Hadiはこう話します。「悲しいことに夫は新しい環境に適応することが出来ず、糖尿病に加え精神病にも悩まされるようになりました。そのため私たちは離れ離れに暮らさざるをえなくなりました」
キャンプでの厳しい生活
Hadi一家は1,400人の避難者とともに6年間をキャンプで過ごしました。このキャンプでICRCはテントと給水タンクを設置し、毎月食料を配付していましたが、Hadiは「支援がなくなるのではないかという不安を常に抱き、かつ女性に必要なプライバシーが守られないテントの中で暮らすのは大変でした」と当時の様子を振り返ります。
村へ帰る人々
状況が落ち着き、Hadiは村に戻ることを決めました。しかし家は大きな被害を受けていました。ICRCはHadiに家を修理するための資材と、小さな雑貨店を開くために必要な物資を提供しました。「ICRCの支援のおかげでキャンプでの暗い日々から抜け出すことができました。雑貨店の経営で完全に生活が落ち着くわけではありませんが、それでもしばらくの間は唯一の収入源となります。非常に感謝しています」とHadiは話しました。
2012年5月以降、ICRCはサアダにおいてキャンプから帰る905世帯の収入向上支援を行っています。
・ 20%以上の家庭では、女性が家長として働いており、そのような女性の多くは未亡人です。
・ 収入向上プロジェクトでは主に畜産、雑貨店、野菜店を収入源として生活を再建するための支援を行っています。
詳細な記事はICRCジュネーブ本部(英語)で確認できます。