ソマリア:支援活動の一方で続く苦しみ
2012年上半期、ソマリアでは深刻な食料不足と紛争の影響により人々が苦しい生活を強いられる状況が続きました。困難な状況の中、ICRCは年明けから同国内の140万人に対し食料を配布してきました。
干ばつ被害が最も大きかった昨年と比較すると、食料不足は徐々に改善されつつあります。しかし、深刻な干ばつや雨不足など農作物の生産を妨げる要因がなくならない限り、人々は栄養不足に苦しみ、生き残るために葛藤し続けなければなりません。
ICRCソマリア代表部首席代表のPatrick Vialは、「悲しいことに、ソマリアの大半の人々は今年も苦しい生活を強いられています。彼らは紛争と厳しい天候という二重の困難に耐え続けています」と話します。
ICRCは21年前からソマリアで人道支援活動を行っています。「ICRCが支援するモガディシュのKeysaney病院は20年以上に渡り緊急医療を提供しています。これは、支援のニーズの高さ、そしてそれに応えようとする私たちの強い意志を表しています」とVialは説明しました。続けてVialは、「長年に渡り医療サービスを市民に提供し多くの命を救ってきたKeysaney病院のすべてのスタッフを称賛します」と話しました。
国内の治安状況は特に南部と中部で続く紛争により悪化しています。この紛争では、暫定連邦政府と国外の支持者がソマリア南部で活動するイスラム勢力Al Shabaabからの領土獲得を求めて戦闘を続けています。広い範囲で起きている部族間闘争や、北部の行政区SoolとSanaagをめぐるSomalilandとPuntland間の論争に起因した不安定な状況は、死傷者や避難者、その他の人道的問題を引き起こしました。
緊急支援から自立支援へ
過去12ヶ月間でICRCが行ったソマリアでの主な活動は、干ばつによる深刻な食料不足と、戦闘で負傷した人々に対する緊急支援でした。状況は常に困難ですが、ICRCは緊急ニーズにできる限り適切かつ包括的に対応するため最善を尽くしています。Vialは「私たちは緊急支援活動を行う一方で、ソマリアの人々が外部の助けに頼らず自立できるよう、種や農業用具を提供するなどの中長期的支援も行っています。また、ソマリア赤新月社との協力の下、基本的な医療へのアクセスが確保されるよう活動しています」と話し、「緊急の食料支援を終えたので、今後はさらにこうした人々の自立に向けた支援に焦点を当てていきたいと思います」と述べました。
ICRCによる食料不足への対応
干ばつと紛争の影響による食料不足に対し2011年から行っていた緊急食料支援は、イスラムの断食が終わる直前に完了しました。この緊急支援でICRCは、避難者、孤児、配偶者を亡くした人、高齢者を含む約42万人の人々に米、豆、油、トウモロコシ・大豆混合食品を配布しました。また、その他の南部および中部の地域とPuntlandにおいて、年明け以降72万人の人々に同様の支援を行ってきました。2011年7月から2012年8月中旬までの間、計250万の人々に対し緊急食料支援を行いました。
ソマリアで経済自立支援事業を担当するICRCのMohamed Sheikhは次のように話します。「幸いなことに、食糧危機がピークに達した昨年7月に比べ、ソマリアの人々の栄養摂取状況は改善されました。しかし、人道団体が緊急支援に奔走する一方で、依然として多くの人々が厳しい食料不足に苦しんでいます」
Sheikhは、「最も支援を必要としているのは、主に避難者や農業従事者、家畜を所有する人々、社会的に弱い立場にある人々など、止まない紛争や自然災害の被害を受けている人々です」と話します。また、「ICRCはこれらの人々の状況に合わせた様々な支援を行っています。状況が深刻な場合は救援活動を行う一方で、農業用具や種の配布、農園のインフラ改善、ミクロ経済による施策の実施など、人々の生活再建に向けた支援を行っています」と説明しました。
今年は食料の配布に加え、種や農業用具の配布を4万2,000人に行ってきました。さらに、用水路の修繕により3万3,000人の農業従事者の生産力が改善されました。
20年医療を提供してきたKeysaney病院
モガディシュにおいてSiad Barre政権が崩壊する直前の激しい戦闘が繰り広げられていた中、Keysaney病院は1992年2月2日に初めての診療を行いました。元は刑務所として建てられた施設をICRCが病院に改装、戦闘で負傷した人々への治療や緊急医療サービスを提供してきました。
2004年から同病院の院長を務めるYussuf Mohamed Hassanは、同病院が設立20周年を迎えた際、次のように述べました。「20年に渡る武力紛争は人々と国全体に大きな被害をもたらし、長期化する人道危機を招きました。政党間の対立により、病院などの基本的なインフラが国中で破壊されました。そのような状況下でKeysaney病院は20年前の設立以来、戦闘によって負傷した3万人を含む21万6,000人の人々を治療してきました。これは私たちが公平・中立の理念のもと医療を提供し続けてきたことの表れです」
今年1月から8月までにICRCが行ってきた活動は下記の通りです。
・ 約70万人の人々がプライマリー・ヘルス・ケアにアクセスできるよう、ソマリア赤新月社を支援。30万人以上の患者を診療、4万8,000件の予防注射を実施。さらに43カ所のプライマリー・ヘルス・ケア施設および母子クリニックにおいて栄養失調にかかっている4万5,000人を治療
・ モガディシュのMedina病院とKeysaney病院を支援、心的外傷に苦しむ6,800人の患者を治療
・ 戦闘負傷者の治療を行う3カ所の医療施設に対し、延べ11回に渡り状況に合わせた緊急医療物資を配布
・ Cayn、Sool 、Sanaagで勃発した紛争によりSomaliland南部のBuuhoodleに避難した2万2,300人以上の人々に対し、緊急支援として水を供給
・ ソマリア中南部およびPuntland一部において堀削孔、手堀り井戸、集水施設を改善、5万1,000人分の安全な水を確保
・ モガディシュで拘束されていた1,000人の人々にマットレスや毛布、サンダル、衛生用品を配布、生活環境を改善
・ ソマリア赤新月社との協力のもと、紛争により離れ離れになった家族に手紙を届けた。256世帯の連絡が可能になった
詳細な記事はICRCジュネーブ本部(英語)で確認できます