ミリタリーFPS「ARMA3」とのコラボ:ICRCがなぜビデオゲーム?

お知らせ
2018.03.13

赤十字国際委員会(ICRC)は2012年以来、戦時の決まりごとである国際人道法(IHL)を普及する新たな手法を模索してきました。そこで着手されたのが、ゲーム開発です。受賞歴もあるビデオゲーム「ARMA」シリーズに、戦時にやっていいこと、やってはいけないことなどのIHL要素を入れようと、ゲーム開発会社のボヘミア・インタラクティブと緊密に連携しながら制作に時間を費やしました。プレーヤーの物理的視点で進む「ファースト・パーソン シューティングゲーム」であるARMA シリーズを通して、これまで3万2千人以上が現実的な戦争シナリオを体験しています。ICRCは、人気ゲーム「ARMA 3」の付属となる「ARMA 3 Laws of War DLC」に関与。このゲームでは架空の人道支援団体に焦点をあてていて、プレイしながら戦争のルールを自然と意識する作りになっています。

 

当コラムでは、ICRCバーチャルリアリティー(VR)ユニットを統括するクリスチャン・ルーファーが、ビデオゲームにおけるボヘミア・インタラクティブとICRCの連携について語ります。

 

Q:ICRCは暴力的なビデオゲーム、特に戦争ゲームをどのように見ていますか?

私たちはビデオゲームの中の暴力について議論する立場ではありません。現実の世界と同様に、なぜ人々が争うかについて私たちはコメントしません。その代わりに、武力紛争下でのICRCの確固たる中立性と公平性については主張しますし、戦闘員たちにIHLに基づいた責任を再度自覚してもらうことに焦点を当てています。私たちの目的は、ビデオゲームの面白さに水を差すことではなく、プレーヤーたちに、戦争下に存在する幾重もの複雑な層を見せて、IHLを守る上での実際の兵士たちの役割と責任についてさらに知ってもらうことです。

 

ここでボヘミア・インタラクティブと共同制作が必要になるのです。制作チームは、武力紛争の現実的な描写をプレーヤーに提供することに常に関心を寄せています。

 

Q:ボヘミア・インタラクティブ(BI)との協力関係はどのように始まりましたか?コラボする上で何かワクワク感はありましたか?

協力関係は2012年に始まりました。私たちからBIのチームに連絡をとりました。というのは、ARMA 2 の中に既にIHLのキーワードがいくつか含まれていることに気が付いたからです。例えばARMA 2では、何かしらの報いなくして一般市民を撃つことはできません。

 

プレーヤーであり元陸軍士官でもある私個人としては、IHLの重要性を把握する中で、より現実を反映したゲーム開発をICRCがどのようにサポートできるのか、ということに強い関心を覚えました。BIはこの議論に対して非常にオープンで、実際、新たなDLCについては彼らの方からアプローチしてきてくれました。とりわけリアルな体験をゲームのプレーヤーに提供したいと熱望するゲーム開発会社にとって、IHLの要素を入れることはまさに理に適っていたのだと私は思います。

 

Q:ICRCはどのようにしてARMA 3 Laws of War DLCの開発に携わったのですか?

DLCへのサポートは非常に技術的なものでした。武力紛争のルールについて専門家が知識を提供するだけでなく、対人地雷や対戦車地雷、不発弾、クラスター弾などの影響についても相談を受けました。基本的には、ゲームの現実味を高め、IHLに忠実なものとするためにできることはやりました。

 

Q:なぜプレーヤーにIHLを伝えようと思ったのですか?

ICRCがプレーヤーに主眼を置くことを真面目に考えている理由は、ビデオゲームの世界が進化してきているからです。いまやゲームプレーヤは、世界の総人口のおよそ4分の1にあたる18億人に達しています。全てのプレーヤーが十代の少年という固定観念に反して、その平均年齢は35歳となっています。驚く方もいるかもしれませんが、そのうち男性は56%にすぎません。ビデオゲームが娯楽の主流になるにつれて、プレーヤーの中には陸軍士官、会社の社長、弁護士もいます。何百万もの人々にIHLを広めるユニークな機会と捉えて、ICRCもまた進化し、この潮流を活用する必要があるのです。

 

Q:ARMA 3をはじめとしたゲームが、ICRCのメッセージの拡散にどこまで貢献できるでしょうか?

ビデオゲームを通じて人道的なメッセージを広めることは、新しい概念ではありません。事実、1996年の時点でIHLとビデオゲームをつなげる提案を職員から受け取っています。当時はゲームに興じることは真面目なこととして受け止められておらず、そのアイディアが取り上げられることはありませんでした。しかし状況は変わりました。

 

私たちはARMA 3のような戦争ゲームを、退屈でつまらないIHLの技能講習にしたくはありません。ゲームの面白さを損なうことなく、戦時の複雑なルールをいかに盛り込めるか。そのやり方をゲーム会社が考える上で、お手伝いがしたいのです。目的は、よりリアルに現実味を高めることと、兵士たちの現場でのほんの一瞬の決断が、悲惨な結末をもたらしかねない、ということを体験してもらうことです。その過程で、プレーヤーたちにIHLとICRCの仕事について理解してもらえるのであれば、それは大きな付加価値となります。

 

Q:ルーファーさん自身、ARMA 3をプレイするうえでどれだけ時間を費やしましたか?

仕事の合間と個人アカウントで、計2223時間以上やっていますよ。

 

 

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