南スーダン:お金ではなく、牛が富の象徴
家畜を育て、その健康を保つのは南スーダンにおいてとても重要なことです。多くの人たちが生計を牛、ヒツジ、ヤギの畜産に頼っているからです。
赤十字国際委員会(ICRC)は、動物を病気から守り、武力紛争の影響を受けた地域の回復力強化を支援しています。
家畜の健康を維持することは、その地域自体の維持につながります。「紛争の力学に満ちた国では、紛争の影響を受けない予防策として、家畜と一緒に移動します。作物の場合は、そうはいきません」とICRCの畜産の専門家アダ・ジェイコブセンは言います。かつてジョングレイ州だったマウラ丘で行われたICRCによる牛への予防接種キャンペーン中、地元の人たちは自分たちの牛を予防接種場所に集めます ©Etienne Gaboreau/ICRC
「南スーダンでは、家畜を所有していないと、人として認められません。あたかも、南スーダン人ではないかのような感じです」と話すのはICRCの獣医、ジョセフ・トンガン・フィリモン。例えば、ある家畜の群れが病気になり、その地域の健康と資産を危機に陥らせるようになった時、健康な家畜は仲間内の緊張感を緩和することができます ©Etienne Gaboreau/ICRC
ICRCは南スーダンの各地域と協働しています。その一つが遊牧民のファラタ族です。「私たちは、美しさのために、このように装います。これが私たちの文化です」とファラタ族のおばあちゃんであるカディジャさんは言います。ハリマとイエダは、牛、ヒツジ、ヤギを連れて家族と一緒に旅をします ©Mari Aftret Mortvedt/ICRC
畜産のプログラムにおいて一番大切なことは、ワクチンを保冷できるかです。電力へのアクセスが限られているため、課題となります。ソーラーパネルや発電機を使って、保冷性を確保します。そうすれば、ワクチンを4-5日間、クーラーボックスの中で保存することができます ©Mari Aftret Mortvedt/ICRC
2018年2月と3月に、南スーダンの上ナイル州のウディア近くで、5万頭の牛と1万頭のヒツジとヤギにワクチン接種を行いました。畜産支援プログラムの一環です。ICRCのチームは、人里離れた牧場に向かうために朝早く出発します ©Mari Aftret Mortvedt/ICRC
「異なる全ての薬について学びました。ワクチン接種や薬を処方した時は、牛のオーナーから少額のお金をもらいます。ICRCの支援については100%満足しています。なぜなら、ワクチン接種を始めてから、牛たちは健康になりました」とイッサ・ウスマンさん(写真中央)は話します ©Mari Aftret Mortvedt/ICRC
ICRCによる家畜への予防接種と治療は、主に三つの柱に基づいて行われます。一つめは、収入源としてです。牛は安定した金融資産で、「動く銀行口座」と考えられています。多くの人たちは牛を飼い、学費や食費などの必要な支払いがある時に売ります。二つめは、社会生活に関連します。南スーダンにおいて、結婚するということは10から100頭の牛の持参金を意味します。最後の柱は食料生産としてです。多くの子どもたちはヤギの乳を飲みます ©Mari Aftret Mortvedt/ICRC
「私たちはラクダを手にいれるために、誰かを送る予定です。そうすれば、この箱をキャンプに持ち帰ることができます」とイッサさんは説明します。彼は地域の「アニマル・ヘルス・ワーカー」の一人で、病気の動物を治療するほか、予防接種キャンペーンを行います。彼らは、知識習得や技術向上のためにICRCの獣医による補習研修を受けます ©Mari Aftret Mortvedt/ICRC
数十年におよぶ紛争は、南スーダンの獣医サービスを弱体化させ続けています。これにより、感染症、寄生虫、けが、そして家畜の生産と繁殖を妨げる健康問題にさらされる危険性が高まっています。過去三十年にわたり、ICRCはこうしたリスクを軽減するために畜産プロジェクトを実施しています ©Etienne Gaboreau/ICRC
ICRCは同国の関係省庁とともに、病気の動物を治療したり、予防接種キャンペーンをしたりする「コミュニティ・アニマル・ヘルスワーカー(CAHWs)」への研修を提供しています。いくつかの場所では、家畜はワクチン接種のために特別な道を歩かせられます ©Etienne Gaboreau/ICRC
「私たちは若い時からいろいろな病気を学んできました。なぜなら、常に動物たちと移動しているからです。ICRCがやって来たとき、自分たちが知っている病気への治療法を教えてくれたので、とても興味深かったです。動物が健康だと、より多くの乳が絞れます」とオスマン・ベロさんは話します ©Mari Aftret Mortvedt/ICRC
ベッドを整えるハワ・アフマドさん。「予防接種は大事です。動物たちが肥えていくのがわかります。予防接種をした動物は一目でわかります。肌のつやがいい。動物を薬で治療してもらえるのはいいことです」と話します。3人がこのテントの中で眠ります ©Mari Aftret Mortvedt/ICRC