コロナ感染初確認から一年:アフリカで公平なワクチン接種を

プレスリリース
2021.03.03
ICRCstaff

©ICRC

中央アフリカ共和国首都バンギ(ICRC)―アフリカで一人目の新型コロナウイルス感染者が確認されてから、先月で一年。中央アフリカ共和国を訪れた赤十字国際委員会(ICRC)のペーターマウラー総裁が声明を発表しました。

この一年は、アフリカ全土にとって非常に大変な一年でした。直接的・間接的、また社会的・経済的に感染拡大の影響を受けた人々は何百万にも上り、医療体制が極めて脆弱であることが明らかになりました。身近な人が感染、死亡し、子どもたちの授業時間が減り、また何百万もの人々の生活が経済の悪化やロックダウンによってこれまで以上に追い詰められました。

ただでさえ、開発問題や貧困、戦争、暴力、さらには気候変動の被害の増大に見舞われていた人々に、コロナ禍が追い打ちをかけたのです。そして今、第二波と変異種の出現によって、世界がどれほど危うい状況にあるかが白日の下にさらされています。有効なワクチンが次々と承認され接種が始まる中で希望は生まれていますが、誰もがワクチンの恩恵を受けることができなければウイルスを抑制することなどできないでしょう。

アフリカの人々が必要なワクチンを調達できるよう状況を大きく改善することが、道義上求められています。その一方で、接種事業の展開にあたって、コロナ以外の重要な健康問題への対応がないがしろにされることがあってはなりません。

他の病気を予防するためのワクチン接種も継続して行う必要があります。新型コロナウイルス変異株「501Y.V2」が瞬く間に広がったことで、最近よく言われている「全ての人が安全でなければ、誰一人として安全ではない」ことが浮き彫りになりました。このように、世界規模というパンデミックの性質を考えると、今回ワクチン接種を公平に行うことは、今後のワクチン全般の接種事業の試金石となるでしょう。

国際社会がアフリカを見過ごしてはならない主な理由は、3つあります。一つ目は、それが人道上の義務であること。地球上のすべての生命が尊いのです。次に、疫学的な見地からです。予防接種を受けていない人がいる地域からウイルスが複製され、ワクチンが効かない変異株が出現する可能性があります。最後に、経済的な理由です。コロナ禍は、地域や国、ひいては世界の経済に打撃を与え続けるでしょう。弱い立場に置かれた世界中の人々に予防接種を行うことは、経済的にも理にかなっているのです。

十分な量のワクチンを入手できた国の政府は、避難民や移民、難民、被拘束者、反政府組織の支配地域など行政の手の届かない地域で暮らす人々にも優先的に接種を行うことが重要です。たとえば中央アフリカ共和国は、国土の約7割が政府の管轄下にありません。ICRCは、赤十字社や赤新月社をはじめとしたパートナーと協力して、各国政府によるワクチン接種事業の支援を行う準備ができています。

もちろん、輸送やワクチンの品質を保持するための低温物流、いわゆるコールドチェーンの問題、および研修を受けた医療従事者が不足していることを考慮すると、アフリカのすべての地域コミュニティーにワクチン接種を行き渡らせるのは、間違いなく非常に困難でしょう。そうしたことからしても、コロナ禍が地域コミュニティーで暮らす人々の健康をいっそう脅かしていることを認識しなければなりません。この機に私たちは、誰一人取り残すことなしに、人々が抱える多様な健康問題に包括的に対応し、取り組むべきなのです。各コミュニティーの話に耳を傾け、そこで暮らす人々にとっての優先事項や人命に関わるニーズに対応しなければ、反発が生じ、コロナ禍で生まれた希望は失われることでしょう。

中央アフリカ共和国の最新状況

中央アフリカ共和国では今も各地で突発的な戦闘が続いています。最近では2月15日から16日にかけて、同国のほぼ中央にある都市バンバリで、政府軍と武装勢力の武力衝突が発生しました。ICRCは民間人を含む負傷者25人を病院に搬送し、現地赤十字社のボランティアが遺体の回収にあたりました。状況は落ち着いたものの、ICRCは爆発性戦争残存物の探知や処理作業を続けていて、安心して暮らせる状況ではありません。ICRCは、民間人や負傷者、被拘束者を含む非戦闘員の保護および民用物の尊重を求めると同時に、遺体の安全な回収と尊厳ある埋葬を行えるよう、すべての紛争当事者に改めて呼びかけています。