6月4日公開!「戦争と生きる力プログラム」:ショートショート フィルムフェスティバル & アジア2022

イベント
2022.04.28

米国アカデミー賞が公認する国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア」(SSFF & ASIA)で毎年上映される「戦争と生きる力プログラムsupported by 赤十字」。今年は、6月4日(土)からスタートします。

実話ベースのドラマやドキュメンタリーに加えて、アニメーションやコメディータッチの作品など、世界各地から届いた選りすぐりの短編映画13作品に、ICRC制作の2作品を合わせて、計15作品を上映します。「戦争と生きる力プログラムsupported by 赤十字」は昨年同様、コロナ禍を受けてSSFF&ASIAのオンライン会場で、6月30日(木)まで公開されます。

【オンライン上映期間】2022年6月4日(土)~30日(木)
※視聴リンク:https://shortshorts.org/2022/program/program_cat/wp/

今年もSNSでICRC駐日代表部のスタッフによるレビューをご紹介します。是非チェックしてみてください!

※ICRC駐日代表部ツイッター:https://twitter.com/ICRC_jp
※ICRC駐日代表部フェイスブック:https://www.facebook.com/ICRC.jp/

鑑賞された後の皆さんのご意見、ご感想もお待ちしています。奮って上記SNSのコメント欄にメッセージをお寄せください。

作品紹介

【白いブランケット】

フィンランド/ドラマ
 
10歳のマルヤは、幼い弟のミルクを買いに街に出る。その道中にはとんでもない危険が潜んでいた・・・。

ICRC駐日代表部スタッフ レビュー

真っ白な世界にある日常、そしてその日常が急に壊れるとき。人の優しさと、その優しさが無くなってしまったかもしれないとき。短い時間の中に様々な感情が込められていると同時に、色々と想像できる映画です。そして、「ブランケット」というタイトルが深い意味を持っていることも、わかると思います。


【ステレオタイプ】


アメリカ/韓国/アニメーション
 
戦争は落ち着いても、闘いは激しさを増すばかり。

ICRC駐日代表部スタッフ レビュー

軍事境界線という存在があることで保たれる均衡や平和がある一方で、軍事境界線があることで生まれる衝突がある。

貴方と私の間の境界線を決めるものは一体何だろうか。

自然界に生息する生き物には境界線という概念は存在せず、移動の自由を制限されることなく生命の営みを続けている。人間がこの原始的な自然の摂理から学ぶことはあるのだろうか。大脳皮質の進化によって言語を使用し、お互いの思考や意思と感情を伝え、文字と記号によって過去・現在・未来と交流し、他の哺乳動物が到底及びもつかない精神的や意識的な力を持っている。それらをどう使い現実を創造してゆくかは私達次第だと考えさせられる作品だった。


【アイシャ】


ドイツ/ドラマ
 
全身をベールで覆った勝気な少女アイシャ。シリア北西部アフリンの裏庭で、妹とともに信仰心を試される。秘密を抱えながら自らの素性に悩むアイシャは、ついに意を決した。

ICRC駐日代表部スタッフ レビュー

心を揺さぶられる作品!戦争が延々と続くなかで、アイシャの人生は180度変わらざるを得なかった。映画の中のアイシャもそうであるように、実際シリアの子どもたちの多くも未来に希望を抱けないでいる。それでも夢をあきらめずに力強く生き抜いてほしい。


【渡り熊】


フランス/アニメーション
 
地球温暖化で故郷を追われた2頭の北極グマ。新たな住処を探し求め、やがてヒグマの縄張りに辿り着く。

ICRC駐日代表部スタッフ レビュー

渡り鳥ならぬ、渡り熊。先月5月、世界で難民や避難民となった人の数が全体で初めて1億人を超えたと発表されました。気候変動により避難を強いられる人々も多くいる中、肌の色、生活様式、文化も異なる新しい場所で受け入れられるための困難さ、そして居場所を見つけることが出来なければ、向かう先はどこなのか、、、可愛いアニメーションではありますが、実際に起きていることを深く考えさせらえる映画でした。困難の中でも、辿り着いた先に希望を見出そうとする姿、親子の絆と愛情がとても印象的でした。


【幕引き】


アメリカ/ホラー
 
一本の木が見届けた、5分の物語。

ICRC駐日代表部スタッフ レビュー

この作品には、ショートフィルムの真髄が詰まっています。5分という短い時間の中で、目や耳から飛び込んでくる限られた情報を手繰って、皆さんがどのような感情でエンディングを迎えるのか、とても興味があります。

初見では、「これから何が始まるんだろう?」と、はてなだらけで、必死に映像の中の主人公を追っている自分がいました。そして、ラストシーン、テロップと続き、作品のメッセージを最後にガツンと受け取ることになります。

是非皆さんには、この作品を二度見ていただきたいです。すべての結果が分かったうえで見直すと、主人公の一つ一つのしぐさにこちらの感情が揺さぶられます。


【ヤッラー、さぁいくぞ!】


フランス/アニメーション
 
1982年のベイルート。ニコラスは、延々と続く内戦で破壊された故郷を離れようと決意する。そんな彼の前に現れたのは、プールに行くと言い張る無謀な若者ナジだった。

ICRC駐日代表部スタッフ レビュー

ベイルートでの紛争が続く最中、二人の主人公たちが目にするのは、変わり果てた故郷の姿。しかし、この作品が伝えてくれている重要なメッセージは「夢」と「希望」を捨てず、前進すること(yallah)の大切さではないかと感じました。登場人物の何気ないやりとりの中に、「夢を失わないこと」、「諦めず希望を持ち続けること」を伝え合う、そんな印象を抱きました。

今、世界には多くの問題が山積しています。そんな世界に生きる私たちに、登場人物たちは行動を持って、私たち自身の生き方を提示してくれているのかもしれません。


【ナーラニ村での出来事】

ドイツ/ドラマ
 
開発援助に携わるカリーナ・ノワックは、ドイツ軍兵士とともに、武装グループの罠にかかる。彼女と若い兵士ルカだけが生き残り、二人はそれぞれの目的に向かって戦うことに。

ICRC駐日代表部スタッフ レビュー

登場人物たちは、それぞれが思い描く目的を達成するべく信念をもって行動するが、自身の大義のために下した判断がもたらす道徳心の揺れが見事に描写されている。20分弱という短編映画でありながら、正しさや誤りという次元ではなく、人道的かいなかということが重要であり、あらゆる選択において人道的視座を持つことを忘れてはならないことを想起させ、かなり重厚感があるように感じた。紛争地域における、敵、味方という単純な二項対立構造の中では捉えきれない、人道的な判断を下すことの難しさと大切さを教えてくれるため、鑑賞後もヒューマニティとは何か、ということを考え続けている。


【少女の腕の中で】


ロシア/ドラマ
 
ナチスによって焼き払われた村から逃げ出した少女は、旅回りのサーカス団と出会う。一行はまもなくナチスに遭遇し、少女のジャグリングに運命が委ねられる。

ICRC駐日代表部スタッフ レビュー

私たちにとって“家族”とはどういう存在なのか?そして、それを形成する要因は一体何なのか。鑑賞後、人と人との心の繋がり、心の機微について改めて考えた作品です。本作には、ほとんど会話のシーンはありませんが、それ以上に俳優の演技、音楽、カメラワークを通して訴えかけてくるものがあります。海外で起きている戦争や紛争の影響を受ける人々に想いを馳せる手助けになれば嬉しいです。


【かけがえのないモノたち】


ドイツ/フランス/ カタール/アニメーション
 
母国を戦争で破壊されたミディアン。避難途中、空腹に耐えかねた彼は、大切にしていたものを口にしてしまう。体に奇妙な異変がおき始めるが、もう何も彼を止められない。

ICRC駐日代表部スタッフ レビュー

この映画、人道支援関係者に見て欲しいです。昨今の人道危機の巨大化により、人道支援団体も巨大化の道を辿り、“支援”を受ける人々の目線を想像しにくくなりつつあるのかもしれません。この作品は、抑えた人形劇による描写で淡々と支援される側の視点を想像させます。

主人公にとって紛争からの逃避は、現実から追い出されるように、そして過去にすがるように始まります。今支援を受けている人の、当たり前の夢が描かれます。


【1979年、冬】

アメリカ/ドラマ
 
1979年にイラン革命が始まり、ペルシャ系ユダヤ人の母親が祖国に抱いた疑念。

ICRC駐日代表部スタッフ レビュー

1979年のイラン、少数宗派であるユダヤ教徒の一家が革命下で過ごした数日間を描いた作品。

画面の色彩・明暗が場面ごとにコントラストに富んでおり、家庭内の調度品や服飾の美しさは、古代ペルシアから育まれたイランの文化的な豊かさを、壁にかかるたくさんの家族写真は一家が歩んできた歴史を、20分の作品内で効果的に表している。詩歌や踊りを愛し温もり溢れる家族の情景とは対照的に、緊迫した場面では、憎悪や不信・不安・恐怖といった心情が暗く冷たい画面越しに伝わってくる。

愛する人、故郷、大切な物を手離す決断を迫られ、喪失の悲しみを抱えながら生きる人々は、映画の中だけでなく今日も現実に存在している。彼らが経験してきた苦難に寄り添うためのヒントを、監督は自身の繊細な視点や制作への誠実な姿勢を通して、私たちに教えてくれているのかもしれない。


【リトル・ベルリン】


フランス/ドキュメンタリー
 
ベルリンの壁に分断された小さな村。雄牛のペーターは、壁の建設により一緒に暮らしていた36頭の雌牛と引き離されてしまう。オーストリア出身の名優クリストフ・ヴァルツがナレーションを担当する、実話に基づいた話。

ICRC駐日代表部スタッフ レビュー

冷戦下のドイツの東西分離により分断されたのは人間だけではなかった?

ある牧場に暮らす牛たちは、ある日突然、西側と東側に分けられてしまい、そこで暮らしていた牛のピーターは、家族たちと離れ、西側で一人ぼっちに。

実話を元にして作られたこの作品は、主人公の牛のピーターとその家族たちのお話ですが、この「牛」を「人」に置き換えて考えてみると、ハッとします。社会の分断は、ピーターのような悲しい出来事を引き起こしてしまいます。今も社会の分断はいろいろな形で進行しているからこそ、この作品は、分断の悲劇を止めるために私たちができることはないのかと考えさせてくれます。


【ブランカ】


ハンガリー/ドラマ
 
1991年のユーゴスラビア。戦場から遠く離れた国営病院の産科病棟で働くことになったブランカ。孤独な悩みを抱えながら、彼女が本当に向き合わなければならなかった問題は、病院から新生児たちがいなくなることだった。

ICRC駐日代表部スタッフ レビュー

ユーゴスラビア紛争であまり表に出ていない事実に焦点を当てた、衝撃的な作品でした。私たちはこの映画で描かれている事実をもっと知るべき。主人公は、隠された真実と与えられた業務の間で葛藤しながら、ある決断を下します。是非皆さんに見てもらいたいです。


【空のない街】


シリア/ドキュメンタリー
 
故郷や家族に思いを馳せつつ、数時間後の自分が生きているのかすらわからない、紛争下に暮らす青年の日常目線。

ICRC駐日代表部スタッフ レビュー

ウクライナに世界中の注目と支援が集まる中、同じように人道危機に見舞われている国々が見過ごされています。国民の8割が人道支援を必要としているシリアもその一つです。

だからこそ、豊かな発想と思いがけない手法で、シリアの人々が置かれている状況を追体験させてくれるこの映画を、多くの人に見てほしいと思いました。

そして、この映画はスマホで撮られています。今や、スマホと意思さえあれば、戦禍にいても映画をつくって世界に見てもらえる時代だと気づかされ、世界観を変えられた映画でもありました。


【HOPE(希望~彼女の命を救えなかった理由)】

ショートフィルム【HOPE(希望~彼女の命を救えなかった理由)】のワンシーン
赤十字国際委員会(ICRC)がHealth Care in Danger ~危機に立つ医療活動~のグローバルキャンペーンの一環で制作したショートフィルム『希望:彼女の命を救えなかった理由』。世界最大規模の広告の祭典、カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルのフィルムクラフト部門でグランプリを受賞。


【希望のマーク】


赤十字マークの正しい意味を知っていますか?そもそもこのマークは「攻撃してはならない」という意味を持ちます。赤十字が中立な人道支援組織として、現場で円滑な活動ができ、たどり着くべき人にたどり着くためにも、このマークは「安心、信頼、希望」のマークとして正しく使われることが大切です。一般の方が、赤十字マークをむやみに使用してはならない理由もここにあります。有事の際に一般市民を守り、助けるマークの意味を平時から知っておくことで、救えるたくさんの命があるのです。