殺人ロボットなどの自律型兵器:国家は人道的、倫理的な課題に対処すべき
自律型兵器は戦闘員と非戦闘員をどのようにして見分けるのでしょうか?この革新的な技術は、戦闘員より正確に軍事ターゲットを見極めることが出来るのでしょうか?もし国際人道法に違反した場合は、誰が責任を負うのでしょうか?自律型兵器の使用についてはこのように多くの問題が未解決であり、赤十字国際委員会(ICRC)は、各国に対し人道上のコストと国際人道法への影響について検証するよう呼びかけています。
兵器の技術的進歩により、機械が人の介入なしに戦場で決定を下す将来がやって来るかもしれません。戦争のあり方が大きく変化することによる潜在的影響を分析し、国際人道法が尊重されないままこのような兵器が使用されることにICRCは警鐘を鳴らします。
自律型兵器とは?
自律型兵器(殺人ロボット兵器としても知られている)は、人間が操作しなくても、人間を含むターゲットを探索、認証、攻撃する能力を持っています。飛来するミサイルや迫撃砲を打ち落とすよう設計されている現在の高度自動防衛システムとは異なり、自律型兵器は空間や時間の制約を受けることなく使用でき、状況の変化にも順応します。
このような兵器はまだ実際の戦闘で使用されたことがありません。しかしながら、この分野には多大な関心と多額の研究費が寄せられており、将来戦闘の道具として利用される日が来るかもしれません。
自律型兵器の開発、生産、利用に関する一時停止や禁止が叫ばれています。ICRCはそのような声に同調しているのでしょうか?
ICRCは現在のところ、このような流れに参加していません。しかし、自律型兵器の開発や戦闘配備に入る前に、国際人道法で求められている法的、倫理的、社会的な問題を考慮するよう各国に呼びかけています。ICRCは、自律型兵器がもたらす潜在的な人道上のコストと国際人道法との整合性を懸念しています。
自律型兵器について国際人道法ではどのように言及されているのでしょうか?
自律型兵器に関する特定のルールはありません。しかし、人道法では、新兵器や新たな戦闘手段を開発または入手する場合は、その使用が人道法に抵触するか否かを国家が判断しなければならないとされています。区別、均衡性、予防措置という国際人道法の基本原則は、全ての新兵器や戦闘技術開発に適用されるのです。これには自律型兵器も含まれます。
自律型兵器とこれら全ての原則との整合性を確実に図ることが各国の課題であるといえます。たとえば、区別の原則においては、自律型兵器が非戦闘員と戦闘員を区別できるのかは現在のところ不明確です。また、戦闘員と非戦闘員だけでなく、戦闘員と投降した戦闘員や、直接戦闘に参加している文民と警察官やハンターといった武装文民も区別されなくてはなりません。自律型兵器の使用においては均衡性の原則も遵守されなくてはなりません。軍事目標を攻撃する際に想定される文民の被害が、軍事利益を大きく上回ってはならないのです。また、文民への被害を最小限にするために、攻撃における予防措置が取られなければなりません。
無人飛行機は自律型兵器でしょうか?
人的介入なしに稼動するのが自律型兵器であり、現在使用されている遠隔操作による無人飛行機とは異なります。遠隔操作では、人間が軍事目標を選択し、武器を起動、発射します。
自律型兵器を使用した場合の潜在的利益とリスクは?
自律型兵器を推奨する人々は、システムに搭載された最新センサーや人工知能が人間より正確に軍事目標を特定するため、文民被害も避けることが出来ると主張します。また自律型兵器は、恐れ、怒り、復讐心といった人間が持つ不の感情に流されないとしています。一方、これらの兵器は、思いやりといった人間のポジティブな感情や戦闘員の投降意思を正確に推し量ったり、軍事利益の評価に必要な人間的判断や経験に欠けるともいえます。さらに、このような兵器を使用すれば、敵対行為の実行にパラダイムシフトと質的な変化が起こると推察されます。機械が生死の判断を下し、人を死に至らしめる力を持つことを許してもいいのか、これが究極の問いといえるでしょう。
自律型兵器の使用が国際人道法の違反だと判断された場合の責任の所在は?
自律型兵器はそれ自体は機械であるため、国際人道法の違反の責任を問われることはありません。そのため、自律型兵器が戦争犯罪を引き起こした場合、誰が責任を負うのか、という問いに行き当たります。それは、プログラマーでしょうか?製造者、それとも司令官でしょうか?責任の所在が人道法で求められているようには明確に出来ない場合、このシステムを配備することは合法で倫理的といえるでしょうか?このようにいくつもの問題が解決されない状況の中で、国際人道法との整合性が保障されない限り、自律型兵器を使用しないようICRCは各国に呼びかけています。
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