赤十字国際委員会/2013年活動予算 総裁記者会見:最善の方法で、迅速な人道的対応を
ジュネーブ(ICRC) – 複雑化する紛争や戦闘の被害を受けている世界の人々を救うため、赤十字国際委員会(ICRC)は、2013年の人道支援活動資金として11億7千万スイスフラン(約882億7千万円)の拠出をドナー国などに呼びかけました。※ICRCの活動資金は、その92%以上をジュネーブ諸条約に加盟している国々から任意で頂いています。
「この予算が確保できれば、安全が保障されていないような場所においても、多様な人道ニーズに多角的に対応できるようになります」と総裁のペーター・マウラーは6日、来年度の予算を公表した記者会見で語りました。「私たちは2013年、様々な状況下で、老若男女から傷病者や避難民、収容所に拘束されたり家族と離れ離れになった人々に対して引き続き手を差し伸べます。短期・長期的な紛争が混在することで、人道支援の必要性がより高まることが予想されます。緊急的なニーズを満たし、人々がこの先生きていく力をサポートするのが私たちの仕事なのです」
予算配分で見ると、2013年にICRCが最大規模の活動を展開するのはアフガニスタンで、イラク、ソマリア、コンゴ民主共和国、南スーダン、シリア、イスラエル/パレスチナ、スーダン、マリ/ニジェール、イエメンと続きます。「深刻化する戦闘によりシリアで多数の死傷者が出ている現状を危惧しています。コンゴ民主共和国東部で再発した戦闘や数々の暴力行為もしかりです。マリ北部でも戦闘の影響を受けて食料不足や公共サービスの停止など、人々は日々苦難を強いられています。アフガニスタンの人々にとっても先々の見通しは暗く、30年以上続く暴力や命の危機に脅かされています。スーダンと南スーダンでは、戦闘行為によりたくさんの人々が避難生活を送っていて、事態の改善は今のところ見込めていません。アジアの小さな村での小競り合いや、アフリカの複数の国で見られる部族衝突など、紛争にまで至っていない戦闘行為であっても、人々が今後とてつもない苦しみを負う事態にまで発展することは想像に難くありません。また、昨今の経済・財政危機が特定の国々に情勢不安をもたらすことも予想されます」
また、マウラーは次のように続けました。「シリアやコンゴ民主共和国、マリが新聞やテレビのヘッドラインを飾っている一報で、フィリピンやマダガスカル、中央アフリカ共和国など、世間の関心の外に置かれた状況下でも、私たちは苦しんでいる人々に寄り添っています」
アフリカには、来年も全体予算の40%を注ぎ込みます。「戦闘行為の犠牲となっている人々の状況や実際にさらされているリスク・危険の度合い、また性別や年齢などに考慮して、彼らのニーズに応える最善策を練り、それらに見合った予算が計上されています。ICRCが現地で活動するためにどれほどのアクセスが確保されているのか、現地の人々は私たちをどの程度受け入れているのか、そして治安を悪化させている理由は何なのか、なども考慮に入れています」
現場で働く約12,000人の職員は、各国に根を張る赤十字社・赤新月社と密に連携しながら任務を遂行しています。また、赤十字以外の国際組織・地元組織とも年々手を携える場が増えてきています。「私たちの助けを必要とする人たちがいる限り、それがどこであろうと、できうる限りの手を尽くします。しかし、それも継続したドナーの支援にかかっていることは紛れもない事実です」
来年度予算11億7千万スイスフラン(約882億7千万円)のうち、9億8870万スイスフランを現場活動に、1億8680万スイスフランを現場を支えるジュネーブ本部に充てられます。
「2012年はICRCにとって、安全に活動を行うという意味で最も大きな課題を突きつけられた年といえます。人道危機への対応と、任務を遂行する上でのリスク、この二つのバランスをとるのは来年も容易ではないでしょう。活動を成功へと導くためにも、中立で公平、独立した組織としてきちんと認知されるよう力を尽くします」
2013年活動予算 上位10ヵ国