フィリピン台風支援:現地リポート1 医療支援 - その3

2013.03.07

昨年12月4日、大型台風がフィリピン南部を襲いました。
フィリピン台風支援のため、現地で活動を続けてきたICRC広報官のリポートを以下の内容でご紹介していきます。今回は【医療支援】の第3回となります。

現地リポート1 医療支援
現地リポート2 安全な水と衛生環境の整備
現地リポート3 緊急支援と生活再建

薬局を担当するのは、苫米地則子看護師。通訳を介して、薬の飲み方などを患者に丁寧に説明しています。
「薬を渡すだけではなくて、それをきっかけに生活の話をしたり、気候の話をしたり、患者さんと会話をするようにしています。通訳がいるので、それができるのが嬉しい。ただ、現地の人の名前を読み上げるのが難しくて、カルテに書かれている名前を読んでは笑われています」。
苫米地看護師が一番苦労しているのが、なんと言ってもこの現地の気候。「雨と湿気と、とにかくしんどいですね。でも、地元の人にとってもこの気候は厳しいみたいです。それに加えて、台風後は物価が上がって経済も苦しくなっている。通訳スタッフの家はこれまでゴムの木で生計を立てていたけれど、被災して今は収入なし。ある日、お母さんが『死んだほうがまし』って言ったら、父親が『頑張れば神様が助けてくれるよ』って言ったんですって。一家でそういう会話をしているんです」。苫米地看護師は、いずれ現地スタッフで薬局が回るようになれば、診療の現場に移る予定とのこと。

全てのテントを回って、人手が足りないところを補助しているのが、BHU最年少の小林賢吾看護師です。「忙しさの具合を見ていろいろなところをさばいています。診察エリアも現地スタッフと二人で介助していますが、この現地スタッフが経験豊富なのでとても助かっています」。意外だったのは、患者が注射に慣れていないこと。「みんな注射となると緊張してガチガチなんです。『落ち着いて、落ち着いて』って言うんですけど、今日も二人気を失っていました」。フットワークの軽さではピカイチの小林看護師。海外での勤務経験が豊富な伊藤・苫米地両看護師の存在に、感謝の毎日だと言います。「すごい人たちといつも一緒なので、日々見て学んでいます。ラッキーです」。

当の伊藤看護師はというと、こちらもまたフットワークが軽く、現地の医師・看護師を雇うための面接から、唯一機能している地域病院との調整・交渉、スタッフの健康管理など、休む暇なく働く日々が続いています。「診療がうまく進んだら、机を入れて、事務やロジ面の仕事も徐々に始めたいんですよ」。こう語る伊藤看護師に今後の課題を聞きました。「BHUは、機能的には今のところ問題ありません。現地の人も健康管理の意識が高く、早めに病院に来るので助かっています。ただ、妊婦さんに関しては、定期健診という観念がこの地域にはないみたいなので、今後は妊婦さんに声をかけてここにきてもらって、安全な分娩が行えるよう指導できるようになればいいな、と思っています」

「赤十字は、台風の後にすぐ来てくれました。一生懸命働いている皆さんの姿を見て、思いやりの心や愛を感じます」と語るのは、初日にBHUを訪れたバガンガの行政官、エヴァンジェリン・ナザレーノ女史。「とても気さくで付き合いやすいので、本当に助かっています。バガンガの人々は、台風の後、肺炎や高熱、下痢などで苦しんでいます。BHUは私たちの心の支えです」

これから3月半ばまで、厳しい天候と闘いながら、BHUの現地の人々への奉仕は続きます。