フィリピン台風支援:現地リポート1 医療支援 – その2
昨年12月4日、大型台風がフィリピン南部を襲いました。
フィリピン台風支援のため、現地で活動を続けてきたICRC広報官のリポートを以下の内容でご紹介していきます。今回は【医療支援】の第2回となります。
現地リポート1 医療支援
現地リポート2 安全な水と衛生環境の整備
現地リポート3 緊急支援と生活再建
「一番大変なのは雨。均した土地にも水溜りができたりして苦労しました」と語るのは伊藤看護師。「でも、日雇いの大工さんたちが素晴らしく、与えられた仕事以上のことをしてくれたから短時間でできたんです。クリスマスもお正月も『休んでもいいよ』と言ったけど来てくれた。逆に、病院を作ってくれてありがとう、という感謝の気持ちから率先して働いてくれています。彼らたちがいなければ絶対にオープンできていなかった」
そして1月3日、待ちに待ったBHUのオープン日。年末に現地入りした苫米地則子看護師と小林賢吾看護師、それにドイツ人医師、ノルウェー人看護師、香港人助産師が加わり、計7人の外国人スタッフと、現地スタッフ24人で始動。万全の体制です。
設営工事で現場監督としての役割を演じた新居技士は、「(オープン日を間近に控えて)すごい雨と風でテントが倒れてしまったり、いろいろな機材が壊れたので、もう間に合わないと思いました。ICRCのチームと一緒に綿密な計算と打ち合わせを重ねて出来上がったので、すごく嬉しいです。オープンできてよかったです、本当に」と安堵の表情。新居技士の派遣期間は一ヶ月、現地人の後継者も決まりました。「現地の人の力はテクニカル面では必要不可欠。フィリピン人はたくましくて、スキルもあって、本当に頼りになります。朝早く来て、遅くまで働くまじめな人が多いですね。それに、助けを頼めばすぐ手伝ってくれる」。雨の日も風の日も現場で現地人スタッフと密接に仕事をしただけあって、「町なかで見かけたら声をかけてくれるんです。名前が覚えやすいのかな(笑)」と真っ黒に日焼けした顔を笑みで緩ませました。
BHUは、五つのテントから成ります:受付兼待合室、診察室、24時間制の経過観察室、産科小児科専用室、こころのケア専用室。
診察時間は、午前が8時から12時まで、午後は2時から5時までで、日曜は休診。初日の3日は71人がBHUを訪れました。
BHU唯一の医師、ドイツ赤十字社のグンドゥラ・エップ・グラーク医師は、3日間を次のように振り返りました。「私たちが提供しているのは本当に基礎的な医療です。伝染病の広がりも視野に入れて態勢を整えていますが、今のところ軽度の下痢は見られても、重篤な下痢に至っているケースはありません。風邪で来る人がほとんどです。被災者の多くは、夜寝るときに体に掛けるものがなく、一家で風邪を引いてしまうのです。あと、多くの患者さんがストレスやトラウマを抱えていて、悲しみにくれる人、食欲不振や頭痛などに悩む人、うつ状態に近い人もやってきます。痛みなどを訴える患者さんには薬を処方し、台風後に症状が現れた患者さんにはカウンセリングも行っています。これまでに二人重篤な患者を診ましたが、ここでは専門的な処置ができないので、隣町へ行くための橋が再建されればそちらの病院に送りたいと思っています」
1月31日現在で、BHUを訪れた患者の数は3千人を超え、一日平均100?120人を診察しています。最も多く見られる症状・疾患は急性呼吸器感染症で、全体の約40%を占めています。