シリアとレバノンの最新事情と活動報告
ICRCは、シリアが戦闘状態に入った3年前から、全ての犠牲者へ支援を届けるべく活動しています。敵対する勢力に包囲された地域の人々も例に漏れません。現地の人道状況は日々深刻さを増し、緊急な支援を要しています。私たちは、ダマスカス、タルトゥース、アレッポを拠点にシリア国内での活動を続けると共に、周辺国の難民および受け入れコミュニティーへの支援にも尽力しています。
シリア:
国際赤十字・赤新月運動(以下、国際赤十字)は、戦闘による給水設備の破壊に加え、降雨量が不足しているため、水不足が深刻な問題となりつつある、と警告を発しています。数百万の人々の生活に今後影響を与えることが予想されます。地域・国家当局に対して、シリアで活動をしている全ての援助機関と手を携え、安全な水の提供と、長期的な対策を講じるよう呼びかけています。
3年にわたる戦闘で疲弊しているアレッポやハサカ、デリゾール、ラッカでは、少量の降雨と夏の気温の高さにより、農業や食料確保も影響を受けています。アラブ・シリア赤新月社(以下、シリア赤新月社)によると、2014年の小麦の国内生産は、前年比を52%下回る見積もりです。これを受けて、パンやその他食料の値段がつり上がるとみられています。
戦闘と干ばつの二重苦は、全てのシリア国民、特に国内避難民と彼らを受け入れるコミュニティーに、深刻な打撃を与えています。清潔な水の不足と劣悪な生活環境で国内避難民の衛生状態は悪化し、A型肝炎や皮膚病、下痢などが急増しています。シリア赤新月社と国際赤十字は、国内の数百万の人々に安全な水を届け、水を供給するインフラの緊急修繕を行っています。シリア赤新月社は、地元の水道当局およびICRCと緊密に連携し、シリアの14の県全てにおいて井戸や水の供給ポイント、上下水道の修繕に当たっています。
シリア国内の避難民への優先課題は、医療サービスと薬の提供です。国内避難民を一番多く抱えるタルトゥースでは、ICRCの支援するシリア赤新月社の移動診療所が二つ稼動していて、一ヶ月で2千人超の患者を受け入れました。この移動診療所は、避難先で慢性疾患や薬不足にあえぐ人々に、唯一の医療へのアクセスを提供しています。
全ての紛争当事者との数週間にわたる交渉の末、ICRCは6月26日、アレッポの政府管轄地域および反政府勢力管轄地域にある、二つの病院に患者300人分の医療品を届けました。
私たちは、シリア政府との対話のみならず、周辺国や関係国の合意を得て、戦闘の犠牲となっている人々へ出来うる限りの支援を行えるよう策を講じています。また全ての紛争当事者に対して、国際人道法に則った振る舞いや、犠牲者に公平に支援を届けるためのアクセスの確保を強く呼びかけています。支援は、迅速かつ妨害なく届ける必要があります。また、全ての負傷者および病人は、必要な医療行為を受られるよう保障されなければなりません。
レバノン:
総人口400万のレバノンに、100万を超える人々がシリアの戦闘から逃れるため移り住んでいます。膨大な数の避難民は、医療サービスから教育まで全てにわたり、レバノンに多大な影響を与え、国民の負担や犠牲が生じています。私たちは、食料支援や水供給のための環境整備、国境を越えてやってくる負傷者を受け入れる病院のサポートを行っています。レバノン赤十字社と共に、こうした医療サービスは大変重要な役割を担っています。国境にやってきた人々で治療が必要な人をICRCが分別し、レバノン赤十字社が病院に送り届けます。これまで、1,000人以上が病院に収容されました。今年の暮れまでには、ICRCの医療スタッフが駐在する病院を設け、戦闘で負傷した人々を受け入れられるよう目指します。戦傷外科などICRCが持ちうる医療知識やスキルをレバノン人スタッフに提供する予定です。
レバノンのベッカー高原にあるシリア人難民キャンプもやはり、水不足に悩んでいます。2013年5-12月、ICRCはレバノンで8つの水関連の事業を行いました。給水ポンプや発電機の供給や給水所の改善などで、難民や地元住民を含む約22万人がその恩恵に授かりました。また、戦闘の被害を受けたアイン・アルヘルワにある病院も修繕。難民や受け入れ世帯を支援するため、新たな水関連事業立ち上げに向けて地方当局との対話と現地調査を始めました。