アフガニスタン:事務所襲撃後も続く紛争とICRCの対応
2013年7月23日
アフガニスタンにおける武装勢力の拡大と急進化の影響を受け同国の安全保障環境はさらに悪化しています。一般市民の日常生活は脅かされ、死傷者の数は膨れ上がっています。ICRCは、紛争やその他の武力行為の被害者に手を差し伸べることにこれからも尽力していきます。
家族は愛するものが失うたびに心が打ち砕かれる思いをします。また、多くのアフガン人が基本的医療サービスへアクセスができずにいますが、医療従事者や施設、車両が攻撃の対象となっていることも、状況をさらに悪化させています。その一方で、政治的・安全保障上の理由によって、国際社会からの支援は減少しています。
「5月に起きたICRCジャララバード事務所への攻撃は状況の悪化を物語っています」とICRC南アジア事業局長のジャック・ドゥ・マイオは話します。「武装勢力は、非戦闘員を救助するものは助命もしくは保護するという公然の約束事を破るかもしれません。つまり、支援者側を攻撃するということです。こうなると、何百万のアフガン人が必要な支援を受けられなくなります。ICRCは彼らのために力を尽くす義務があり、見捨てるわけにはいかないのです。」
ICRCは紛争被害者への緊急支援を継続していくことを決めました。今まで30年間病院や戦争負傷者を支援してきたように、これからも多くの身体的に不自由な人へのリハビリ支援を提供していきます。また、紛争が民間人に与える影響をモニターし、必要であれば紛争当事者と話し合いの場を設けます。職員は引き続き国内外の被拘束者を訪問し、家族が連絡を取り合えるよう尽力します。
居住者や紛争に巻き込まれた避難民への緊急支援も維持していく予定で、必要に応じて地元の組織、特にアフガニスタン赤新月社と連携をします。
「私たちは危機を出来る限り回避するために、仕事の仕方を見直していかなければなりません」とドゥ・マイオは続けます。「水や衛生施設へのアクセスを確保するプログラムや食料配付、過疎地への視察を縮小したことが、どれほど影響しているかを判断するには、もう少し時間が必要です」
ICRCはその使命のもと、紛争当事者との対話を進め、戦争のルールへの理解を深めるよう働きかけ、同時に人道支援がしっかりと受け入れられるよう努めます。中立、公平、独立した人道支援組織として、武装した護衛やエスコートをつけずに活動をします。そのような人道支援を提供する上で必要な安全確保は、そこの国民、そして特に武装勢力に委ねられています。
被拘束者訪問と家族間の連絡再開
ICRCはアフガニスタン及び世界各地で被拘束者の置かれている状況と待遇を視察しています。アフガニスタン監督官庁、NATO率いる国際治安支援部隊(ISAF)に関与する国々、そして米軍が運営する収容所を定期的に訪問しています。また、紛争により離散した家族が連絡を取り合えるよう支援し、行方不明者の行方も追っています。
2013年上半期でICRC職員は:
・アフガニスタン国内72か所にある収容所を108回訪問
・2,398人の被拘束者を個別に面会し、841人を初めて訪問
・13名の元被拘束者が故郷に戻るための交通費を負担
・アフガニスタン赤新月社と協力して、11,000通の赤十字通信を集め、10,400通を配付。その多くは被拘束者と家族間の通信
・パルワン収容所に収容されている被拘束者とその家族間の通話3,300件をサポート
・パルワン収容所に収容されている被拘束者の家族との面会に必要な交通手段を手配。家族の訪問は2,700回以上に
医療ケアの提供
医療施設支援はアフガニスタンにおけるICRCの活動の主要部分を占めています。ICRCは、北部のシェベルガーン病院と南部のミルワイス地域病院に薬と医療支援を提供しています。また、44のアフガニスタン赤新月病院に、技術及び財務支援を行い薬と医療物資を配付しています。最前線地帯には応急処置用の物資を運び、戦闘員や民間人を対象に負傷者を治療するための応急処置トレーニングも行っています。
2013年1月から6月で、ミルワイスとシェベルガーン病院には16,169名の患者が入院し、82,734人の外来患者を診察。ミルワイス病院だけで5,350件の外科手術が行われました。
さらにICRCは:
・紛争最前線に医療物資を配付
・780人以上の戦闘員、国家治安部隊、地元警察、厚生省、負傷者を病院に搬送するタクシー運転手を対象に応急処置トレーニングを提供
・ICRC管轄の地元病院に毎月薬とその他の必需品を配付
義肢と身体的リハビリ支援の提供
ICRCは義肢義足センターをアフガニスタンの7カ所で運営し、義肢や義足を必要とする患者や他の障がいを持つ人々にリハビリ支援を提供しています。センターでは、障がい者が社会で居場所を得られるよう、職業訓練、小額融資、子供の自宅学習を通した支援を展開しています。センターまで通うことが出来ない下半身が不随の人への医療、経済、社会的支援は在宅医療サービスでまかなわれています。
2013年上半期でICRCの7つのセンターでは:
・598名の切断患者を含む4,050名の患者を登録
・47,086名の患者を支援
・約8,520個の人工装具と矯正器具を装着
・124,230回以上の理学療法セッションを開催
・350人の患者に小規模ビジネスを始めるために必要な小口融資を支援
・145名の患者の職業訓練を実施。2013年上半期にはその内103名が訓練を終了
・脊髄損傷患者を治療するため3,921回の在宅医療訪問を実施
食料・その他の支援物資の配付
アフガニスタン赤新月社の協力により、ICRCは食料やその他の物資を紛争や自然災害に苦しむ人々に配付しています。また、稼ぎ手が家族を養えるようfood-for-workプロジェクトを多くの地域で展開し、家畜経営者には獣医学上の基本技術を教えるトレーニングプログラムを行っています。
ICRCとアフガニスタン赤新月しゃは2013年1月から6月において:
・アフガニスタン北部でのcash-for-workプロジェクトに参加する4,300名に就業機会を提供
・紛争や自然災害が原因で避難している3,830家族に食糧配給と生活必需品一カ月分を配付
・北部24カ所の村々で女性が家長の1,200家族を対象にひよこや鶏用の餌を配付し、家禽管理に関するトレーニングを提供
水と衛生サービスの改善
ICRCは地元の水道委員会と緊密に連携し、井戸の掘削、コミュニティへの教育、手動ポンプの管理を通じ、きれいな水を都市や農村地帯に提供する支援を行っています。収容所監督機関とは、収容所内の衛星基準の改善に共同で取り組んでいます。
2013年1月から6月でICRCは:
・パイプラインと井戸を設置し、パクティヤ、ナンガハル、ファリヤブ州の都市部10,900人にきれいな水を提供
・手動ポンプの設置と使用方法についてトレーニングを実施し、貯水池を改良。これにより、パルワン、カピサ、バーミヤン、コースト、ウルズガン、ヘラト、バッジス、ファラー、ナンガハル、カンダハル、クンドゥズ、ファリヤブ州の農村部213,500人にきれいな水を提供
・北部、南部、西部にある収容所の看守並びに被拘束者を対象に衛生改善セッションを実施。約7,850名が受講
・3つの州立収容所にいる被拘束者9,400名を対象に給水と衛生状態の改善を支援。
・カンダハルのミルワイス病院で改築工事を継続
人道法遵守の促進
紛争当事者に民間人保護の義務を認知させることは、人道法遵守を世界中で働きかけているICRCの主要な取り組みの一つです。また、市民社会グループ、政府機関、アカデミックに対し、人道法に関する知識を広めています。
ICRCは2013年1月から6月において:
・国軍、警察、地域警察、国家保安局、反武装勢力の1,770人に対し人道法に関するプレゼンテーションを実施
・地域の長老、宗教学者、州議会メンバー、政治家、NGO、ICRC支援プログラムの受益者6,600人以上に対しICRCの使命と活動について説明
・人道法の講師である170名近くの国軍将校に五回に渡る指導者養成講座を実施
・国軍、警察、国家保安局に属する4,800人を対象三日間の人道法セッションを提供
アフガニスタン赤新月社とのパートナーシップ
ICRCはアフガニスタン赤新月社と緊密に連携し、彼らがコミュニティにサービスを提供し、様々な人道プログラムを実施する上で必要な技術や財政支援を行っています。
2013年1月から6月において:
・ICRCとアフガニスタン赤新月社は2013年及び2014年のパートナーシップ協定合意を更新し、人道支援分野での協力について確認
・アフガニスタン赤新月社は人道支援活動をサポートするボランティアをコーストとパクティヤ州で新たに1,000名雇用
詳細な記事はICRCジュネーブ本部(英語)で確認できます。
アフガニスタンでのICRCの活動はこちら(英語)をご覧下さい。
ニュースレター19号では「人道支援 安全確保と危機管理」について特集しています。 ニュースレターのダウンロードはこちら