《インタビュー》核兵器廃絶に向けての赤十字の取り組み
世界24の赤十字社・赤新月社と国際赤十字・赤新月社連盟 、ICRCは、5月半ば、広島市に一堂に会し、核兵器の廃絶に向けて、向こう四年間の行動計画案を策定しました。核兵器に関する赤十字運動の立場をそれぞれの赤十字・赤新月社がホームページなどで明らかにし、関連資料を一般と共有すること、そして自国で啓発活動を行うことなどを盛り込みました。今回策定された行動計画案は、今後核兵器の使用の禁止を求める新たな決議案と共に、11月の国際赤十字・赤新月運動(以下、赤十字運動)代表者会議に提出され、審議を経て採択を目指します。
以下、ICRC法律顧問のルー・マレスカと核・放射線・生物・化学兵器部門専門員ニール・デイヴィソンのインタビューをご紹介します。
ICRC法律顧問
ルー・マレスカ
Q:核兵器に対して赤十字の見解・役割は?
明確です。
二度と使用されないこと、そして各国政府に使用を禁じるための交渉を始めるよう訴えかけることです。
そして、最終的には廃絶に向けて法的拘束力のある条約や協定を締結を目指します。
原爆投下後に日本赤十字社やICRCが果たした役割や目撃した惨状が、そもそも赤十字内でこうした議論を呼び起こすきっかけとなっています。今回の会議は、地球上で唯一、核兵器の恐ろしさを体験した国、しかも広島でやることに意義がありました。
被爆者や平和記念資料館など、人道上の脅威を説得力のある形で伝えるのに広島ほど適した場所はありません。
Q:これからどのようにして機運を高めていく?
チャレンジはいくつかあります。
人道上の脅威を大衆に伝えること。
原爆投下から何十年も経った今、若い人たちは核兵器の恐ろしさや東西冷戦の時代を経験していません。
まずは、彼らに核兵器がもたらす被害を伝えます。
同時に政治家や政策決定者に呼びかける必要もあります。
今こそ、何よりも優先して真剣に取り組む問題だということを再認識してもらうためです。
保有する国や、これから保有しようとする国が増える中、核兵器が大国の中でとても重要な軍事戦略となっていることは否めません。
今回私たちが焦点を当てているのは、核兵器が及ぼす人道上の被害で、こうした論点でのアプローチは新しい試みです。
議論を活気付け、核兵器の使用禁止や廃絶に向けて確固とした道筋をつけた上で行動に繋げることができれば本望です。
ICRC核・放射線・生物・化学兵器部門専門員
ニール・デイヴィソン
Q:ICRC本部ではどんな仕事をしているの?
ICRC職員の私の仕事は、科学的見地から、放射線や核エネルギーを用いた兵器をはじめ、生物・化学兵器についての専門知識を提供することです。
一度核兵器が使用されると、人道支援を行うことが非常に難しくなります。
ICRCもそのための十分なキャパシティーを持ちえていません。
ここで強調したいのは、そうした兵器の使用を食い止めること、そしていずれは廃絶へと導くことが必要だというメッセージです。
Q:会議を広島で行った理由は?
今回の議論は、核兵器が人道上に及ぼす影響に焦点を当てています。
広島で開催する意義は、おぞましい人道上の惨劇を語る上でものすごい説得力を持っている場所だからです。
広島平和記念資料館を訪れれば、核兵器の破壊力を知ることができます。
特に、被爆者の体験談はすさまじい被害の現実を知ることができました。
資料館で特に興味を引かれたのが、どのようにして原爆投下の場所が選ばれたのかということ。
人間に及ぶ被害を考えずに、冷酷なまでに淡々と投下場所が特定されています。
広島でこうした過去を振り返りながら、核兵器の非人道性について語ることに大変意義があるのです。
赤十字がどのように核廃絶に関わっていくか。
ここで交わされている議論はとても実践的で的を射ているので、今後の政治の場での議論に一石を投じると思います。