インタビュー:ICRCの現場で働く看護師、パリーナ・A・アスゲルスドッティル

2013.01.25

東京、1月25日、

日本赤十字看護大学が主催する国際教育講演会『災害・紛争の現状と看護職の役割』が行われました。登壇者の一人として来日したパリーナ・A・アスゲルスドッティルは、30年近くICRCの現場で働いてきた看護師です。その第一線で活躍してきた彼女に、ICRCでの活動、経験、思い、そしてこれから活躍する若い世代に向けたメッセージも含め、インタビューをしました。

ICRCで働こうと思ったきっかけは何ですか?
1985年、私は別の団体でエチオピアで働いていて、そこでICRCの仕事を目の当たりにしました。とても共感し、帰国後すぐに赤十字に連絡を取り、仕事をすることになりました。ICRCでの最初の派遣先は、タイ・カンボジアの国境でした。とても難しい任務でしたが、人道支援に対する思いだけでなく、自分ができることを活かしていく仕事にとてもやりがいを感じました。

様々な国で活動してきた中で、どのミッションが一番大変だと感じましたか?
どの仕事も大変であると同時に、とてもやりがいのあるものです。状況によっては避難しなくてはいけないこともありましたし、同僚を亡くしたこともあります。安全上の問題で、十分な施設のない所で活動しなくてはいけないこともあります。ICRCの現場は直面する課題との闘いです。

現場で活動する上で、何が原動力となっていますか?
紛争や武力衝突は世界中でいまだに減っていませんし、むしろニーズは増える一方です。このような中、どの現場にあってもICRCの根幹となる人道理念、そしてICRCが必要とされていることを忘れずに活動を続けてきました。また任務地で出会う現地職員との交流も大きな原動力となっています。異なる国籍の人と、一つの目標に向かって協力しながら活動できることは、この上ない幸せです。

現場で日本赤十字社の看護師やその他日本からのNGOなど支援団体と一緒に働いたことはありますか?
はい、もちろんあります。日本赤十字社からの派遣も含め、多くの看護師、医師、技術者と働いたことがあります。みなさんとても仕事熱心ですし、困難な状況にも強く立ち向かい、素晴らしい同僚でした。アフガニスタンの病院でも一緒に働いたことがあります。

日本人だからこそできることは何だと思いますか?
異なる国・人種・文化・宗教・背景を持つスタッフが一つのチームで働く現場では、優しく、礼儀正しく、相手を尊重する日本人はとても好かれ、そして頼られる重要な存在です。また日本は自然災害に対する対応がとてもしっかりしていると思います。是非その能力を世界中で発揮してほしいと思います。

ICRCで働きたいと思う人たちへのメッセージをお願いします。
ICRCの任務は決して夢のような仕事ではありません。日常生活からはかけ離れた状況で、新しい課題に直面する毎日です。語学力や職務経験など求められている能力以外に、柔軟性・適応力・強い精神力が必要となりますが、とてもやりがいのある仕事だと思います。そして何よりも世界中には必要としている現場がたくさんあります。そこで自分自身の力を是非発揮していってほしいと思います。

プロフィール

パリーナ・A・アスゲルスドッティル(看護師、麻酔看護師、保健人材育成修士)

アイスランド出身。2012年12月まで在ジュネーブICRCにおいて看護部スタッフを務める。ICRCのキャリアをスタートしたのは1986年7月、タイ・カンボジア国境のカオイダン戦傷外科病院において外科病棟看護師としてであった。以降パキスタン、イスラエルとパレスチナ占領地域、アフガニスタン、東ティモール、ケニア、ソマリアなど、様々な現場で保健事業マネージャー、病院管理者、麻酔看護師としてキャリアを継続。2005年4月から2007年3月まではジュネーブのICRC本部の看護師長として世界各国のICRCの医療・看護活動、病院マネジメントを統括した。

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