ガザ:家、人生、希望の再建
クリスチャン・カルドンはICRCガザ事務所で15カ月間代表を務め、今年の7月から8月にかけて51日間にも及んだ戦闘に対応するための人道支援活動を指揮しました。この危機に苦しむ人々が現在どのような課題に直面しているのか、インタビューで答えてくれました。
ガザの人々が現在直面している主な課題は何ですか?
現在の優先課題は「再建」です。家を再建し、必要なインフラや学校、病院、工場を再建し、また多くの場合には、人生を再建しなければなりません。最近の激しい戦闘が原因となり、ガザに暮らす180万人の生活は目に見えるほどに悪化しています。なお、冬が訪れていますが、とりわけ危機的な状況にある何万人という人々は破壊された、もしくは住居にはふさわしくない場所に暮らしているため、洪水や寒さから身を守ることができません。
今回51日間続いた戦闘の前から、ガザの人々は日常的に数々の課題に直面していました。高い失業率、貧困、移動の制限、燃料の不足、安全な水と基礎的な医療サービスへのアクセスの限界などが挙げられます。生きていくために、そして地域経済を持続するために必要となる製品や建築資材も、限られたものしか入手できません。
ICRCはガザにおける人道ニーズにどのように対応しているのですか?
この夏の戦闘によって、多くの家や建物、インフラ、農地が破壊されました。戦闘中、ICRCは最も深刻な犠牲を強いられた人々に対する支援活動を行っていました。戦いが終わってからは人道支援活動をさらに拡大し、家を失った人々のニーズに応えることに尽力しています。また、パレスチナ赤新月社と緊密に協力して救命活動を展開するほか、負傷者を病院に搬送しています。
また、戦傷者の治療を行う診察所に薬や医療用品を届け続けています。ガザに何千人分の献血用血液も持ってきました。60万人への給水を再開するために、現地当局と協力して水道システムの応急修理も行いました。配電施設の修理も施し、ガザ地区全体に毎日5時間電気が通るようにしています。
7月に戦闘が勃発して以来、避難を余儀なくされた人々に対して、避難所や調理器具、バケツ、衛生用品、その他生活必需品を支給しています。この活動はまだ継続中であり、物資を受け取る人の数はもうすぐ16万を超えます。また、農業従事者が戦闘で荒らされた農地に戻り、再び生産的に使用できるようになるための取組みも行っています。目標は農地全体の約半分を肥沃な土地に戻すことです。そして、輸出制限の緩和を目指す交渉が続く中、ガザの人々が自身で商品を生産できるよう、支援を行っています。
私たちが、今回の戦闘がいかにして行われたのかをモニターし、記録に残していることも言及すべきでしょう。この戦いが現場でどのような被害をもたらしたのかを評価するだけではなく、紛争当事者に関する詳細な調査報告書も作成しました。この評価は赤十字の基本原則、および全ての武力紛争に該当する法の枠組みの中で行われており、国際人道法の履行に関して、紛争当事者との対話を進めていく上での基礎となります。国際人道法の尊重が欠如していることは明らかです。これまでの人道的な損失はあまりに大きく、このようなことが繰り返されてはいけません。
ICRCがガザで直面している課題は何ですか?
戦闘は約3カ月前に終わりましたが、ガザの多くの人々はいまだ日常的に苦しめられています。破壊されたインフラや何千もの家は直ちに修理されるべきであり、何百万トンにも及ぶがれきも撤去されなければいけません。また、不発弾を始めとするたくさん危険物が残っているため、市民がこれ以上負傷する前に撤去する必要があります。また、、何万人というパレスチナ人が避難を余儀なくされており、基礎的な支援を必要としているのです。
人道支援組織や他の機関が行っている救援活動に加えて、ガザ内外の当局がガザ再建の責任を負わなければいけません。また、これ以上対応を遅らせることはできません。必要な物資が迅速に届けられなければいけないのにも関わらず、ガザの輸入に遅れが生じており、復興の妨げとなっています。このような状況の中で、私たちはパレスチナ新赤新月社の協力のもと、今後も助けを必要とする人々に支援の手を差し伸べることに注力していきます。
戦闘の被害を受けた人々にどのようなメッセージを届けたいですか?
この夏、パレスチナとイスラエルは再び激しい戦闘に陥ってしまいました。助けを必要とする人々に対してICRCはできる限りのことを行ってきましたが、これだけ激しい戦いに巻き込まれ、希望を必死に求めている人々の期待に応えることはできていません。
私は、このような戦闘の被害を受け、困難を強いられている人々の回復力と能力に深く感銘を受けています。紛争後に人生を再スタートするには、並外れた意志の強さと勇気が必要になるからです。
この15カ月間で、私はガザやナブルス、ヘブロン、エルサレム、テルアビブと様々な場所の人々と出会うことができました。この暴力の連鎖に人々はうんざりしていると感じています。そして、この暴力の連鎖によって今年もまた、人々の生活は改善されませんでした。この戦いの傷を癒し、一貫した緊急対応ができるよう、今後ももちろん活動を続けていきます。しかし現在、これまで以上に必要とされているのは、変化、そして長期的な解決策なのです。そしてこれらは、人道支援組織が実現することはできません。
原文は本部サイト(英語)をご覧ください。