ウクライナ東部での支援を拡充

2014.12.12

冬が深まるなか、赤十字国際委員会(ICRC)は、紛争の影響を受けた人々を支援するため、ウクライナのドネツクとルガンスクでの活動を強化しています。私たちは、10月初めに職員が命を奪われたことを受け、活動をしばらく縮小せざるをえない状況にありました。

 

「12月上旬から、私たちはドネツクとルガンスクでの活動を再開しました」とICRC欧州及び中央アジア担当事業局長のローレン・コルバスは話します。「人道支援活動の拡充と職員の安全確保のために、ウクライナ政府ならびに東部の当局と、建設的に対話を進めています。状況は未だ不安定で、油断はできません。しかし、過酷な冬の訪れを前に、私たちは人々の緊急ニーズに応じられるよう力を尽くさねばなりません」。

 

ドネツクとルガンスクの多くの家々は砲撃の被害を受け、そのままでは寒い冬を過ごすことができないため、修理用のガラスや屋根材をドネツクの7000戸以上のアパートに提供しました。この数週間、ICRCやウクライナ赤十字社は、暴力に巻き込まれたり、ルガンスクやドネツク、マリウポリの紛争地帯に近接した危険な地域に住む計1万人以上に人道支援を行いました。

 

「人々が避難し、暖を取り、食料を手にすることを最優先に活動しています」とコルバスは言います。「この基本的な支援は、苦難を強いられているなか、人々が尊厳を保つために、非常に重要なことなのです」。

 

また、ドネツクの9つの病院に、数百人の患者に対応するための医療物資も届けました。

 

約45万人が、安全のためにウクライナ国内で避難しており、また同程度の人々が、近隣諸国に逃れているとみられています。私たちは、紛争からの避難民のニーズを満たせるように、ウクライナやロシア、ベラルーシの赤十字社に支援や金銭的な援助も行っています。例えば、クリミアでは、約4万人が食料や日用品を受け取りました。

 

「政府側であっても分離派であっても、全紛争当事者とのアクセスを確保することも、私たちの優先事項です」とコルバスは続けます。現在、ザポリージャやオデッサ、ポルタヴァ、ハリコフ、キエフにいる被拘束者の待遇や状況を確認するために、収容所訪問を行っています。また、ドネツクとルガンスクにいる被拘束者の訪問の実現についても、引き続き求めていきます。

 

活動報告

 

避難所と生活環境

  • ドネツク地方のスラヴャンスクやミコライフでは、砲撃の被害を受けた7300戸のアパートに取り付ける5万4000平方メートルのガラスを受け取りました。さらに、冬に備えて修理するために屋根材が提供されました。
  • ドネツク地方のクラマトルスクの住民への水供給を復旧させるため、自治体に対し、パイプと修理器具を提供しました。
  • 水供給の緊急事態に備えて、ドネツクとルガンスクの住民約1万人分のポンプやろ過装置、貯蔵袋などの予備の給水装置を供給しました。

 

支援

  • ドネツクとルガンスクに住む約1万人が、食料やその他の物資をICRCから受け取りました。この数字には、紛争の影響を受けた地元住民や避難民も含みます。
  • オデッサの療養所で生活している約350人の障がいを負った避難民は、衛生用品などを受け取りました。
  • ハリコフとマリウポリの避難民を支援するため、ウクライナ赤十字社を通して現金引換え券を配付しました。これまで、200フリヴニャ(15USドル強程度)相当の引換券を1万300枚以上配付しました。

 

医療

  • 戦闘による負傷者や国内避難民の治療に使用する創傷包帯や外科手術用品、輸血セット、インシュリン、その他の医療物資が、ドネツク地方の9つの病院に寄付されました。ドネツク市の4カ所とマリウポリの4カ所の病院も含まれます。
  • ドネツクで負傷者の治療にあたる約50人の医師は、11月4-5日にマリウポリで開かれた、兵器による負傷者の手術に関する2日間のセミナーに参加しました。
  • 命を落とした人々の遺体を適切に扱えるよう、ドネツク市の法医学研究所に法医学関連の物資を提供しました。一方、全国追悼協会とキエフおよびドニプロペトロウシクのウクライナ赤十字社でそれぞれ、遺体の身元確認のための1日訓練が2回実施されました。

 

被拘束者の訪問

  • ウクライナ政府当局下にあるザポリージャやオデッサ、ポルタヴァ、キエフの収容所を訪問し、被拘束者への待遇や生活状況を確認しました。
  • ドネツクとルガンスクにいる被拘束者の訪問の実現についても、引き続き求めていきます。被拘束者を同時開放する際には、中立的な立場で仲介役を務める用意も整っています。

 

紛争当事者との対話

  • 全紛争当事者との対話を続けています。特に、文民や民用物への攻撃を避けるよう訴えています。
  • 11月24日と25日には、オデッサの治安維持に従事する17人の警察官に対して、セミナーを行いました。セミナーの狙いは、法の執行における人権の適用と人道原則についての議論をすることでした。

 

不発弾処理への対応

  • ドネツクやルガンスクに散在する爆発性戦争残骸物(ERW)の政府による処理を支援するため、ICRCはウクライナの緊急事態対策本部に金属探知機や防護エプロン、マスク、その他の装置を寄付しました。

 

ウクライナ赤十字社との協力

  • 緊急時に応急処置や人道支援を行えるよう、ウクライナ赤十字社に物資と技術支援を提供しました。
  • ウクライナ赤十字社が支援物資の貯蔵と配付ができるように、マリウポリにテント仕立ての倉庫を建設しました。

 

ロシア赤十字社との協力

  • ウクライナ東部から避難してきた5万人を受け入れているロストフで、ロシア赤十字社の支部がこれらの人々を支援できるよう、6万米ドル相当の物資を供給しました。
  • ロストフ支部に対し、スタッフやボランティアに対する訓練を行うなどのサポートも行っています。
  • 12月には、クラスノダール地方とアディゲ共和国に逃れている1万ものウクライナ人避難民に、さらなる物資を配付するため、ロシア赤十字社に食料や衛生用品を運びました。
  • 紛争が原因で離散した家族との連絡を再開できるようロシア赤十字社と協力しています。
  • コーカサス北部では、ロシア赤十字社と協力し、ウクライナからの避難民に食料や生活必需品を提供し、金銭的な支援も行っています。11月から12月にかけて、チェチェン共和国やダゲスタン共和国では、270人以上がICRCからの支援を受けました。

 

クリミア

  • ウクライナ東部から逃れてきた人々にさらなる物資の配付ができるよう、ICRCは赤十字社の支部を支援しています。11月には、食料や衛生用品を9000もの避難民に届けました。これまでに、約4万人がクリミアで人道支援を受けました。
  • 赤十字社支部のキャパシティを向上させるために、車や資金の提供も行っています。

 

ベラルーシ赤十字社への支援

  • ベラルーシで保護されている3000ものウクライナ人避難民に、冬物衣料や食料を配付するため、ベラルーシ赤十字社に49万米ドルを提供しました。
  • さらに、赤十字社の緊急事態への対応力を強化するために、緊急備蓄品の補充や、賃貸料やその他料金の支払い、ボランティアへの訓練などを行っています。

 

原文は本部サイト(英語)をご覧下さい。