第3回国際人道法(IHL)集中講座開催報告
2013年9月16日から20日までの5日間、大阪大学豊中キャンパスにて、「第3回国際人道法集中講座」を開催しました。武力紛争や内戦といった現行の国際問題を読み解く上で必要不可欠な国際人道法の知識を集中的に学べる日本で唯一の機会である本講座。聴講者は、大学院生の他、政府関係者、ジャーナリスト、NGO関係者、赤十字職員など、多様なバックグラウンドを持ち、盛況のうちに終了しました。
期間中は、著名な国際人道法の専門家による基礎理論から最新学説までの解説がなされたほか、外交の最前線を経験した国内外の外交官、防衛省職員、人道支援の現場に立つ赤十字職員や国連職員による国際人道法の実践的な適用をめぐる問題について理解を深めるための講義が行われました。
今年は日本語コースに加えて、より実践的な理解を深めてもらうため、ケーススタディ、グループワークを多用した英語コースも同時平行で開催しました。英語コースは、日本赤十字社をはじめ、東アジア各国の赤十字社の協力を得て、同地域から広く聴講者を募りました。中国や韓国から8名の大学院生が参加したほか、香港、台湾から5名の赤十字職員が参加。その結果、聴講者は日本語コースが約60名、英語コースが約30名に上りました。
講義では、参加者各自の学問的、業務上の関心から多くの質問が講師陣に対して寄せられ、活発な授業が展開されました。特に英語コースでは、南オセチアの事例を基にグループワークを行うことで、講義を通じて学んだIHLの理論を主体的・実践的に学ぶことができました。最終日には、学習した知識を集結させて、参加者によるディベートを開催。サイバー攻撃への人道法の適用など、国際人道法の直面する諸問題をめぐって活発な議論が飛び交いました。
「混迷を深めるシリア情勢など武力紛争の現場で、暴力が生み出す惨禍から人々を守り、必要な支援を届けるための仕組みを考える際に、国際人道法は不可欠な視点を提供してくれます」と語るのは、英語コースを担当したICRC法律顧問のリチャード・デガニエ。「研究者や学生のみならず、現場でまさに武力紛争などの国際問題に向き合っている人たちにも国際人道法に関する理解を深めていって欲しい」と語ります。
ICRC駐日事務所では、国際的に活躍することを目指す次世代を対象に、国際人道法および紛争地で人道支援に当たるICRCの活動への理解とサポートを得るため、今後もさまざまなイベントを行っていく予定です。