レバノン:救命に関する知識を備える
2015年3月、赤十字国際委員会(ICRC)はレバノン中部シドンのエン・アルハルウィ地区で、パレスチナ難民キャンプで働く様々な分野の職員に対して、応急手当講座を実施しました。このトレーニングには、武力紛争のルールに関する講座と医療従事者保護の重要性に関する講座も含まれます。このプロジェクトは1年前より行われており、これまでに170人以上が受講しています。
この難民キャンプには、1.5㎢の土地に10万人を超える居住者が生活していて、超人口過密であるだけでなく、十数の武装グループが存在していることから武力衝突の懸念がある地域のひとつです。救急医療の対応範囲が限られており、キャンプ内の道があまりに狭く救急車が実質上通行できないなどの問題を抱えています。そのため、住民はパレスチナ人団体であるヒューマン・コール・アソシエーションが集めたボランティアたちによるネットワークを利用して、医療サービスを受けています。
「アクセスが困難なため、負傷者への速やかな対応や武器等による負傷の手当てが困難です。そのため、現場でできる限り早く応急処置を施せるようになることが喫緊に求められています。このような努力が命を落とす可能性や障がい、長期的な合併症のリスクを減らすことにつながります」とベイルートで医療を担当するロドルフォ・ロッシは話します。
この応急処置プロジェクトの内容は、救命のための手順に焦点をあてています。まず、負傷場所か私たちが用意したキャンプ内の応急処置エリアで負傷者の状態を安定させます。その後私たちが支援する3つの病院のひとつに搬送し、更なる治療をするのです。
「武装グループに対する応急処置訓練もまた、犠牲者や緊急医療従事者を保護し尊重する必要性について理解を深めてもらえるまたとない機会です」と話すのはレバノン南部のティルス事務所で代表を務めるテレサ・プラナ・カサドです。
以上の内容に加え、国際人道法の基本的な知識や、暴力を伴う状況下で適用可能な人道原則についても参加者に伝えます。
エン・アルハルウィ難民キャンプの他にも、レバノン南部チェバーのシリア人難民キャンプで、コミュニティに根差した応急処置訓練や、レバノン赤十字社とともにレバノン陸軍を対象とした応急処置の応用プログラムを実施しています。
ICRCは1967年よりレバノンで活動しており、首都ベイルートや北西部トリポリ、北東部ベカー、南部ティルスに事務所を設けています。職員数は現在245名、活動予算は4500万スイスフランです。
原文は、本部ウェブサイト(英語)をご覧ください。