アフガニスタン:タクシー運転手を対象とした救急法のトレーニングを実施
赤十字国際委員会(ICRC)は、戦闘で負傷した人を病院に運ぶタクシー運転手に向けた救急法のトレーニングを行っています。
アフガニスタン南部ウルズガン州でタクシーを運転する35歳のザマリャライ。8年前の経験が、ICRCの戦傷者支援プログラムに参加するきっかけになった、と話します。「村の1人が銃で撃たれて命を落とすところを目の当たりにして、大きな衝撃を受けました。負傷した人を助けたい、と強く思うようになったんです。救急法を学べばすぐに人の役に立てると思いました」
ザマリャライは、ICRCのプログラムに参加している14名のタクシー運転手を対象とした再訓練講座で自分の思いを打ち明けました。コース内容には、戦闘で負傷した戦闘員や一般市民を最寄りの病院に避難させる方法なども含まれます。運転手はICRCの職員ではありませんが、検問所や何か支障をきたした際に交渉できるようICRCが発行した許可証を携行。傷病者は安全かつ迅速に病院に搬送されなければならないことも説明されています。
「このトレーニングを受講してから、800名の負傷者を病院搬送前に手当てしました」と受講者とのディスカッションの場でザマリャライは話します。「ウルズガンから車で4時間離れたカンダハルにあるミルワイス病院まで、一日で8人も運んだことがあります」
「戦闘員に対しては、名前や所属を聞くことはありません」と続けるザマリャライ。「私にとって重要なのは、負傷者の命を救うことで、彼らのバックグランドは関係ないからです」
一般市民も武器を持って戦う戦闘員もこのタクシー救急サービスの恩恵を受けています。「地雷の爆発で負傷した若い女性を今でも覚えています」と続けるザマリャライ。「止血をして、骨折した足を固定し、状態が安定してからミルワイスに運びました。もし手当てをせずに搬送していたら、途中で命を落としていたと思います」
ミルワイス病院の職員も、救急手当てを受け安定した状態で運ばれてくる患者とそうでない患者は、予後が違うと話します。「病院までの長い道のりを考えると、多くの場合、救急手当が患者の命を救っているといっても過言ではありません」とミルワイズ病院の外科病棟を率いるアジズ・アーマッド医師は話します。「救急手当てを受けていなければ、多くの患者が命を落としていたでしょう」
搬送は常に円滑に運ぶとは限りません。「ロケット弾で負傷した市民を乗せていた時です」とザマリャライは話します。「武装した男性に車を止められ、暴行されました。私が『敵』を助けていると非難し、怪我した男性を殺すと脅してきたのです。ICRCが間に入り、私たちの活動の中立性や傷病者の搬送を妨げてはならないという武器携帯者の義務を説明し、やっと解放してもらえました」
トレーニングに参加している他の13人の運転手もザマリャライと同じような経験をしています。37歳のアブドゥル・ワリと60歳のサキ・ダドも仲間です。「負傷者を手当てして、戦場から病院へ搬送していると、私たちが危険にさらされることもしょっちゅうです」と、活動を続ける上での課題や重圧について議論するセッションで二人がコメントしました。
ICRCの戦傷者支援プログラムに参加しているタクシー運転手は60名ほどです。全員が救急法のトレーニングを受け、自分たちの活動に誇りを持っています。「人の命を救うことは、私にとってかけがえのないことです」とザマリャライはコースに参加していた他の受講者に語りかけました。
原文は、本部サイト(英語)をご覧ください。