最新テクノロジーを活用した地雷除去:アフリカでの実用化に向け準備を開始
地雷、爆発性戦争残存物(ERW)、不発弾などは、紛争中のみならず、紛争後も長期にわたり現地に住む人びとに大きな影響を与える問題の1つです。武器によって汚染された地域では、誤って子どもや民間人が地雷やERWに接触してしまい、負傷する事故が後を絶ちません。また、水、食料、医療など生きるために必要な物資や公的サービスへのアクセスを妨げることも多く、その影響は計り知れません。 赤十字国際委員会(ICRC)は民間人を守るため、武器使用に関する調査や危険性を周知する啓発活動、情報収集なども行っています。
イノベーションを活用した地雷対策のためのプロジェクト
ICRCと早稲田大学は、2018年に共同で地雷探知に関するプロジェクトを立ち上げ、ドローン、サーマルカメラ、人工知能(AI)の技術を組み合わせたリモートセンシングシステムの開発に取り組んでいます。
共同プロジェクトでは、ドローンとAIを使用することで、アクセス制限地域でも広範囲に探索が可能になり、一般市民や地雷除去作業員を事故から守ることが可能になります。
さらに、除去にかかる時間や費用の削減にもつながるという利点もあります。従来の方法では、爆発による負傷のリスクを軽減するため、少人数のチームで丹念に手作業で探知・除去を行いますが、その場合、作業員の訓練や特殊な機材の使用などに膨大な時間と費用がかかります。リモートセンシングシステムを使うと、少ない予算で迅速に兵器汚染地域を特定が可能なため、大きな期待が寄せられています。ICRCの兵器汚染対策部門を率いるエリック・トレフセンは、「人工知能が、爆発物の形や埋まっている場所などのパターンを認識し学習することで、検知率を向上させると同時に誤報率も減らせます」と述べています。汚染地域に暮らす人びとの不安を取り除き、農業や医療サービスなどの社会経済基盤を回復させることが急務です。
アフリカ連合と共催「地雷対策に関する会合」
4月4日の「地雷に関する啓発および地雷除去支援のための国際デー」を記念して、ICRCは4月19日、アフリカ連合(AU)と会合を共催。地雷やERWの脅威にさらされ、兵器除去のニーズが高いAU加盟の10カ国をはじめ、アフリカ連合委員会(AUC)や地雷対策を支援するドナー国、人道援助団体の代表者約40人が参加。アフリカにおける地雷対策に関する課題や教訓、ベストプラクティスなどを共有しました。
ICRCからは、駐日代表の榛澤と武器汚染問題担当のマーティン・ジーベンスが加わり、共同研究者である早稲田大学先進理工学部応用物理学科の澤田秀之教授も登壇しました。開発を進めている地雷探知システムについてコメントを求められた澤田教授は、「将来を担うアフリカの学生や若手研究者に日本の技術や経験を共有したい」と今後の意気込みを示しました。
参加者の多くがリモートセンシングシステムに強い関心を示し、実施や導入に関する質問も飛び交いました。ジーベンスは「会合に出席してみて、地雷対策がアフリカの喫緊の課題であると改めて認識しました。リモートセンシングシステムによって、根拠に基づく意思決定を可能にし、限られた資機材を有効活用して地雷の探知・除去を進められると確信しています」と語りました。