シリア:
かつてないほど高まる人道ニーズに、最大規模の支援活動を展開

2014.05.08
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シリア北部のアレッポ ©Reuters/S Kitaz.

ICRCニュース・リリース No. 14/75

ジュネーブ(ICRC)-赤十字国際委員会(ICRC)は、シリアとその周辺国を支援するため、活動資金の追加拠出要請を発表しました。同地域における過去15年間の活動とは比較にならないほど、大規模の人道支援が展開される予定です。国際社会の資金協力が十分に得られた場合、シリア国内における私たちの活動予算の総計は1億3900万スイスフラン(約160億4894万円)となります。

「シリアでの執拗な暴力の応酬で、何百万もの人々が影響を受けています。生き延びるためにたくさんの人が苦しんでいるのです。国は広範囲にわたって破壊され、基本的なサービスや重要なインフラはほぼ崩壊、経済は足踏み状態です。人々の喫緊のニーズに応えるためにも、シリアや周辺国での活動を広げていくことが最重要課題です」と中近東事業局長であるロバート・マルディニは話します。「人道危機がより深刻になれば、人々のニーズは山積する一方で、私たちの活動とのギャップがますます深まります。ニーズの高まりに、支援のスピードが追い付いていないからです。私たちは、現行の医療活動や保護活動の内容・範囲に満足しているわけではありません。この状況を打開するため、全ての当事者との対話を強化していきます」

ICRCは各国の赤十字社・赤新月社と協力して、シリアの何百万もの人々に、食料や水、その他の支援物資を届けていますが、安全なアクセスが確保されていないため、緊急物資を提供できずにいる地域もあります。国際人道法が尊重されないまま、暴力は激しさを増し、中立で公平、かつ独立した支援活動が制限されています。水や食料などの支援物資をはじめ、ニーズが高まる一方の医療サービスを提供するためにも、ICRCとシリア・アラブ赤新月社に対しては、現在立ち入り困難な地域であっても安全なアクセスが確保されなければなりません。

「不安定な政治情勢や経済に経済以前から苦しんできた周辺国では、シリアから逃れてきた難民の流入が国の不安定化により一層拍車をかけています」とマルディニは説明します。「紛争が長引けば、難民と住民双方の基本的ニーズを満たすことが難しくなり、人道危機が難民を受け入れた国の中でも悪化していくのは時間の問題でしょう。そこで欠かせないのが、ICRCや各国の赤十字社・赤新月社、他の支援団体がシリア難民と受け入れコミュニティのニーズに緊急および長期的に応えられるよう、それぞれの活動を調整することです」

何千何百ものシリア人が避難しているレバノン、ヨルダン、エジプト、イラクでは、離ればなれになった家族と連絡を取れるようにするなど、人々がこの苦しいときを乗り越えるために重要な支援を各国赤十字社・赤新月社と共に提供しています。

本日、7600万スイスフラン(87億7496万円)の追加の資金援助を要請することで、シリアでの人道支援に充てる予算総額は1億9300万スイスフラン(222億8378万円)となります。活動資金の多くは、シリア国内のシリア人救援のために使われますが、レバノン、ヨルダン、エジプト、そしてイラクに逃れたシリア人難民と彼らの受け入れ先の支援にも充てられます。

今年の3月と4月にICRCとシリア・アラブ赤新月社は、シリア国内の約90万人に水、食料、その他の支援物資を届けました。私たちの活動をさらに広げるためにも、紛争の全当事者が活動を受け入れ、国際人道法と支援スタッフがより尊重されるよう、引き続き呼びかけます。

※1スイスフラン=115.46円(2014年5月9日現在)

別添

追加の資金提供により以下の活動が可能となります:

  • レバノンでは、レバノン赤十字社と協力して、シリアから逃れてきた人々、特にレバノン人帰還者への支援を開始。また、多くのシリア人を受け入れている都市部では、既存の水供給事業の規模を拡大します。
  • ヨルダンでは、ICRCがこれまで実施してきた診療所への支援、調理済み食料と高タンパクビスケットの提供、国境に辿り着いたシリア人難民への水の供給を継続。ヨルダン赤新月社と緊密に連携をとりながら、マフラク県とマダバ県にいる2万6000を超える人々に、暮らしを支えるための資金援助を行います。また、マフラク県にいる20万の避難民と地元住民の水へのニーズに応えるため、新規事業も展開します。新たに開設したアズラック・キャンプでは、離散した家族との連絡再開事業を実施。
  • イラクでは、イラク赤新月社と協力して、紛争の激化のため多くが家を捨てたアンバール県での人道危機に対応します。また、身体に障がいを負ったシリア人に移動手段を提供し、難民の大量流入に備えて食料をはじめとした配給物資の緊急備蓄準備に取りかかります。
  • エジプトでは、エジプト赤新月社とともに、シリアを逃れたパレスチナ人を支援します。