ゲーム・オブ・スローンズ、最凶の戦犯は誰だ?
戦争オタクを自負する赤十字から、ニッチなネタをお届けします。
ファン待望のゲーム・オブ・スローンズ最終章、シーズン8の放送開始を記念して、前章7シーズンまでの全話を検証し、最も凶悪な戦犯を突き止めました!
オーストラリア赤十字社のボランティア (全員戦時国際法のエキスパート!) で編成する“ウェスタロス小隊”は、大量の糧食 (ポップコーン) を片手に、6週間かけて全67話を視聴。隊員たちは各々の結果を持ち寄り、全シーズン中で最も凶悪な戦犯が誰かを突き止めました。本件は極秘裏に行われました。
ポップカルチャーに一大旋風を巻き起こしたこのTVシリーズのファンであれば、火を噴くドラゴンを使役して人間に対して情け容赦ない攻撃をしかけたり、子どもを徴兵したり、と架空とは言え惨たらしい戦争犯罪がそこここに描かれていることはご存知の通り。我らがウェスタロス小隊が集計したところ、びっくり仰天するような違法行為が、7シーズンすべてを通して103件もあることがわかりました。
戦時国際法のエキスパートにかかれば、たとえフィクションの世界に浸かりながらも、どんな戦時国際法違反も逃れることはできません。この法律は、紛争に直接参加していない民間人や、かつて参加していたけれどももはや戦える状況にいない負傷兵や捕虜の命を日々守っています。
戦時国際法は、拷問や非人道的な扱いなどを禁止し、病院や人道支援従事者、文化財を保護して、不必要な苦痛を与える兵器や戦術の制限を定めています。国際人道法 (International Humanitarian Law /IHL) としても知られ、事実上すべての国が加入しているジュネーブ諸条約をはじめ、その他の国際条約にもそれらは明記されています。赤十字はこれら法律の普及と保護において法的信任を得ています。
さあ、17件もの重大な法律違反を犯した最凶の戦犯は誰なのか?ジョフリーはただの“悪ガキ”なのか?サーセイはルール違反の常習犯か?そして、みんなのヒーロー、ジョン・スノーの格付けは?
ラムジー・ボルトンの違法行為:
- 拷問、残虐で非人道的な扱い (x 6)
- 背信行為 (x 4)
- 人質を取る
- 負傷兵や捕虜など戦闘能力のない相手を意図的に殺害 (x 2)
- 過剰にけがを負わせたり、余計に苦痛を与える戦闘手段や戦術の使用
- 強姦、性奴隷、売春の強要、妊娠の強要を含む性暴力 (x 2)
- 非戦闘員を攻撃対象にする
デナーリス・ターガリエンの違法行為:
- 過剰にけがを負わせたり、余計に苦痛を与える戦闘手段や戦術の使用。火を噴くドラゴンの使役など。(x 6)
- 裁判所による通常の判例を無視した司法判決 / 刑の執行 (x 6)
- 拷問、残虐で非人道的な扱い
- 民間人を攻撃対象にする
- 助命の拒否
IHLに準じた行為:時に、民間人を保護したり、合法的な軍事目標にのみを攻撃対象にした。
ルース・ボルトンの違反行為:
- 拷問、残虐で非人道的な扱い (x 3)
- 性暴力
- 敵対勢力でない相手を意図的に殺害
- 背信行為
- 戦闘能力のない相手を意図的に殺害
- 過剰にけがを負わせたり、無駄に殺害をする戦闘手段や戦術の使用
IHL に準じた行為:戦争捕虜や被拘束者を人道的に扱った。
ナイト・キングの違反行為:
- 奴隷化
- 子ども兵士の使用 (x 2)
- 非戦闘員を攻撃対象にする
- 宗教または文化財を攻撃対象にする
- 非軍事施設を対象に焼夷弾などを使う
ハーピーの息子 (ミーリーン) の違反行為:
- 戦闘能力のない相手を意図的に殺害
- 敵対勢力でない相手を意図的に殺害
- 奴隷化
- 非軍事施設を損壊する無差別攻撃
- 民間人を死傷するなどの無差別攻撃
- 非戦闘員を攻撃対象にする
ジョン・スノーの違反行為:
- 子ども兵士の使用 (x 4)
- 拷問、残虐で非人道的な扱い (x 2)
IHL に準じた行為:民間人を保護し、戦争捕虜や被拘束を人道的に扱った。
ユーロン・グレイジョイの違反行為:
- 拷問、残虐で非人道的な扱い (x 2)
- 被保護員または戦闘能力のない相手の心身に多大な苦しみや重傷を故意に与える
- 略奪
- 人質を取る
武力紛争の適用除外ではあるが、見過ごせない行為として、ユーロンは吊り橋から兄を突き落として殺害した。
ウォルダー・フレイの違反行為:
- 敵対勢力でない相手を意図的に殺害
- 背信行為
- 戦闘能力のない相手を意図的に殺害
- 過剰にけがを負わせたり、余計に苦痛を与える戦闘手段や戦術の使用
- 人質を取る
タイウィン・ラニスターの違反行為:
- 奴隷化
- 非戦闘員の民間人を攻撃対象にする
- 戦闘能力のない相手を意図的に殺害
- 敵対勢力でない相手を意図的に殺害
IHLに準じた行為:戦争捕虜や被拘束を人道的に扱った。武力紛争の範囲外ではあるが、見過ごせない行為として民間人への攻撃があった。
ティリオン・ラニスターの違反行為:
- 過剰にけがを負わせたり、余計に苦痛を与える戦闘手段や戦術の使用
- 民間人、非軍事施設、森林などの自然資源に対する焼夷弾等の使用
- 性暴力
- 背信行為
ティリオンは、自ら犯した数々の罪を悔いて贖罪を貫いている。多くの命を救った実績がみられる。キングスランディングに対して火を噴くドラゴンに無差別攻撃させたドラゴンの母デナーリスと交渉した点は評価できる。戦闘員や武装市民の命を救うことにつながった。
ゲーム・オブ・スローンズのもう一つの物語は、悲劇的な北の最後の王であるロブ・スタークだ。ウェスタロスで起きたことを思えば、完ぺきとは言えないまでも比較的戦時国際法を尊重している人物。
戦場では人質を取るなどしたが、その裏側では戦争捕虜や被拘束者に対して人道的に接し、戦闘員のみを攻撃した。また、紛争において敵味方の区別なく負傷兵に中立的な医療援助を継続的に与えた。
そう、それこそが戦時国際法の精神。どちら側で戦っていようとも、負傷兵は誰であれ医療支援を受ける権利を与えられています。ロブは良くやったと言えるでしょう。
さて、おさらいはここまで。分析はまだまだ続きます。
ボランティアの“ウェスタロス小隊”にはシーズン8も見てもらって、感想をSNS上でシェアする予定です。ポップコーンの配給体制も整いましたよ!採点表も準備万端なので、いつでも再開できます。
その他13のキャラクターの分析を含むよりくわしい内容のレポートを読みたい方はこちら
GAME OF THRONES REPORT(英語)
国際赤十字・赤新月運動は、人命を救う戦時国際法を世界中で広めるべく日々活動しています。
こちらの分析には、ゲーム・オブ・スローンズの放送局や配信会社などは一切関わっていません。この番組の大ファンで、戦争オタクの赤十字が、誰にも頼まれていないのに勝手に人道法の観点から戦犯を突き止めようと思い立っただけです。遊び心からですのであしからず…
日本でゲーム・オブ・スローンズを観たい方は、ウェブ検索してみてください。