ICRC総裁によるスピーチ:人道外交と人道原則に基づいた支援
赤十字国際委員会(ICRC)総裁のペーター・ マウラーによるスピーチを皮切りに、ICRCの「第二回人道支援活動の指針に関する研究と討論(Second Research and Debate Cycle on Principles Guiding Humanitarian Action)」が開始しました。
「一世紀以上にわたるこれまでの人道支援は、人道、公平、中立、独立という人道原則に基づいて行われてきました。しかし今日、これらの原則が、現代の新たな人道課題に対応できるのか、という議論が起きています」
10月2日、マウラーはジュネーブに拠点を置く国際・開発研究大学院で、スピーチを行いました。冒頭の言葉は、国際赤十字・赤新月運動をこの150年間導いてきた赤十字原則をめぐる、国際的な議論の始まりともいえます。
人道原則を支持し、実行に移す人道支援組織は次第に増えています。しかし、共通理解がなく、誤解を招くようなあるいは政治的な目的で原則が利用された場合、人道支援活動の規模と範囲を縮小せざるをえません。「これまでの『人道原則に基づいた支援』という概念および活動は、現代の紛争では通用しない状況が増えています。全ての紛争当事者は、人道原則の悪用を即刻止めるべきです」マウラーは忠告します。
人道原則をめぐるこうした議論は、非常に実用的なものです。支援の手を必要としている人が大勢いるなか、どのように優先順位をつけるのか、権力という厳しい現実を踏まえた上でいかに人道の責任を果たすことができるのか、人道支援要員の安全を確保しながら、どのように苦痛を強いられている人の求めに応えるのか、といった現実の「ジレンマ」を扱う議論だからです。
150年にわたり、世界各地の紛争犠牲者の命と尊厳を保護する活動が行われてきました。人道、公平、中立、独立、奉仕、単一、そして世界性という7つの「国際赤十字・赤新月運動基本原則」は、この150年で培われた経験と真価を象徴するものです。
特に「人道原則」とも呼ばれる、人道、公平、中立、独立の4原則は、国際赤十字・赤新月運動内外の人道支援組織も謳っており、今日の人道支援活動の基盤となっています。
誤解や歪曲されたり、政治的な、時には露骨な反発を受けることもある人道原則には、現代の人道に関する議論のなかでも、最も関心が寄せられています。国際赤十字・赤新月運動の最高決議機関である第32回赤十字国際会議でも主要な議題となるでしょう。
赤十字国際会議に先駆けて、ICRCが主導する「第二回人道支援活動の指針に関する研究と討論(Second Research and Debate Cycle on Principles Guiding Humanitarian Action)」は、2014年9月から2015年にかけて、人道支援における主要関係者を招いて、世界各地で7つのハイレベル会合を開催します。
私たちは、人道原則とそれがどう現場での活動に影響するのか議論するなかで、「全ての当事者が人道上担う役割」に対する認識が高まることを望みます。これは、現在活動する全ての人道支援組織が目指すものです。このような認識と対話が生まれて初めて、ICRCは紛争の犠牲を強いられている人々に支援の手を差し伸べることができるのです。
原文は ジュネーブ本部ウェブサイト(英語)をご覧下さい。