セミナー報告:「新しい兵器と国際人道法(IHL)」
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防衛研究所と赤十字国際委員会(ICRC)は、去る7月30日(水)、防衛研究所において毎年恒例となっている共催セミナーを実施しました。
6回目の今年のテーマは、「新しい兵器と国際人道法(IHL)」。サイバー戦争、無人兵器、殺人ロボット等の新しい兵器と、変化する紛争の形態に対するIHLの適用と有効性について、日本及びICRCからそれぞれ専門家が出席して、活発な議論や意見交換が行われました。
近年の武力紛争は変化を遂げています。特に、最近ニュースでも話題になっているように、武力紛争下においてサイバー攻撃が導入され、紛争当事者は戦闘員だけではなく、ハッカーやプログラマー等も含まれることがしばしばあります。また、紛争下における殺傷能力の高いサイバー攻撃や無人兵器、殺人ロボットの使用は、国家にとっても、また、人道活動にとっても新たな課題を提示しています。
セミナーでは、このような新しい兵器について、国際的な潮流およびICRCとしての見解を共有する一方で、日本がこのような新しい兵器とIHLの適用をどう捉え、対処していこうとしているのか、専門家を交えて議論しました。当日は、防衛省・自衛隊関係者、関係省庁からの代表者など参加者は50名を超え、IHLの観点からのみならず、企画・運用等の実務面においても、意見を交換しました。
ICRCからは、ジュネーブ本部で本案件を担当しているローラン・ジゼルが出席。専門的立場からICRCの見解を説明しました。ジゼルは、自身の発表の中で、サイバー戦争による市民インフラへの影響、サイバースペースが軍民両用となってしまう恐れがあること、そして、潜在的な人的コストについて懸念を示しました。また、武力紛争下においてサイバー戦争が仕掛けられた場合にはIHLが適用されるものの、紛争にまで至っていない状況下においても、軍事目標への直接攻撃が行われた際には、IHLが適用されることを指摘しました。加えて、サイバー攻撃による交戦行為が発生した際には、「区別」、「均衡性」、「予防措置」のそれぞれの原則が尊重されるべきであると強調しました。