ナイジェリア:民間企業とのコラボが紛争被害地域にもたらす希望
モハメド・シェイク=アリは、ICRCナイジェリア代表部で、アフリカ地域で最大規模で展開されている経済自立支援事業の統括をしています。2017年初頭から、事業内容を徐々に転換し、緊急支援から、紛争などにより避難している人々や故郷に戻った避難民の自立を支援するプロジェクトに力を入れています。こうした事業のシフトを円滑に行うため、新たに大学や政府機関、民間企業とのパートナーシップを構築。モハメドは、ナイジェリアにおけるこうした経験が、多くの学びを与え、今後の良き前例になる、と話します。
質問:被害を受けたコミュニティーの回復に向けて、ICRCは長期的にどのような支援を行っているの?
モハメド:ICRCの支援方針は、緊急支援から復興へとつながっていくことです。支援を受ける人々が勇気づけられ、安全な環境でいち早く日常生活を再開できるよう、プログラムを考えます。ICRCは数年にわたり経済的自立の強化を目的に、小規模プロジェクトを実施してきました。時にはその目的が、実際に収入を得る支援対象者の家族の枠を越えたところにあったりもします。起業サポートを通して、雇用機会の創出や地域社会における連帯感の向上を達成することで、コミュニティー全体に社会的・経済的利益がもたらされるからです。こうした支援と同時に、紛争などにより避難を余儀なくされ、食料や生活必需品を必要としている人々への緊急支援も引き続き同時進行で展開します。
質問:ナイジェリアの試みの特異性は?
たとえば、2017年だけでナイジェリア北東部とニジェール・デルタ地域の50万人が農業用機材と耕作の質を向上する農機具を受け取りました。また、収入源となる活動を立ち上げるための現金支給も実施。その結果、少額支援を受けた北東部の未亡人の多くは、今では人を雇う立場となりました。
民間企業とのパートナーシップも独特です。背景には、これまで支援してきた人々の需要があります。避難先から戻った人たちを対象に農業支援の成果を調査した際、支援とは別に、収穫後に使用するトウモロコシ精製機や搾油機といった、もともと個人で所有していた機械の修理を必要としていることが分かりました。紛争後の状況下で、このような問題を解決する一番良い方法は、かつてサービスを行っていたか、修理をしていた事業家を助けることです。それこそが、紛争と暴力によって破壊されたコミュニティーの経済復興を支援する事業をICRCが世界中で奨励する理由です。
質問:最近ICRCはナイジェリアの財団とパートナシップを交わしましたが、紛争の被害を受けた人々の生活は改善するの?
トニー・エルメルとの連携によって、今までの小規模な取り組みが新たな局面へと導かれると、期待しています。
ナイジェリア北東部やニジェール・デルタ地域など、紛争の被害を受けている地域出身の起業家を年間約200人支援していますが、彼らは事業を開始するための資金援助を受けられます。加えて、財団によるオンラインビジネス研修や、過去に財団の支援を受けて事業を興した起業家たちによる指導を受けることになります。多様な問題に対して、現地の人々が主体性を持って取り組んでいくことは、コミュニティーの復興において非常に重要だとICRCは考えます。移動式ソーラー灌漑や、獣医向け薬局、近代化された水産加工など、コミュニティーの経済活動を支えるさまざまなアイディアを持った現地の起業家を支援し、ナイジェリアにおける地域社会の持続可能な社会・経済的な復興を支えたいと考えています。
私たちは日々、コミュニティーの人たちと対話し、彼らのニーズ把握に努めます。、現地の人々に軸を置いた支援を続けていくことで、紛争や暴力の状況下で消耗させてきた若い人たちの絶望感や喪失感を解消することができるでしょう。こうしたパートナーシップへの期待はとても高く、今後、他のアフリカ諸国へも広げていきたいと願っています。
原文は本部サイト(英語)をご覧ください。