今なお続くシリア危機から目を背けてはならない

シリア
2022.05.16

©ICRC

「シリア及び地域の将来の支援に関する第4回ブリュッセル会合」で、赤十字国際委員会(ICRC)と赤新月社国際連盟(IFRC)が、共同声明を発表しました。

シリア危機は11年目を迎えました。国際赤十字・赤新月運動(赤十字運動)は、シリアには今なお人道ニーズがあり、私たちはそれを忘れてはならないことを、国際社会に改めて訴えます。シリアの人々は今こそ、継続的な連帯と熱意ある支援により、長引く戦闘や経済危機、インフラの損傷によってもたらされた膨大な人道ニーズへの対応が行われることを必要としています。現在、少なくとも1,460万人が支援を必要とし、援助への依存度はかつてないほど高まっています。

こうした膨大なニーズに対応するために、赤十字運動をはじめとしたさまざまな人道支援団体が、支援の手を差し伸べています。安全上の課題や政治的な閉塞感がある中でも、私たちは重要な公共インフラを修復し、人々が清潔な水や電気、機能する医療サービスなどの基本的なサービスを何とか利用できるようにすべく、取り組んでいます。こうした人道上の問題に対応するには、国際社会からの継続的な資金援助が必要です。必要不可欠な人道支援を続けて行くためには、サポートを得られることが重要であり、このことは強調してもし過ぎることはありません。ウクライナなど他の危機に世界の関心が集まる中、シリアでは数百万もの人々が助けを必要としています。

ウクライナ紛争によって、シリアにおける危機はよりいっそう深まりました。心配なのは、食料不安が拡大し、物価の上昇が続いていることです。しかし、たとえ、ウクライナ紛争が明日にも終わったとしても、そもそもの問題である気候危機の影響と、それによる水資源や食料生産の逼迫など、対処すべき問題は数多く残るでしょう。

ICRCファブリツィオ・カルボーニ中東事業局長

赤十字運動は、紛争が始まった当初から、シリアで人道ニーズに対応してきました。ボランティアやスタッフを動員して、他の団体がアクセスできない地域で暮らす人々にも、必要不可欠な援助を届けてきました。それなしには、人道上の大惨事は深刻さを増していたでしょう。私たちは毎月、シリア国内で数百万もの人々を支援しています。命を救うための活動を続けるためには、人道支援従事者が、支援を必要とするすべての人々や世帯、コミュニティーに、継続して安全に、政治に左右されることなくアクセスできなければなりません。私たちは、国家を含むすべての紛争当事国に対して、軍事行動の際に、確実に国際人道法を尊重するよう求めます。

ウクライナ危機下では、人道支援に対して制限措置が緩和されたことで、私たち赤十字運動は、支援を切実に必要とする数百万もの人々に迅速に手を差し伸べることができました。私は援助国に対して、シリア危機下でも、同じように柔軟な措置を取るよう要請します。理想は、人道支援に対して、同じような例外措置が認められ、許可されることです。そうしてより良い条件が整えば、不必要な苦痛を最小限に抑え、犠牲者の尊厳を守ることができるでしょう。

IFRC中東・北アフリカ地域局長のホッサム・エルシャーカウィ博士

シリア国外で暮らす数百万に上るシリア人も、引き続き支援を必要としています。暴力事態下のシリアから逃れてきた人々の大半を受け入れているのは、近隣諸国です。トルコやレバノン、ヨルダン、イラクでは、各国の赤十字社、赤新月社が、避難民や受け入れ先のコミュニティーを支援しています。また、ヨーロッパ各国が、心のケアの提供から、受け入れセンターの運営、シリアに残された家族との再会手続きのサポートまで、シリアの人々が受け入れ先のコミュニティーに溶け込めるよう幅広い支援を行っています。