早稲田大学との共同研究に関わる合意文書に署名―イノベーションを人道支援の現場に役立てる
赤十字国際委員会(ICRC)駐日代表部は4月12日、地雷や不発弾などの武器を探知することを目的としたソリューションの共同研究・開発をさらに推し進めるために、早稲田大学理工学術院総合研究所との合意文書に署名しました。
人道危機の真っただ中にいる人々は、どうしたら普通の生活に戻れるのか。そのためにはテクノロジーをどう有効活用できるのか――。早稲田大学で研究推進を担当する笠原博徳副総長とICRCのレジス・サビオ駐日代表は、この日懇談を行い、様々な分野におけるコラボの可能性について意見を交わしました。冒頭で笠原副学長は、同大学のオープンイノベーションの一環として推進してきた、学外の様々な組織とのコラボの事例を紹介。サビオ駐日代表は特に、福祉や医療の現場だけでなく日常の家事にも主眼を置いたロボット開発・研究に感銘を受け、「自律型兵器が懸念される今、人間が介在し、人類の幸福を見据えたロボット開発で世界をリードして欲しい」と期待を寄せました。
ICRCからは、実際に人道の現場で頭を悩ます問題について言及。
- 電気や設備がない場所で、どうやって地球にやさしいエネルギーを安定供給するか
- 長年続いた戦闘で破壊されたシリアやイラクなどの国のインフラをどう再建するか
- より多くの人へ教育の機会を与えるため、デジタル技術をどう活用できるか
- 直近では、コロナ禍に、気候変動や環境問題が重なった危機にどう適切に対処するか、など。
「ビジネスとしては決して実の入りは多くないが、人類の幸福に関わる取り組み。技術と人道のコラボで、世界が皆にとってより良い場所になることを目指したい」とサビオ駐日代表は語りました。
一時間近く続いた懇談の最後に笠原副総長は、現場での成功例や実績を重ねて世界に示していくことが大事、と締めくくり、「エネルギーや食糧の問題など、技術を人間と地球のために活かしたい」と語りました。
ICRCはこれまで早稲田大学と、一般市民の命や生活を守ることを目的に地雷や不発弾などの武器を探知するべく、熱センサーを搭載したドローンとディープラーニングを組み合わせたソリューションの共同研究・開発に着手しています。今回の合意文書を取り交わしたことにより、同大学が誇る人工知能(AI)とディープラーニングを用いたデータ処理技術を生かし、実際の現場でテスト飛行するなど、実用化に近づけて行くことを目指します。
近年、“Do no harm(害を与えない)”を掲げ、産学連携プロジェクトに力を入れているICRC。本部のあるスイスでは昨年末、スイス連邦工科大学(チューリッヒ校及びローザンヌ校)と共同イニシアチブ「Engineering Humanitarian Aid(工学技術を用いた人道援助)」を立ち上げ、①エネルギーと環境、②データ科学とデジタル技術、③個別化医療に伴う技術、の3つの分野で、より安全かつ効率的な人道支援の実現に邁進しています。