アフリカ大陸でのコロナとの闘い ~リビアと南スーダン:止まない戦闘にウイルスが追い打ち~

プレスリリース
2020.04.17

赤十字国際委員会 (ICRC)は、ウイルスがまん延し、長年続く戦争と暴力にあえぐ地域社会に壊滅的な打撃を与えないか恐れています。


爆撃に耐えるか、ウイルスの脅威と闘うか
究極の選択を迫られるリビアの人々

リビアにおける長期の紛争により、家を離れることになった数千もの家族に食料やその他の生活必需品を配付

リビアにおける長期の紛争により、家を離れることになった数千もの家族に食料やその他の生活必需品を配付 ©ICRC

激化する内戦に数十万人が巻き込まれている北アフリカのリビアもいま、新型コロナウイルス感染症という新たな脅威にさらされています。

「リビアの医療体制は、新型ウイルスが出現する前から既に弱体化していました」と、ICRCリビアの事業統括官であるウィレム・ド・ジョンジュは語ります。「今日も、新型コロナウイルスの感染予防について研修するはずだった医療スタッフが、負傷者の治療のため何度も医療現場に呼び戻されました。国内の医療施設は戦傷者や慢性疾患のある患者の治療で手一杯なため、新型ウイルスの感染者の受け入れには限界があります。対処するためには、必要物資を含むさらなる援助が必要です」。

国際社会の度重なる停戦の呼び掛けにもかかわらず、首都トリポリの戦闘は激化しました。人々は家を追われ、民間のインフラに被害が出たほか、一部地域の医療施設では、ここ数カ月間で患者数が4倍に増加。避難民の家族が押し寄せたことが主な原因とされ、その多くは収容施設で暮らしています。

「避難民のみならず、私たちの同僚ですら、戦線近くの自宅に帰るしかない、と話しています。そうでもしないと、高齢の両親や家族をウイルスから守れない、というのです」。トリポリのICRC副代表部のマリア・カロリナは続けます。「砲撃や空爆に耐えるか、新型ウイルスの脅威と闘うか。人々は究極の選択を迫られているということです」。

感染拡大を制御するために重要な外出禁止令や国境封鎖などの規制により、人道支援や食料、医薬品、必要物資の物流に新たな課題が生じています。「社会的距離の確保をはじめとした感染予防策を講じる一方で、当局は人道支援が円滑に行われるよう支援すべきです。そうしなければ、支援に頼っている人々が大きな痛手を被るでしょう」と、ジョンジュ事業統括官は警鐘を鳴らします。


南スーダン:コロナ封じ込めに全力投入

南スーダンでコロナウイルスの予防策として児童に手洗いの方法を教えるICRCスタッフ

南スーダンでコロナウイルスの予防策として児童に手洗いの方法を教えるICRCスタッフ ©ICRC

世界の最貧国の一つ、南スーダンはいま、最悪の事態を避けるための瀬戸際に立たされています。南スーダン赤十字社は、1400人を超えるボランティアを動員して新型ウイルスの教育キャンペーンを実施。国内各地の公共スペースに石鹸や水桶を配付しました。また、首都ジュバや国内各地で修理が必要な給水所を特定し、手洗いなどに必要な清潔な水を調達できるよう努めています。
南スーダン赤十字社の保健顧問サンドラ・バンクス:「全国民が新型ウイルスの情報を共有することが必須です。感染拡大のパターンや、自分自身と愛する人たちを感染から守る方法について知る必要があります」
ICRCも他の赤十字運動のパートナーと共に、南スーダン赤十字社を支えています。
ICRC南スーダン代表部の保健責任者アンナ・ルチア・ブエノ:「新型ウイルスによって国内の医療がひっ迫する前に、直ちに感染症を制御するための策を講じる必要があります。多くの診療所や病院が長年の戦争や設備投資不足で弱体化しているため、医療が提供できる施設であればどれも貴重です。これらの施設を守らなければなりません」

ICRCが支援する国内の病院3カ所と主要な医療施設36カ所で、マスクなどの個人用保護具の配付や医療スタッフが独自の身を守るための研修などを通じて、感染症の予防・制御に努めています。一方で、マラリアや下痢などの最も一般的な症状を訴える患者にも従来通り対応できるよう、医薬品などの医療物資を引き続き供給しています。
南スーダンの一部地域では、暴力により多くの人が負傷し、家を追われる状況が続いています。ICRCは過去2カ月間で、銃撃を受けた200人超の負傷者の治療を行い、治療病棟はいまも患者で溢れています。
ICRC南スーダン代表部首席代表ジェームス・レイノルズ:「新型コロナウイルス感染症によって、戦争や暴力の被害に対する人道支援が不要になったわけではありません。私たちは、引き続き紛争の問題に取り組みつつ、感染症のパンデミック(世界的流行)がもたらす新たなリスクにも向かい合う必要があるのです」

両国における赤十字の感染症対策

リビア:
• 水・衛生チームが地元水道当局と連携し、紛争の影響を受けた多くの地域で清潔な水へのアクセスを確保。下水処理施設を支援し、衛生環境を改善。
• 医療施設に現金を支給し、医療機器やマスク、石鹸、消毒剤などの消耗品の購入費を補填。停電時も稼働するよう、病院3棟に発電機を支給。
• 収容施設2カ所の被拘束者3200人に衛生用品を配付。管理当局と施設内の新型コロナウイルス感染予防対策や、施設内で感染の疑いのある患者の対処法を協議。
• リビア赤新月社と地域社会の感染防止策について情報を共有。
• 17カ所の避難施設に暮らす世帯に衛生用品と塩素剤を配付。共有の居住スペースで感染拡大を防ぐための消毒方法についての研修を施設職員に実施。
• 納体袋をはじめとした備品の支給など、新型ウイルスに感染した遺体を安全かつ尊厳をもって扱えるよう当局と事業計画を策定。

南スーダン:
• 収容施設の管理当局と連携し、手洗い所の設置や、石鹸などの衛生用品の提供など感染制御措置を講じるとともに、電話による家族との面会を支援。
• 食料と家庭用品を配付する際は社会的距離の確保を徹底する。列に並ぶ際は前後の人との間隔を少なくとも1メートル置く。施設の入り口には手洗い所を設置。
• 新型ウイルスの新たな地域への侵入を防ぐため、医療用ヘリによる救助活動の対象を致命傷や四肢損傷を負った人に限定する予定。
• ICRC職員は全て、南スーダン保健省と世界保健機関 (WHO) が推奨する社会的距離の確保、手洗い、検疫などの勧告に従う。
• 予定していた大規模なセミナーや会議を中止し、スタッフの移動は必要不可欠な活動に限って許可。