コロナワクチン:武力紛争下の人々にも公平に接種を

プレスリリース
2020.12.03
紛争地で医療を受ける男性

©ICRC

ジュネーブ(ICRC)-新型コロナウイルス感染症のワクチンが実用化された際の赤十字国際委員会(ICRC)の願いは、紛争などの暴力行為の影響下にある人々が順番待ち名簿の最後尾に押しやられて忘れ去られてしまわないよう、公平にワクチン接種の機会を得ることです。

 

紛争地で暮らす人々にとっては多くの場合、基本的な医療サービスを受けることさえも困難であったり不可能であったりします。新型コロナウイルス感染症にもさらされやすいため、深刻な健康被害の脅威から守られなければなりません。ICRCの推定では、非国家武装集団が支配する地域で暮らす6000万人以上が、ワクチンを要請したり調達したりする手段を持ち合わせていない可能性があります。

 

またICRCは、国内避難民、移民、亡命者、被拘束者など疎外されがちな人々にもワクチンが公平に行き渡るようにと訴えています。ワクチンによって一人残らず守る必要があることを認識しなければなりません。

 

「武力紛争下にある地域の医療従事者や免疫力の弱い人々は、コロナワクチンをなかなか入手できないかもしれません。多くの場合は忘れ去られ、顧みられることのない地域にいることで、紛争下とコロナ禍という二重の負担を強いられます。こうした人々も他と同様にワクチン接種を受ける権利があり、その機会が与えられなければなりません」と語るのはICRCのロバート・マルディーニ事務局長。

 

紛争下では、医療サービスの崩壊、医療従事者の不足、不安定なインフラや道路の寸断により医療体制が不十分なため、ワクチン供給が妨げられることがあります。前線や非国家武装集団が支配する地域にワクチンを届けるには、ロジ面の複雑さや移動許可が必要であること、電気や保冷設備が利用しずらくなることなどから困難を伴います。制限措置や制裁措置によって、こうした地域へのアクセスが妨げられることもあります。

 

ICRCは国際赤十字・赤新月社連盟とともに、ワクチン接種プログラムの実行およびコロナワクチン供給において指導的な役割を果たす各国の赤十字社、赤新月社を支援します。

 

私たちICRCは特に、武力紛争など暴力の応酬が繰り広げられる国々におけるワクチン接種事業や、ワクチンの流通を支援する用意があります。また、紛争地帯で人道支援を行うICRCの特権を活かして、政府の支配下にない地域や収容施設にいる人々がワクチン接種を受けられるよう、中立的な仲介者として支援をする用意もあります。これらの人々をコロナワクチン接種の対象から除外していると、ただでさえ支援が行き届いていない人々への差別に拍車をかけることになりかねません。

 

ICRCからの要請:

 

• 各国政府は、新型コロナウイルス感染症ワクチンの接種において重要な役割を担う自国の赤十字社、赤新月社を支援してください。

• 武力紛争の全当事者は、自分たちの支配下にいる人々がワクチン接種を受けられるように、また接種を実施する医療従事者が円滑に業務を遂行できるようにしてください。

• 各国政府は、人道支援に頼って生活している人々がワクチン接種を等しく受けられるようにするとともに、その実施に携わる人道支援団体を支援し、活動を許可してください。

• 各国政府は、定期予防接種と基本的な医療サービスの維持・強化を図ってください。はしかやポリオの撲滅キャンペーンが数十カ国で中断されたことにより、1歳未満の子ども8000万人以上が、はしかやジフテリア、ポリオなど死亡率の高い病気にかかる危険にさらされています。コロナワクチンも早急に必要ですが、同等に接種が急がれなければならないワクチンは他にもあります。それらは何をおいても提供されなければなりません。

ワクチン流通計画の策定・実行にあたっては、コミュニティの構成員、特に民生委員のような人々や、赤十字・赤新月社のボランティア、宗教指導者も巻き込むべきでしょう。コロナワクチン接種プログラムの成功と医療従事者の安全確保のためには、コミュニティの関与、そして正確な情報の提供が重要です。

 

「ICRCは、赤十字運動 のパートナーとともに、新型コロナウイルス感染症ワクチンの供給に貢献する準備ができています。対象は特に、武力紛争下にある地域や、前線にある『ラストマイル地域』(物資提供の最終地点)、そして収容施設です」とマルディーニ事務局長。 「さらに、定期予防接種を優先事項とするとともに、ワクチンに関する信頼できる情報の提供にも努めます」