「日本の若者が核兵器と気候危機を考える作戦会議」
リポート:赤十字国際委員会(ICRC)駐日代表部ボランティア 髙垣慶太
2021年10月25日、東京・夢の島公園にある「第五福竜丸展示館」で、ICRCと日本赤十字社が「日本の若者が核兵器と気候危機を考える作戦会議」を共催、核兵器廃絶や気候変動対策に取り組む若者7人が集いました。この日は、一昨年、核兵器の全面禁止を求める「核兵器禁止条約」の発効が確定した日で、また、広島平和記念公園の「原爆の子の像」のモデルとなった佐々木禎子さんのご命日でもありました。
作戦会議の流れ・各登壇者の紹介
今回、作戦会議と銘打ったのは、今年開催が予定されている核兵器禁止条約の「第一回締約国会議」を見据えてです。国際的に核兵器禁止への機運が高まる中で、将来を担う若い世代は何をすることができるか、多様な視点から考えるべく、第一回の会合を企画しました。2017年にノーベル平和賞を受賞した核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)国際運営委員の川崎哲さんをファシリテーターに迎え、二部構成で実施。第一部では各登壇者の活動紹介、第二部では若い世代の活動にどのような障壁や課題があるかといった話題を中心に参加者が意見を交わしました。
作戦会議の参加者は以下です。
・ICRC駐日代表部ボランティア 髙垣慶太(19)
・大阪府青年赤十字奉仕団 浅羽大地さん(20)・廣瀬未沙さん(20)
・KNOW NUKES TOKYO 中村涼香さん(21)
・第五福竜丸展示館ボランティア 杉本汐音さん(22)
・Fridays for Future(FFF) Japan/Hiroshima・Peace Culture Village(PCV) 奥野華子さん(20)
・グリーンピース 儀同千弥さん(25)
第一部
活動紹介として、どのように核兵器の問題と向き合っているかを話し合い、核兵器による多様な被害に言及しました。私を含め国際赤十字・赤新月運動に参加する若者は、ヒロシマでの人道危機と赤十字の歴史から核兵器の禁止を訴えました。首都圏で核兵器廃絶活動に取り組むKNOW NUKES TOKYO共同代表の中村さんは、国会議員への面会など政治への働きかけについて紹介。第五福竜丸展示館ボランティアの杉本さんは、核の使用による放射線被曝により「ヒバクシャは今も増え続けて」おり、現在進行形の問題であると強調しました。
また「核兵器と気候危機を考える」というテーマから、二つの問題の関連性について指摘する声も上がりました。FFF/PCVの奥野さんは、気候危機と核兵器使用の関係性を説明、どちらも命の問題であると語りました。国際環境NGOグリーンピースの儀同さんは、同NGOが核実験反対運動から誕生したことに触れた上で、核が環境に及ぼす影響や近年の気候変動問題について言及しました。
第二部
初めに、展示館学芸員の蓮沼佑助さんが、核兵器と気候危機の関係性について触れた後、ICANの川崎さんが「核兵器禁止条約」成立までの背景を短く説明しました。
続いて、登壇者による“作戦会議”では、人道的アプローチと政治的アプローチの関係性、自分自身が活動を持続させていくため、また社会問題をより多くの人に考えてもらうために重要な要素とは何か、について意見を交わしました。そして、開催日が衆議院議員選挙前だったことから、若い世代を含めた市民の政治参加について、それぞれの経験談を持ち寄り、熱い議論がなされました。
「希望を失わないで」
この日の作戦会議を締めくくったのは、ICRCのレジス・サビオ駐日代表でした。特に、「希望を失わないで」といったメッセージは強く私の心に残っています。「もし10年前、川崎さんと私が『10年後には核兵器禁止条約ができているだろう』と言っても絵空事と笑われたでしょうが、今やそれが現実となりました。互いに協力することで大きな変化を生み出せるんです」。サビオ代表のこの言葉に私たちは勇気づけられ、協力してより良い未来を築くことを誓い合ったのでした。
12月には第二回作戦会議をオンラインで実施。引き続き、連帯して何ができるかを話し合っています。今、私たちに課せられた使命があるとすれば、それは核兵器と気候危機の脅威が、私たち一人ひとりと地球の命運に直結することを広く知らせていくことではないかと思います。以下の動画では、第一回作戦会議の様子が垣間見れます。ぜひご覧ください!