人道支援団体にとっての誤情報・デマ・ヘイトスピーチ:4つのQ&A

お知らせ
2023.03.20

🄫ICRC

赤十字国際委員会(ICRC)は、武力紛争時における誤情報・デマの問題を深刻に受け止め、そうした問題やその影響に効果的に対処する術を真剣に模索しています。

Q1:誤情報・デマ・ヘイトスピーチは、紛争下の人々や人道支援活動にとってなぜ有害なの?

誤情報やデマは、人々を危険にさらし、弱い立場に追い込むリスクを高めます。例えば、人道支援を必要とする避難者に対して救命活動・救援物資に関する誤解を呼び込む情報が故意に与えられた場合、そうした人々を支援から遠ざけ、危害をもたらしかねません。

一方で、ヘイトスピーチは、民間人の安全や尊厳を直接的または間接的に脅かします。例えば、少数民族に対する暴力を呼びかけるヘイトスピーチがインターネット上に書き込まれれば、嫌がらせや誹謗中傷、脅迫を誘発し、そうした人々の精神面や社会生活に害を及ぼす可能性は否めません。

加えて、誤情報やデマは、人道支援組織が特定の地域で活動することを困難にし、それにより、武力紛争やその他暴力の伴う事態下で暮らす人々に十分な支援を届けられなくなることがあります。ニセ情報や歪められた情報が広まることで、コミュニティー内の信頼関係も損なわれ、人道支援組織の評判も落ち得るからです。

信頼されることで活動が成り立つ私たちのような組織にとって、特に緊張が高まっている地域で広がるデマを見過ごすことはできません。人道支援に携わるスタッフが事務所の外に出られなくなり、救命物資の配付や被拘束者の訪問、離散家族の再会支援などの役割が果たせない事態に直結する恐れがあるからです。

Q2:誤情報・デマ・ヘイトスピーチによって、他にはどんな実害が生じるの?

うわさが出回ったり、汚名を着せられたり、誹謗中傷が広まったりすれば、避難者やいずれかの紛争当事者と関わりを持つ人々は、故郷に安全に戻ることができなくなります。

人道支援にまつわるニセ情報が出回り、人道支援に対する信頼が損なわれれば、被害を受けている人々の福祉や安全、尊厳を守るために不可欠な援助を妨害する恐れがあります。受け取った情報が信じられなくなることで、例えば、人々がワクチンの接種や医療サービスを怖がるケースや、遺族が遺体の受け取りを拒否するケースが懸念されます。

誤情報・デマ・ヘイトスピーチが広まることで、社会的に弱い立場に置かれている人々をはじめとして特定の民族や少数派の人々、そして人道支援組織や医療系団体への攻撃を煽るリスクがあります。

情報が歪められれば、紛争下にある人々は、安全の確保やシェルター、医療へのアクセスなど必要不可欠な情報を精査して判断を下すことが難しくなり、実害を受ける恐れがあります。

また、組織的なものであろうとなかろうと、誤情報・デマ・ヘイトスピーチがコミュニティー内で拡散され、インターネット上やメディアで憎悪の感情や暴力が煽られれば、人々の安全や尊厳が損なわれ、命さえ奪われかねません。

Q3:デマの拡散は国際人道法違反なの?

ニセ情報やヘイトスピーチは、使われ方によっては国際人道法をはじめとした国際法の諸規則への違反行為となります。なぜならば、国際人道法は、デジタル空間であろうとなかろうと、戦争犯罪などの国際人道法違反を煽ることを禁止しているからです。同様に、民間人の間に恐怖を広めることを主な目的とした暴力行為や威嚇も禁止しています。つまり、そうした暴力の誘発行為は、民間人の間に恐怖を広めることが主な目的とみなされ、禁止されています。

また、国際人道法は、人道支援組織の活動や人道支援スタッフに対して暴力を向けることも禁止しています。活動を妨げ、停滞させることを意図したデマの流布は国際人道法の原則に背いていると言っていいでしょう。国家などの紛争当事者は、そうした行動を自重し、かつ活動を脅かす民間企業などから、公平な人道支援組織を保護する必要があります。

もちろん、国際人道法は、武力紛争下におけるすべての誤情報・デマに適用される訳ではありません。とはいえ、公平な人道支援やそれに従事するスタッフを尊重・保護すべきであることは、ここ数十年にわたる国際社会の一貫した見解です。

Q4:ICRCはデマの問題にどう取り組んでいるの?

冒頭で述べたように、ICRCは、武力紛争下における誤情報・デマの問題を深刻に受け止め、効果的な対処方法を見出すべく、真剣に取り組んでいます。

しかし、技術の発展が政治的な関心や対立と相まって、問題の深刻さや複雑さが急激に増しています。その流れに、私たちは着いていくのに必死です。

とりわけ、避難民や行方不明者の家族など、民間人に実害が及ぶという事実を踏まえて、私たちはこうした問題を何としてでも乗り越えていく必要があります。政治目的で利用されることを避けつつ、私たちが寄り添うコミュニティーやそこで暮らす人々との信頼関係を維持するうえでも、きちんと向き合わなければならない問題なのです。

武力紛争下におけるサイバー空間を介した脅威は、今後も拡大し、より巧妙かつ組織的になることが懸念されています。そうした中でICRCは、国家やメディア、ハイテク企業などの民間企業を含むすべての関係者が中立・公平・独立を掲げる人道支援組織を尊重・保護し、ネガティブキャンペーンの発生とまん延を防ぐよう求めます。また、デマの拡散を防ぐために、すべての人に対して、情報を共有する際に細心の注意を払うようお願いします。ICRCはさまざまなパートナーと協力して、誤情報・デマのルーツに対処し、確かな情報に基づく平和な世界の実現に取り組んで行きます。