ICRCが「緊急時の教育支援のためのグローバル拠点」をジュネーブに共同で開設
スイス(ICRC)―今年の国際教育デーの翌日にあたる1月25日に、赤十字国際委員会(ICRC)などの組織が「緊急時の教育支援のためのグローバル拠点」をスイスのジュネーブに共同で開設しました。これは、2019年のグローバル難民フォーラムで、10の主要機関が、危機的な状況下にある避難民の子どもや若年層の教育支援を共同で行うと誓約したことに基づいたものです。
参加メンバーは、Education Cannot Wait(教育を後回しにはできない)、Global Education Cluster、ユニセフ、ユネスコ、 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR) 、緊急時における教育支援の諸機関ネットワーク( INEE )、スイス連邦外務省、ジュネーブ大学、ジュネーブ国際開発高等研究所(国際・開発研究大学院)、 ICRC などです。
武力紛争およびその他暴力の伴う事態下では、不可欠な公共サービスを継続的に提供することが著しく困難になります。教育が突然、長期にわたって中断されることもあります。ICRCのヘレン・ダーラム国際法・政策担当局長は、この拠点の開設の際に行ったスピーチで、ICRCが「教育へのアクセス向上」に取り組んでいることを強調。ICRCがこの拠点の開設に貢献してきたことも明らかにしました。
「緊急時の教育支援を比較的最近になって始めたICRCにとって、教育の保護・支援という共通目標のもとにさまざまな当事者が一堂に会するこうした拠点は、大変貴重な場です。」(ICRCヘレン・ダーラム国際法・政策担当局長)
教育は、平時の贅沢ではありません。国際人道法は、武装紛争下においても人々が教育を受け続ける権利を規定するとともに、生徒や教師、そして学校などの教育施設を戦闘から保護するよう規定します。したがって、武力紛争およびその他暴力の伴う事態下でも、教育の継続性や安全で適切な学習環境を保証することは、人道上・開発上の最優先事項なのです。
この拠点での活動の一環として、ICRCは、国際人道法に関する専門家としての立場から、武力紛争下における教育の保護を謳う国際人道法の諸規則が尊重されるよう促していきます。また、現場での経験を活かして、緊急時の教育支援の重要性に関する意見交換やメッセージの発信を行い、貢献していく所存です。
さらに、武力紛争およびその他暴力の伴う事態下において教育の中断を最小限に抑えるために、各国の教育省などが策定する危機管理対策計画の確実な実施を目指した多様な取り組みから学び、そうした取り組みを支援して行きたいと考えています。政府による統制が及ばない、武力紛争の最前線や情勢が不安定な地域で暮らす人々など、支援を差し伸べるのが最も難しく、かつ最も弱い立場にある人々が直面している教育上の課題について、国際社会の関心を高めることを目標に取り組んでいきます。
紛争による被害が及んでいる各コミュニティから、現地における教育の構造的な問題に対する支援を要請されたことに基づき、ICRCは2017年より教育支援活動に正式に着手し、教育へのアクセス向上のための新たな枠組みと戦略を導入。各現場で予防・保護・援助活動を行っているチームに対して、武力紛争およびその他暴力の伴う事態が教育に及ぼしている影響を確認したうえで、子供たちが授業を受けるための支援を行うよう要請しました。
現在ICRCは、約30の現場において、既存のプログラムに組み込む形で、教育関連の活動を行っています。5カ国で行っている特別プロジェクトや、各現場のチーム内における「教育へのアクセス向上」のためのネットワークの拡大などがその一例です。
武力紛争およびその他暴力の伴う事態の影響を受けている地域に住む1億2,700万人の子どもや若年層が質の高い教育を安全に受けられるように、その妨げとなる構造的な欠陥に対処すべく、この拠点のメンバーと協力して取り組んでいきたいと考えています。