“気候変動と武力紛争”の二重苦への効果的な支援 ―人間の安全保障の観点からも重要

プレスリリース
2021.03.23

気候変動の影響で砂漠のようになってしまった場所

先月国連安全保障理事会が主催した、気候変動と安全保障を話し合う公開討論にICRCが声明を寄せました。以下はその抜粋です。討論の趣旨は、気候変動によるリスク緩和とレジリエンス強化でした。

昨年9月、ICRC総裁のペーター・マウラーが、当時ニジェールが議長国を務めていた安全保障理事会に対して、環境悪化が平和と安全を脅かすことで生じる人道上の懸念を共有しました。総裁は、ICRCが最大規模の活動を展開している複数の国を例に挙げ、レジリアンスが強い地域コミュニティーで暮らす人々でさえも、武力紛争や気候変動、環境悪化、避難民問題の多重の災難に見舞われ、現在「生きるか死ぬかの瀬戸際」にあると語りました。コロナ禍は今、そうした紛争地に暮らす人々にさらに追い打ちをかけています。

武力紛争下に身を置く人たちは、気候変動や環境悪化からも過大な影響を受けています。ICRCの推定では6,600万人が非国家武装集団の管理下に置かれ、国家による統制が及ばない地域で暮らしていますが、そうした人たちしかりです。紛争が発生すると、気候変動や環境悪化への人々のレジリアンス強化に必要な制度や基本的なサービスやインフラ、統治が急激に機能不全に陥ります。

私たちはそのような事態に対応しなければなりません。そのための所見と勧告を3点ここに紹介したいと思います。

1. 特に弱い立場に追い込まれている人々のニーズに見合う支援を行うため、安全対策を強化するだけでは不十分。武力紛争や気候変動、環境悪化が人々の生活や食料・水・基本的なサービス確保に与える複合的な影響など、より幅広い人間の安全保障上の問題を網羅して取り組む必要がある。一方で、気候変動の影響が武力紛争や人々の打たれ弱さ、リスクに直結することについて議論する際には、気候変動が集団の安全保障に及ぼす影響も幅広く理解することが重要。

2. 情勢不安にある国の適応力やレジリアンスの強化に効果的に取り組むためには、多くの場合、紛争の要素を十分に考慮しなければならない。そうした国においては、予防措置や事前対策のための投資を増やせば、最終的に気候変動と武力紛争による複合的な人道上の影響を抑制することができるだろう。現状では、紛争下にあり、情勢が不安定な国における気候変動への取り組みは極めて不十分。

3. 武力紛争は多くの場合、自然環境を破壊する。さらには気候変動への適応力やレジリアンスを低下させ、妨げることもある。 国際人道法がより尊重されれば、環境悪化を抑制することができ、その結果、紛争下にある地域コミュニティーへの気候変動などによる被害やリスクを低減することができるだろう。