ICRC: いまだ医療スタッフが毎週攻撃を受けている現実
ジュネーブ(ICRC)-2年前の今日、紛争下で医療施設や医療スタッフを攻撃から守るため、国連安全保障理事会決議が採択されました。にもかかわらず、ICRCの活動地では医療施設やスタッフへの攻撃が毎週のように続いています。
「紛争下の医療従事者及び医療施設の保護に関する決議第2286号」は、日本政府が安保理理事国として起案に携わるなどイニシアティブを発揮し、2016年5月3日に全会一致で採択されました。紛争下にいる人々が安全に医療サービスにたどり着けるようにしなければならない、と世界が団結して声をあげたのです。しかし、悲しいことに、決議が採択された2016年5月から今日に至るまで、医療への攻撃が16カ国において1200件以上もあった事実を、ICRCは認めざるを得ません。
「医療施設やスタッフへの攻撃は、悲劇のうえにさらに悲劇を重ねる行為です」と語るのはICRCペーター・マウラー総裁。「医療が攻撃されることで、治療を望む人々を心身ともに傷つけます。また同時に、将来医療サービスを必要とする無数の人々の希望をも奪うのです」。
安保理決議2286号の採択は、医療サービスへの攻撃に対する国際社会の確固たる意志の表れでした。しかし、こうした暴力行為を減らし、予防するためには、それ相応の行動が伴わなければ実現しません。
ICRCは紛争下において、以下の行動を要請します:
- 軍隊は、民間人や民間設備を攻撃しないようにする。この中には医療に関わる施設やスタッフ、車両も含まれる。
- バリケードの設置など、必要不可欠な医薬品の輸送や患者の搬送を妨げるような行為を直ちにやめる。
- 医療が攻撃を受けた事例および国際人道法に反する攻撃の責任について調査する。
医療インフラの破壊や医療サービスの中断は、特に中東地域の紛争下で深刻な影響を与えています。シリアでは、公立病院や診療所の半数以上が、閉鎖されたか、かろうじて一部稼働しているといった状況です。そうした施設のいくつかは、度重なる空爆の犠牲となりました。医薬品の提供や傷病者の搬送が頻繁に妨げられているエリアも国内に点在します。
つい最近まで戦闘行為が行われていたイラクでは、民間インフラが完膚無きまでに破壊されています。首都バクダッドの北にあるサラー・アルディン県では、医療施設の3分の1以上が、破壊されたり、何らかのダメージを受けました。イエメンでは2017年末時点で、国の医療インフラが45%しか機能しておらず、医薬品にも事欠いています。
「戦争とはいえ、やりたい放題は許されない」とマウラー総裁。「傷病者はどんな状況下でもきちんと保護されなければなりません。人々から医療へのアクセスを奪う暴力行為は、国際人道法違反です。ゆくゆくは、私たち全ての人間性を奪っていく行為なのです」。
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